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2008_日本代表&「ユーロ08」の雑感・・(2008年6月11日、水曜日)

暑い、暑い。ここ(バンコク)の暑さもハンパじゃない。

 午前11時ころ、ホテル近くのカオサ〜ン・ロードを散策して、そのハンパじゃない酷暑にビビっていたのですよ。そりゃ、そうだ。一日のうちでもっとも厳しい時間帯なんだから。

 まあ、湿度やその他諸々の気候学的なファクターで(知りもしないくせに、何となくそれらしい表現を入れる湯浅なのです)マスカットとは暑さのタイプはちょっと違う(はず)だけどね・・。「粘り気」のある東南アジアの酷暑!?

 とはいっても(マスカットもそうだったけれど)ここも夕方になったら急に過ごしやすくなる。まあ、それにしても、身体が(暑さを知覚する感覚器官の基準が!?・・またまた、それらしい表現・・)暑さに慣れてきたからということなんだろうけれどね。とにかく、ゲームがスタートする1715時には、オマーン戦の後半のように(!?)「よし涼しくなってきた・・やったるぞ!」と選手の気合いが乗ること請け合いなのです。

 ということで(知覚的に)涼しくなってからはじまった日本代表のトレーニング。わたしにとっては初めての「公開」ということになりました。

 マスカットでの「非公開トレーニング」だけれど、そこでのゲーム戦術的テーマは、セットプレーの確認だけではなく、たぶん、暑さ対策としての「プレーイメージの共有」という課題もあったんだろうね。

 ・・攻守にわたる「人とボールの動き」を、気候条件に合わせ、最高潮の状態に比較して「相似小型」にする・・それは、決してチカラを抜くという感性ではない(=心理・精神的なテンションは最高潮を維持するものの、物理的・現象的には相似小型にする=だから、いつでも物理的・現象的に最高潮へとシフトアップできるという感性!)・・

 ・・その感覚をベースに、特にボールを奪いにいく組織(協力)アクションに緩急をつける・・「緩」から「急」へという物理的ボール奪取アクションのスタートが「シンクロ」すれば、その後の攻撃の流れも格段にアップする・・守備こそがすべてのスタートライン!・・そんな「緩急」に関する感覚を互いに共有する・・などなど・・

 とはいっても(WC地域予選)リーグ展開の大勢が決したこともあって(また、もっとも大事なプレーイメージのシンクロ状態の深化が進んだこともあって!?)バンコクでは公開トレーニングということになったんだろうね。そこでの根源的なテーマは、もちろん「主体的に考え、決断し、(勇気をもって)行動する」こと。

 岡田監督からは「サポート!・・サポート!」っちゅう大声の指示が飛んでいた。要は、パス&ムーブという局面コンビネーションを絶対的なベースに、後方からの三人目、四人目のボールがないところでの動きも(常に一人飛ばしてボールを動かすというイメージも!)効果的にミックスしていくという組織プレーイメージの高揚を再確認しているということなんだろうね。

 そこでは、ボール奪取アクションへ「爆発」していく「緩」から「急」への切り替えも重要なテーマの一つ。もちろん、相手にボールを奪われた「直後」のボール奪取アクションも(攻守の素早くダイナミックな切り替えも!)重要なテーマとして内包されている。ボールを奪った相手が、次の攻撃へ向けて「前へ重心を移しかけた状況」での「再」ボール奪取ほど効果的なカウンターパンチはないからね。

 「ゲーム中日」のトレーニングとしては、量と質の両面で素晴らしかったと思いますよ。良いトレーニングでした。まあ選手個々の「内容」については、主体的な意志の「具現」としての(攻守にわたる=ボールがないところでの)全力ダッシュの量と質など、それぞれの選手の「基本的なプレー姿勢や感覚」なども、ある程度は把握・確認できたしね。フムフム・・

 ところで鈴木啓太。トレーニング後の「選手に対する囲み取材」で、例によって遠巻きに、記者の質問に答える選手のハナシを聞いて回っていました。でも、普段の「囲み」では質問せずにハナシを聞くだけなんですけれど、今回は・・。まあ、岡田武史監督の「囲み」では、いつも通りに(下記のような)簡単な質問をしたけれどね。

