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2009_中村俊輔・・組織プレーと個人プレーの高質なバランス!?・・(2009年3月1日、日曜日)

やっぱり「見えてしまう」からな〜〜・・

 セントミレン戦での中村俊輔。例によって、攻守にわたる優れた組織イメージを基盤にした実効プレーを魅せつづけます。

 守備。ボールがないところでの、チェイス&チェックに代表される「汗かき実効プレー」については、もう書くまでもないよね。それがあるからこそ、周りのチームメイトが効果的に「次の」ボール奪取勝負を仕掛けていけるし、中村俊輔に対するフェアな信頼感も醸成されるし、次の攻撃でも彼にボールが集まる。

 もちろん中村自身も、スッと、器用に相手からボールを「スリ取って」しまうなど、優れた「ボール奪取センス」も魅せる。もちろんパワーとスピード主体の競り合いじゃ簡単に置き去りにされてしまうシーンもあるけれどネ・・

 ところで、中村俊輔の「ポジション取り」。基本的には、攻守にわたる「味方とのポジショニングバランス」を考えながらグラウンド全面を動きつづけるという自由なイメージ。中村俊輔からすれば、そのベースになっている発想自体は極めてシンプルなものなんだろうね。攻守の目的を達成するための『自分のイメージを主体にした』動き・・。

 攻守の目的だけれど、言うまでもなくそれは、守備では相手からボールを奪い返すことであり、攻撃ではシュートを打つこと。その目的を強烈にイメージし、主体的に「動きつづける」中村俊輔ということです。

 要は、仲間の動きに対し、それに呼応するようにポジショニングのバランスを取るというのではなく、あくまでも自分が主体で動くことで、仲間の動きを「リードする」というニュアンスの方が強いと思いますよ。もちろん、仲間の動きに対応するというケースも多いわけだけれどね・・。

 例えば、彼が動く(中央ゾーンへ入り込んでいく)ことによってスペースが生まれ、右サイドのヒンケルが、どんどんそのスペースを活用したりするような現象。もちろん、ヒンケルのオーバーラップを明確にイメージした(でも、その状況での最終勝負の流れに乗れなかった!?)俊輔は、彼が出ていったことで空いてしまった右サイドバックのスペースを(次の相手の攻撃に備えて)ケアーしたりする。

 ちょっと錯綜するけれど、守備と攻撃は、「同期的にオーバーラップ」している部分も多いから、攻撃のための(シュートを打つための)動きが、次のディフェンスに備える動きへと素早く柔軟に切り替わっていかなければならないのですよ(攻撃から守備へ、守備から攻撃へのイメージの切り替え作業)。その部分でも、中村俊輔は、優れた「クリエイティビティー(創造性)」を魅せつづけるということです。

 とにかく、中村俊輔の動きは、攻守にわたって、素早く、広く、そして効果的だということが言いたかったわけです。ボール奪取プロセスをうまくリードする、ボールがないところでのマーキングやチェイス&チェック・・攻撃では、「組織的なボールの動き」をリードするようなボールがないところでのパスレシーブの動きやシンプルなタイミングでの組み立てパスや仕掛けパス・・などなど。

 ということで冒頭のテーマに入っていくことになります。そのテーマとは、組織パスプレーと個人勝負プレーのバランス・・。

 セルティックのチームメイトは、中村俊輔の「視野の広さとパス能力」に対して絶対的な信頼を置いています。だから、俊輔へパスが回りそうになっただけで、スッと、次のスペースへ入り込む動きをスタートさせたりする。

 もちろん(パスを受ける前の!)中村俊輔も、その動き(仲間の意図)も明確にイメージできている状態で味方からのパスを受けるのですよ。だからこそ、シンプルなタイミングの「効果的パス」を繰り出せるというわけです。

 でも、どうも近頃、組織パスプレーをリードすることでの存在感がアップしているのに対して、「中村俊輔の魔法」が繰り出される頻度が下がっていると感じられる。要は、勝負所での突破ドリブルとかタメとかの「個人勝負プレー」を繰り出すシーンが少なくなっていると感じられるのですよ。

 もちろんレンジャースとか、他の強豪チームを相手にした場合、プレッシャーが強烈だから、個人勝負を繰り出すタイミングや状況も限られてはくるけれど、プレッシャーが弱い相手に対したゲームでも、組織パスプレーが目立ち「過ぎる」ような印象を持つのです。

 要は、「ヨシッ!ここは勝負だ!!」という個人プレーを繰り出すチャンスでも、どちらかといったら、勝負パスを出す方が多いという印象なのです。たまには、マクギーディーのような強引な突破ドリブルにチャレンジしてもよさそうなものだけれど。

 もちろん彼の場合は、マクギーディーのようなスピード武器のドリブルじゃなく、相手の重心をもて遊ぶようなフェイント主体の(二軸動作テンコ盛りの)魔法ドリブルだけれどネ。

 それが、冒頭の「俊輔は見えているから(見えすぎているから)な〜〜・・」という表現になった。見えている(見えすぎている!?)からこそ(経験則として!?)より可能性の高いコンビネーションを選択してしまう。フムフム・・

 ここで、ちょっと発想を変えてみる。それは、攻撃の最大のテーマは「変化の演出」だという考え方。相手ディフェンスが、「ヤツはパスを出す・・」と確信している状況で、その相手ディフェンスの「発想の逆を取る」ように、相手がピックリするような突破ドリブルを仕掛けていったら・・。

 仕掛けプレーの「幅」が広がれば、もちろん相手ディフェンスも対応に苦慮する。だからこそ、中村俊輔の才能が、より効果的に機能する・・。もちろん彼自身も、「もっと個人プレーも繰り出していかなければ・・」と思っているはず。大事なことは、個人勝負を仕掛けていけるような状況でボールを持つということを、より強くイメージすることなのかもしれないね。

 それにしても・・。まあ一点目は相手GKのミスだったけれど(とはいっても、相手ディフェンダーの強烈なプレッシャーをモノともせずに放った右足シュートだったから価値あり!)、流れのなかでのワザあり左足シュート(二点目)、見事なフリーキック(三点目)は素晴らしく見事なゴールだった。

 あっと、これでハットトリック完成か・・。派手だね〜〜。でも「それ」の方が中村俊輔には似合う。やっぱり彼には、実効レベルの高い「地味な!?」組織プレーをベースに、出来る限り頻繁に、彼の天才(俊輔の魔法)も披露してもらいたいよね。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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