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2009_「J」_テレビ&スタジアムで二ゲームを「はしご」しました・・それぞれに興味深いコンテンツが満載だった・・(モンテディオ山形vsジェフ千葉、ヴェルディ東京vsベガルタ仙台)・・(2009年4月5日、日曜日)

まず、テレビ観戦した「J1」のモンテディオ山形vsジェフ千葉から。

 たしかに、リーグトップチームと比べれば、個人のレベル(攻守にわたる局面プレーのコンテンツ)で少し見劣りはするけれど、一点を争う緊迫感は、それを補って余りあるレベルに達していましたよ。テレビ観戦だったけれど、意識がテレビスクリーンに釘付けになった。あ〜〜、疲れた。

 全体的なゲーム展開は、ジェフのアレックス・ミラー監督が言うように、どちらに勝利の女神が微笑んでもおかしくないという拮抗したものでした。とはいっても、私の目には、ジェフのサッカー内容に一日の長があると映りました。中盤でのボール奪取の「内容」、そして仕掛けコンテンツで、ジェフに分があると感じていたのです。

 そんなジェフのポジティブな流れの立役者は、何といっても、アレックス。攻守にわたり、まさに「鬼神」の活躍でした。特にディフェンス。その、疲れを知らない「チェイス&チェック」や「インターセプト」はたまた「泥臭いボール奪取アタック」によって、ジェフ中盤の守備(ボール奪取プロセス)がどれほど活性化したことか。

 アレックスのプレーを観ていて、やはりボール奪取プロセスのキーポイントは「守備の起点」にあると再認識させられたものです。「そこ」がしっかりとしていれば、イメージを膨らませる周りのチームメイトによる次の守備(ボール奪取プロセス)が創造的にパワーアップするのも道理なのですよ。

 そして、そんなアレックスのダイナミックな守備に後押しされるように、次のジェフの攻撃にも勢いが乗っていく。私にとって、この試合の「内容的な勝者」は、あきらかにジェフ千葉だったのです。

 それでも、試合時間も残り数分というタイミングに、一瞬の「集中切れ」によって、モンテディオの秋葉勝が決勝ゴールを叩き込んでしまう。

 それは、明らかにジェフ守備陣のマークミスでした。秋葉勝は、佐藤健からのラスト縦パスを受け、そのままキャノンシュートを決めたのですが、その秋葉勝に対するマークが一瞬甘くなってしまったのです。秋葉勝をマークしていたそのジェフ選手は、タイミングよくスタートを切った秋葉勝に眼前のスペースに入り込まれ、そのまま身体を抑えられた状態でシュートを打たれてしまったというわけです。

 それは、本当に悔やまれるマーキングミス。もちろん、そんなマーキングミスを誘発した秋葉勝の忠実な「走り」は賞賛に値するけれど(モンテディオは、何度も、ココゾの勝負所では、忠実で危険な組織コンビネーションを魅せていた!)、やはり「あそこ」は、予測ベースで「マーキング・ポジション」を調整していなければならなかった。代償の大きな学習機会ではありました。

 そんなジェフに対し、モンテディオは、最後の最後まで、まったくマークのズレることがなかった。たしかに浮き球クロスからの巻誠一郎のヘディングシュートなど、何度かチャンスは作り出したけれど、ジェフが繰り出す、激しい人の動きを基盤にしたコンビネーションチャレンジは、モンテディオの忠実な「汗かきマーキング」に、ことごとく潰されていた。モンテディオが魅せつづけた高い集中力は賞賛に値しますよ。

 モンテディオの小林伸二監督は、良い仕事をしている。

 ところで、素晴らしい才能に恵まれたジェフの谷沢達也。彼が秘めるレベルを超えた天賦の才ゆえに、そのプレーを観るたびに、残念な気持ちで一杯になる。もちろん、アレックス・ミラー監督のウデによって、忠実にディフェンスに入ったり、攻撃でも、ボールがないところでも「より」しっかりと走るようにはなったけれど、やはり、まだまだ「意志の強さ」が足りない。

 守備では、もっともっと積極的にボール奪取プロセスに絡まなければならないし(そう、チームメイトのアレックスのように!)攻撃でも、チームにとって大変な価値を発揮する得意の勝負ドリブルを「より有利なカタチ」で仕掛けていけるように、もっともっとボールがないところで動きつづけなければならないのですよ。