 「タイがバーレーンに引き分けたことで、日本とのゲームがタイにとって消化試合ではなくなった・・(さきほどのテレビインタビューで)岡田さんは、タイが最初からガンガン勝ちにくる(アグレッシブにくる)と言っていたが、バーレーンとの試合結果を聞いたとき、厳しい(有意義な)ゲームが出来るという意味で、正直、良かったと思ったのではないか?」「いや・・そんなこととは関係なく(そんな高慢なマインドではなく謙虚に!?)我々は全力で勝ちにいくだけです・・(タイにとって)可能性が残ったとはいっても、得失点差も含めれば実際には可能性がほとんどないことは事実なのだから・・またホームでのタイは(試合の置かれた状況とは関係なく)常にしっかりとしたサッカーをやるしね・・」

 あっと・・鈴木啓太。その囲みで、彼が興味深いことを言っていた。「まだ、最後のところで足が(極限まで)伸びないという感覚なんですよ・・」

 そこで「つい」質問をした。「鈴木さんは、病気になったとき(疲労による免疫力低下で陥った腺の疾患!?)体重がかなり減ったと聞いているが、一体どのくらい体重を失ったのですか?」「8キロくらい減りました」「そりゃスゴイ・・ものすごく厳しい状態だったわけですね・・だから回復にも予想以上の時間が掛かってしまったということですね?」「そうですね・・」「いま鈴木さんは、最後のところで足が(極限まで)伸びないというキーワードを言っていたけれど、そのような感覚を持てるということは、100パーセント回復にも手が届いているということですね?」

 「そうですね・・あんな厳しい状態だったわけだから、100パーセントの回復には時間がかかると思っていました・・だから焦らずに取り組もうと考えていたんですよ・・焦れば、確実に状況は悪い方へ向かってしまうだろうし・・それも、自分自身にとっての良い学習機会だと思っていました(湯浅の注釈:確か、鈴木啓太選手がそういう意味合いのことを言ったと思う)・・監督も、そのことについて(予想以上に回復に時間が掛かっていることについて)理解を示してくれています・・」

 誤解を避けるために補足しておくけれど、もちろん鈴木啓太にしても、岡田武史監督にしても、今回の中東&タイ遠征において(代表メンバーが決定された時点において!)彼が100パーセント回復し、オマーン戦とタイ戦において(今まで通りの!)重要な戦力になるに違いないという確信的なレベルの期待と希望があったからこそ代表メンバーに入ったのですよ。鈴木啓太にしても、その確信があったからこそ代表メンバー入りを受諾したということです。ただ実際には・・

 まあ、一番悔しい思いをしているのは鈴木啓太自身だろうし、だからこそ、焦らずに我慢するという(個人事業主にとって)非常に重要なマインドを体感し学習しているということでしょうね。

 鈴木啓太の言う「最後のところで足が(極限まで)伸びる・・」という表現だけれど、中盤における、攻守にわたる極限の汗かき&穴埋めという、彼に対してもっとも期待されている戦術的タスクを考えれば、言い得て妙だね。まさに彼の優れたインテリジェンスの証明といったところかな。次のタイ戦まではまだ3日ある。期待しましょう。

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 ということで、ユーロ08。

 バンコクに着いた月曜日から、やっとライブでテレビ観戦できるようになりました。ということで、注目していたチェコとポルトガル、そしてドイツの初戦は観られず仕舞い。まあ、彼らについては今日からということで、ここではフランスとオランダ、そして昨夜のスペインについて簡単に雑感をまとめておくことにします。

 「ユーロ08」に共通している一番のテーマは、何といっても「組織プレーの量と質」ですかね。要は、優れた才能たちが、攻守にわたってどのくらい「組織プレー」に「も」精進できるかによってチーム総合力(サッカー内容)が自然と決まり、そのことによって「結果」も大きく左右されるということ。その「トレンド」が、どんどん先鋭化しているということです。

