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2009_ヨーロッパの日本人・・三点とも、中村俊輔だぜ・・テーマは、セットプレーでのイメージシンクロ!?・・(2009年1月25日、日曜日)

ハイバーニアンとのホームゲーム。セルティックは3ゴール奪ったわけだけれど(3-1でセルティックの勝利!)その全てで「お膳立て機能」を果たしたのが中村俊輔でした。彼には、それぞれに(貢献度換算で!?)0.5点を上げてもいいよね。

 前回のコラムでも書いたとおり、攻守にわたるボールがないところでの汗かきプレーなど、彼が繰り出す『全力ダッシュ(スプリント)』には、それぞれの瞬間的な状況における具体的な目的を明確に意識した『意志』が込められている。意志の発露としての、攻守にわたる全力ダッシュの量と質。意志さえあれば、おのずと『道』が見えてくる・・のであります。

 次元の低い(数学的な)戦術(システム)ディスカッションなど吹っ飛んでしまうような、それぞれの戦術プレーの『意志による昇華』。素晴らしい。まあ「このこと」については、前回の「俊輔コラム」も参照してください。

 ということで、今回わたしをキーボードへ向かわせた(コラムアップを触発した)テーマだけれど、それは、シンプルな展開パスとセットプレーでした。特に、中村俊輔のコーナーキックやフリーキックが秘める価値という視点かな。

 まずはシンプルな展開(仕掛け)パスについて。

 ボールがないところでしっかりと動きつづけ、スペースで(要はある程度フリーで)パスを受ける。そして「タメ」を演出することで相手ディフェンダーを引きつけ、シンプルなタイミングでスペースへ抜け出すチームメイトへ展開パスや仕掛けパスを供給する。

 もちろん、自分へのパスが狙われているケースでは(相手の、トラップの瞬間を狙ったアタックチャレンジ!)何事もなかったかのように、リラックスして「ピンッ!」という音が聞こえてきそうな鋭くスムーズな「ダイレクト・パス」で、アタックしてくる相手のエネルギーを無駄遣いさせる。そして、その相手を尻目に、パス&ムーブで、次のリターンパスを受けて仕掛けの起点になったりする。

 攻守にわたる、スマートで忠実なシンプル(汗かき)プレー。それがあるからこそ、中村俊輔が、セルティックの「人とボールの動き」のイメージリーダーとして効果的に機能しつづけるというわけだけれど、その「動き」の意味は、やはり相手ディフェンスの組織バランスを崩して効果的にスペースを活用するということだよね。フムフム・・

 そしてもう一つのテーマ。それは、セットプレー。

 このゲームでは、ゲーム立ち上がりの9分間で、中村俊輔のコーナーキックから二つのゴールが生まれました。正確無比に、チームメイトが「イメージするスポット」へボールが「吸い込まれて」いく。

 チームメイトが明確にイメージするスポットに「正確にボールが送り込まれてくる」ということの意義と価値は、本当に計り知れないほど大きい。はじめから「このスポットに、オレがイメージする高さと種類のボールが来る!」と確信していれば、足を止めていたとしても、マークする相手との、身体をぶつけ合って有利なポジションを取ろうとする「駆け引き」も有利に運べるのですよ。

 また、動きながら「合わせる」ケースでも、その「スポット」へ助走を入れて飛び込んでいけるわけだから、例えばニアポスト勝負など、とても有利だよね。相手は、ボールが蹴られてから「反応」するわけだけれど、「確信」という心理エネルギーをバックボーンにしている味方は、もちろん「事前」にスタートを切り、助走からの爆発ジャンプによって、ヘディングの競り合を有利に展開できるのです。

 とにかく、中村俊輔のリードするセットプレーが(直接フリーキックでのシュートも含め)相手にとって大変な脅威であることは言うに及ばない。この試合では、そのことを再認識させてもらった。

 ところで日本代表のセットプレー(岡田武史がリードするイメージシンクロ!?)。我らが「遠藤ヤット(保仁)」も、素晴らしいキックを持っているわけだけれど、そのことについて、代表合宿トレーニングでの「かこみ取材」で聞いてみたことがある。「遠藤さんは(どのスポットなど)何をイメージしてフリーキックやコーナーキックを蹴りますか?」ってね。

 普段の「かこみ取材」では「聞くだけ」に徹するのですが、そのときは、遠藤ヤットと目が合ったことで「つい」声が出てしまった。その質問について、しばし沈思黙考したヤット。短く「適当ですよ・・適当・・」なんて答えていた。

 もちろんフリーキックやコーナーキックは、岡田ジャパンにとって大切な「勝負ツール」だから、そう簡単に「戦術的なコア」をバラすわけにゃいかないよね。もちろん、こちらもそんなことを期待していたワケじゃないし、コンセプトレベルのハナシが聞ければ・・なんて思っていたわけなのです。

 でもまあ考えてみれば、「適当」という言葉には、「いい加減」という意味合いも含まれているけれど、「ある状態や目的に、ほどよく当てはまること・・(広辞苑)」なんていう意味もあるから、そこでは「そのように」理解していたけれどネ。

 とにかく中村俊輔にしても遠藤ヤットにしても、ココゾ!の勝負所(セットプレー場面)において、フィニッシャーが事前の勝負(駆け引き)アクションをスタート出来るだけの(もちろん動かずに相手マーカーを抑えること等もアクションの一環!)確信を与えているということが言いたかった筆者なのです。肉を切らせて骨を断つというギリギリの勝負を着実に勝ち切るために・・

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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