 とにかく、いまの彼のプレー内容じゃ、単に「つなぎのプレイヤー」で終わってしまうのがオチだよね。それは、日本サッカーにとって大いなる損失じゃありませんか。

 これからは、もっともっと谷沢達也に注目してジェフの試合を観ることにしよう。

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 ということで、次は「J2」のヴェルディ対ベガルタ仙台。この試合では、ベガルタが、彼ら本来のチカラを存分に発揮し、3-1で完勝を収めました。

 守備では、チェイス&チェックや周りのマーキング(忠実で確実なマークの受けわたし)、協力プレスや読みのインターセプトなど、全ての面で、ベガルタがヴェルディを凌駕した。・・というよりも、ヴェルディの守備が、あまりにもいい加減すぎたと言った方が正確かもしれない。

 ヴェルディの高木監督も、ボール奪取プロセスでのアプローチが悪かったと素直に認めていたけれど、たしかに、チェイス&チェックが甘いだけではなく(それが原因で!)次のパスレシーバーに対するマークや協力プレスを司る「集散の動き」も鈍重の極みだった。

 高木監督は、その要因として、意欲や執着心でベガルタに負けていた・・と語っていたけれど、その責任は、心理マネージャーとしての監督が一身に負わなければなりません。

 とにかく、このところのヴェルディの調子の悪さが「鈍重な守備」にあることは確かな事実です。

 サッカーでは、とにかくまず守備からゲームに入っていかなければならないのですよ。守備が活性化すれば(要は、自分たちのイメージ通りに相手からボールを奪い返すことが出来れば!)自然と、次の攻撃にも勢いが乗ってくるものです。人とボールの動きが活性化することで、相手守備の穴(スペース)を効果的に突いていけるし、そのことで、大黒将志、レオナルド、飯尾一慶だけではなく、この試合に出ていなかった、平本一樹や河野広貴といった個の才能も存分に表現できるようになるはずだからね。

 ところで、ベガルタが挙げた、見事な、本当に見事な2点目と3点目。そのことについて、手倉森誠監督に聞いてみた。

 「ベガルタが挙げた、カウンターからの二点目と、コンビネーションからの3点目・・それは、まさに目の覚めような素晴らしいゴールだった・・もちろん、ヴェルディの守備が悪すぎたという要因もあったけれど、それを差し引いても、あまりお目にかかれないほど素晴らしいゴールだったと思う・・監督は、そのゴールを観て、内心、快哉を叫んでいたと思うのだが・・」

 「そうですね・・やった〜、という感じでした・・実は先週、バルセロナのビデオを観せたんですよ・・いかに彼らが、シンプルなパスを積み重ねることで相手守備ブロックを崩しているのかということを見せるためにね・・互いのポジショニングを(事前に)イメージできれば、確実にシンプルなボールの動きを演出できるし、それで相手守備ブロックも、より効果的に崩すことができる・・そんなことを確認しあったわけですが、そのことで、ヴェルディの守備を誘い出してウラのスペース突いていけたのかもしれません・・」

 手倉森誠監督が、そんなニュアンスのことを言っていた。フムフム・・。

 バルセロナのサッカーは、本当に、この上ないイメージトレーニング素材だよね。そのことは、ベガルタにとってだけじゃない。世界的な情報化(要はテレビと放送コンテンツの国際化)によって彼らの夢のようなサッカーが世界中で視聴され、そのことで、全世界のサッカーレベルがどんどんと高揚しているのですよ。

 これまでに何度も書いてきたように、プレー動作を司るのは(意識的に・・無意識的に)脳内に描写されるイメージですよね。そのイメージのリソース(材料)に広がりと深みが出てくれば、それだけで、グラウンド上のプレーにも、様々な広がりと深みが出てくるものなのです。要は、繰り返し、素晴らしいプレーを観ることで、自分自身のプレーが、本当にそれに近づいていくということです。

 手倉森監督は、バルセロナが展開するシンプルで危険なボールの動きを繰り返し見せることで(また、シンプルなボールの動きを演出することの難しさを再認識させることで!?)選手たちの「仕掛けイメージ」に広がりと深みを与えた(それまでの間違いに気付かせた!?)。そのことで(それまで無駄に重なることが多かった!?)選手たちの動きとポジショニングも、うまくバランスするようになったということなんだろうね。

 あ〜〜、面白かった。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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