 どのチームも、忠実なチェイス&チェック(≒守備の起点づくり)をベースにした組織的な(プレス)ディフェンスは出来ている・・もちろん「どこで、どのように」ボールを奪い返すのかという具体的なプロセスイメージについては(チーム力の違いなどによって)微妙な差異はある・・だから、中盤でのつぶし合いが目立つという展開が多い・・要は、組織(プレス)守備ができない(やらない)チームは、まあトーナメントで生き残ることは無理だということです・・

 ・・ということで、そんな積極的なディフェンス(ボール奪取プロセス)を絶対的なベースにした次の攻撃における組織プレーの内容が問われる・・まあ、カウンターとセットプレーについては別な視点も必要になってくるから、ここでは「組み立てプロセス」にスポットを当てる・・

 ・・要は、組み立てプロセスを基盤にした攻撃においてチャンスを作り出すためには、ボールがないところでの仕事の量と質が問われるということ・・言い尽くされた感があるけれど、とにかく(前述したように)そのトレンドがより先鋭化していることは確かな事実・・それがあって初めて、個のドリブル勝負を「より有利なカタチ」で展開できる(個の才能を存分に活かし切ることができる)・・その視点では、すべての強豪チームにとって、いかに(組織ベースで)個の才能を活かし切るのかというのが共通のテーマということになるのかもしれない・・

 ・・その視点で、フランスは大きな課題を抱えていた・・リベリーとマルーダの両サイドハーフや両サイドバックの「組織マインド」はある程度のレベルに達しているけれど、どうもフォワードが、最前線のフタになってしまっていると感じる(この試合では、アンリがケガということでアネルカが先発)・・だから、初戦で当たったルーマニア守備ブロックも余裕をもって対処できていた(ウラスペースを突かれるシーンはほとんどなかった!)・・フランスは、全体的にはゲームを支配しながらも、ゴリ押しのドリブル突破トライといった強引な個の勝負を前面に押し出し「過ぎる」ことで最終勝負プロセスをうまく組み立てられない・・

 ・・そんなフランスに対し、オランダとスペインは「組織と個のバランス」という視点でハイレベルなサッカーを展開した・・両チームともに「ワントップ」・・オランダは、ファン・ニステルローイ、スペインは、フェルナンド・トーレス・・彼らは、決して「ポストプレー」ばかりを意識するのではなく、しっかりと動き回ることで、後方からのサポートに対してスペースを作り出したり、自らも決定的スペースへ抜け出してシュートまでいったりする・・

 ・・要は、両チームともに(ワントップとのイメージシンクロを基盤に)セカンド・ストライカーとの組織的な協力作業がうまく機能していたということ・・オランダでは、カイトやファン・デル・ファールト、そして何といってもスナイデル・・スペインでは、何といってもダビド・ビジャ(昨日のロシアとの初戦でハットトリックを達成!)・・ビジャだけではなく、ダビド・シウバやアンドレス・イニエスタも「三人目や四人目」として存分に機能していた・・

 ・・両チームともに、孤高のドリブラーと組織プレーマインドの高いプレイヤーの「組み合わせの妙」を感じる・・それは、両チームともに監督の哲学が活かされているということ・・オランダでは、ファン・バステン・・スペインでは、ルイス・アラゴネス・・

 ・・ところで、ファン・バステン・・現役時代の彼は、まさに天才だった・・そして監督になったら(現役時代の天才が監督になった瞬間に実務家になるという!)例に漏れず、選手たちに「攻守にわたる組織プレー」を強く要求する・・彼もまた、現役時代の「自分のこだわり」が、実はチームにとってマイナス要素の方が大きかったということを(もっと組織的な汗かきプレーをやれば、もっともっとチーム総合力はアップしたに違いないという事実を)自覚していたに違いない・・

 ・・今回のユーロ08で「も」、『ボールがないところで勝負が決まる』という普遍的なテーマが、その深層にある・・それも、「四人目」のプレーの量と質が勝負を決めてしまうというレベルまでサッカーが進歩していると言えるかもしれない・・もちろん、個の才能を最大限に発揮させるために・・

 ユーロ08については順次レポートする予定ですが、でもまずは岡田ジャパンに集中しなければ。この時点での日本代表は「内容」が問われているわけだからね。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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