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2009_ブンデスリーガ・・大久保嘉人は正しい方向へ発展をつづけている・・・・(2009年2月8日、日曜日)

いいね〜・・大久保嘉人。いや、良くなった(良くなっている)というのが正しい表現だろうね。

 攻守にわたって、ボールがないところで展開する汗かきプレー(意志)の量と質が高揚している。もちろんまだまだ課題も山積みだけれど、その点についても、彼の持ち味である「シュート感覚(ゴール決定センス)」との兼ね合いで、ヴォルフスブルクの名将フェリックス・マガート監督に、ギリギリ限界のところまで要求されるでしょう。

 才能との兼ね合いで要求される汗かきプレーの程度!? それは、彼の「シュート感覚(ゴール決定センス)」の価値が高いと判断されたら、汗かきよりも「それ」が優先されるケースも出てくるだろうということです。当然、チームメイトの「ハードワーク(汗かき仕事の)量」が増えるけれど、それでも、大久保嘉人の価値あるプレーによって、チームの目的が達成されるならば、彼らも大いに納得する!?

 とはいっても、大久保は、何人もの相手をドリブルで抜き去ってゴールを陥れる・・といった本物の個の才能プレーに秀でているワケじゃない。だから、チーム内での存在感を高みで安定させるためには、やはり(フェリックスに尻を叩かれながら!?)いまの組織ハードワークに対する「意識」をより展開させていかなければならないのですよ。

 それにしても、大久保嘉人のシュート・スポット(実際にボールが来るスポット)への「入り方」は素晴らしい。最終勝負シーンでは、決して「様子見」になることなく、自分の感覚に従って、ボールが来るスポットへ「動きつづける」。その最大の効用は、相手マークからある程度フリーになった状態でシュートを打てるということです。

 もちろん「その動きによって」シュートチャンスを失うというケースも出てくるだろうけれど、そんな「待ち」の姿勢よりも、動きのなかでシュートに入っていく方が、格段に可能性が高まるものなのですよ。

 「待ち」からシュートに入るケースでは、相手のハードマークによって「動きを制限」されながらシュートを打たなければならないわけだけれど、「事前」の鋭い動きのなかからシュートに入れたら、相手のマークからある程度フリーになれることも含め、ゴールを陥れる確率を飛躍的に高められるわけだからね。

 やはり、組織パスをベースにシュートシーンを演出するプロセスでは、シュート・スポットへの(ボールがないところでの)動きが基盤になるということだけれど、「それ」は、トレーニングを積み重ねることでしか発展させられません。

 要は、選手それぞれが脳裏に描くシュートまでの「イメージ・プロセス」を、いかにうまくシンクロ(同期)させていくのかというテーマのこと。最終勝負までのプロセスイメージを、関わる選手たちが明確に「シェア」できていれば、流れるような人とボールの動きからシュートが生まれるはずです。逆に、動きの止まった「待ち」からの強引なシュートばかりというのでは、やはりトレーニングの質が問われるということです。

 もちろん、マラドーナのような世紀の天才ドリブラーがいれば、周りは、その勝負イメージを邪魔しないことの方に気を遣わなければならないわけだけれどネ、あははっ・・

 また大久保嘉人は、攻撃の組み立て段階でも、決定的スペースへの抜け出しとか、戻り気味に動くことで味方のタテパスを要求したりとか、ボールがないところのプレーの量と質(その実効レベル)でも発展をつづけていると思う。

 要は、前戦での(ボール無しの)アクションをつづけることで(緩急をつけたメリハリあるフリーランニング=パスレシーブの動きによって)うまくタテパスのターゲットにもなっているということです。また、タテパスを受けてからも、相手のハードマークをモノともせずにしっかりとボールをコントロールし、次の仕掛け(リスキーな)展開パスを出し、自らは、パス&ムーブで、次のスペースへ全力で移動していく・・なんていう組織的な実効プレーでも存在感を大いにアップさせている。

 いまの大久保は、「攻撃でのボール無しの汗かきプレー」に対する意志が、大きく高揚していると思うのですよ。

 もろちん、岡田武史監督による(厳しい!?)意識付けによって、日本代表チームでの組織プレーコンテンツも良くなってはいたけれど、その「意志の傾向」が、フェリックス・マガートによって拍車を掛けられた・・ってなことなのかな。

 やはり、環境こそが人を育てる・・のですよ。何せ「あの」大久保が、必要とあらば、最前線から全力のチェイス&チェックを仕掛けるんだからね。

 まあ、とはいっても、前戦からの(守備での)全力チェイス&チェックも含め、全体的なハードワークでは、もちろんまだ足りない要素の方が多い。いまは、前述した「シュート感覚(ゴール決定センス)」や組織的な展開プレーが、ある程度の組織ハードワークを基盤にしていることで目立ってはいるけれど、それにしても、すぐに「本質的な価値によって厳しく評価」されてしまうかもしれない。

 やはり、攻守にわたるハードワーク(要は汗かきに対する意志)を、もっともっと研ぎ澄ませていかなければならないということです。特に(世界に対して、様々な意味の限界を内包している)日本代表チームでは、その意味はより深くなる。

 とにかく、数日後のオーストラリア戦が楽しみだね。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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