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2009_海外サッカー・・中村俊輔(セルティック)とデイヴィッド・ベッカム(ミラン)・・(2009年2月3日、火曜日)

今日は所用が重なったことで、中村俊輔(インバーネス対セルティック戦)とデイヴィッド・ベッカム(ラティオ対ACミラン戦)のビデオを見はじめたのは深夜になってからでした。ということで、気付いたポイントだけを短く・・

 俊輔だけれど、たしかに出来はイマイチだった。でも、プレー内容が良くなかったのは、まあ・・セルティック全員ということだよね。そんな流れのなかで、俊輔だけに良いプレーを要求するのは酷というモノです(もちろんこちらは、俊輔に、足が止まった悪い流れを好転させるリーダーシップを取って欲しかったわけだけれど・・)。まあこの試合は、典型的な「トーナメント現象」だったということです。

 スコットランド・プレミアリーグのトップをひた走るセルティックと最下位インバーネスとの対戦。それも、インバーネスのホームゲームだからね。彼らの気合いがメーターを振り切るくらいに高揚するのは道理。たぶん監督さんは、「確かにオマエたちの才能はセルティックに劣るだろう・・でも、意志のパワーでも負けたら、それに対しては、まったく言い訳は立たないぞ・・とにかくギリギリまで闘ってこい!・・」と選手を送り出したに違いない。

 そのことは、インバーネス選手が魅せつづけた、ディフェンスでの闘う姿勢から明確に見て取れました。ボールをめぐるせめぎ合いシーンでは、ほとんどのケースで、インバーネスの方が人数が多いのですよ。だから、中村俊輔も含め、セルティック選手がある程度フリーでプレーできる状況は、ほぼ皆無だった。それほどインバーネス選手たちは、攻守にわたり、全力で走りつづけていたということです。

 とにかく、インバーネスの闘う意志のレベルには、もの凄いモノがありました。結局0-0で引き分けたわけですが、この試合での見所は、最後まで尽きることがなかったインバーネスの闘う意志といったところですかね。

 あっと・・いつも書いているように、才能レベルの「差」は、攻守にわたってしっかりと走る(闘う意志の表象!)という大原則を踏まえた上ではじめて、グラウンド上に現出させることができるのですよ。

 それともう一つ。相手を甘く見て(闘う意志が減退した状態で)ゲームに入っていった場合、そんな中途半端なマインドを「チーム全体として」再び高揚させることほど難しい作業はないということです。サッカーは、攻守にわたる一つひとつのプレーが有機的に連鎖することで初めて優れた機能性を発揮させられるような『ホンモノのチーム(組織)ボールゲーム』なのですよ。

 ということで、次は、スーパープレーを披露しつづけるACミランのデイヴィッド・ベッカム。

 いいですネ〜〜。プレーのいたるところに、デイヴィッド・ベッカムの「強固な意志」を感じますよ。そう、「フットボールネーションでもう一花咲かせたい」という意志。

 この試合でも、立ち上がり数分間に魅せた彼のディフェンス姿勢を見れば、誰もが、その強固な意志を明確に感じたはず。

 例えば立ち上がり3分あたりに魅せた、相手の勝負スルーパスをカットした忠実なインターセプト。もちろん「当然の忠実カバーリング」とはいえ、その勝負タテパスが出される直前のタイミングで、既に全力ダッシュのパスカットアクションに入った「意志のプレー」は特筆モノだった。それも、相手の勝負パスが狙う決定的スペースを正確に「読み」、そこへの最短コースを全力スプリントで移動したんだからね。

 チームメイトの誰もが「サンキュー」と思ったことでしょう。それも、そんな忠実な「汗かきカバーリング」を実行したのが、スーパースターのベッカムだからね。次の攻撃で、彼にボールが回らないはずがない。

 どこかの誰かさんのように、「良いプレーが出来ないのは、オレにボールが集まらないからだよ・・」なんてワケの分からない不満を吐き出す、自分をマラドーナだと勘違いしている(!?)中途半端な才能とはワケが違うということだね。

 もちろんベッカムは、自分の売りであるポジティブな特長だけではなく、限界についても、正確に理解し、それに基づいてプレーしている。だからこその(チーム全体のボールの動きを活性化する)シンプルな球離れや、(勝負の人の動きを誘発する)クリエイティブで効果的な「仕掛けパス」なのですよ。

 その仕掛け(勝負)パスのなかでは、言うまでもなく、カープを掛けた右サイドからのクロスボールは超一級。それがあるからこそ、相手ゴール前のセンターゾーンでの味方の「人の動き」を誘発するというわけです。

 とにかく、ベッカムが加入してからのミランの調子は最高潮。あっと、ベッカムが加入し、ロナウジーニョを排除してから・・と言った方が正確かな。(ピルロ、ベッカム、アンブロジーニの)スリーボランチと、活性化した(ザンブロッタとヤンクロフスキーの)両サイドバック、そして(セードルフ、カカー、アレッシャンドレ・パトの)スリートップの共演!?

 たしかに、まだ前後分断という傾向はあるけれど(もちろんスリートップの個人勝負プレーは観ていて楽しいし、その実効レベルは世界最高レベルではあるけれど、それに組織プレーニュアンスをもう少し加味できればベスト!)、互いの、使い・使われるメカニズムに対する相互信頼の高まりに応じ、徐々に、前後左右のポジションチェンジという「攻撃の変化」も出はじめているのも確かなことです。

 様々なニュアンスを内包する「バランス感覚」というキーファクターがうまく機能するようになれば鬼に金棒。ベッカム加入を契機にしたミランの復調プロセスには、本当に興味深いコンテンツ(学習機会)が山積みです。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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