トピックス
- 2009_日本代表・・後半の選手交代を境にサッカーが抜群に活性化した・・(日本vsオーストラリア、0-0)・・(2009年2月11日、水曜日)
- 久々の強い相手との(本格的な)勝負マッチ。見応え十分でした。「そうそう、これ、これだよ!」なんて、舌鼓を打っていた。
とはいっても、たしかにオーストラリアは、後半になって疲れがドッと出ていた。そのことは、ピム・ファーベク監督も指摘していたし、ほぼ全員がヨーロッパで活躍する彼らの日本への「集まり方」を見れば、それも至極当然のように思えてくる。何といっても、主力の何人かは、昨日になってやっと来日したんだからね。
ということで、(全体的にみた場合)日本が席捲したと言えるこのゲームの内容が、本当の意味での「両チームの実力を推し量る」スタンダード(評価基準)になるというわけじゃありません。まあ、その評価については、6月17日にオーストラリアで行われるアウェーマッチまで待ちましょうかね。
日本は、よかったですよ。協力プレスから、効果的に(それも高い位置で)ボールを奪い返し、そこから素早く、人数をかけた「組織的な仕掛け」を魅せつづけた。人とボールがよく動くコンビネーションを基盤に、オーストラリア守備ブロックのなかで、生まれては消え、消えては再び生まれてくる生き物(=要はスペースのことネ)をうまく使いこなしていたし、それをベースに、何度も決定的チャンスを作り出していた。
「我々は(今日のような)良い組織サッカーをつづけていくしかないし・・それを基盤に、より多くのチャンスを作り出せるように進歩していくしかない・・」
岡田武史監督は、そんなニュアンスのことも言っていた。意味深だね。私は、その言葉をこんな風に解釈していましたよ。
シュートを打つことと、それをしっかりと決めることには、文化的・心理的なファクターも含め、それぞれに様々な深い意味合いが内包されている・・日本は、その視点でも「まだまだ」なわけだから、とにかく、攻守にわたって、勇気のある(リスキーな)チャレンジをつづけることで、なるべく多くのチャンスを作り出していかなければならない・・フットボールネーションとのギリギリの勝負を勝ち切っていくためには、とにかく質の高いチャンスを、出来る限りたくさん作り出すことが必要なんだ・・なんてネ・・
そのテーマについては、以前、日本人の場合、二面性パーソナリティー(サッカー的な二重人格!?)が必要だ・・なんていうコラムを発表したことがあります。それについては「このコラム」を参照してください。
ということで岡田ジャパン。私は、彼らのサッカーがグンとペースアップし、本当の意味で「攻守にわたるダイナミックな組織プレー」が善循環しはじめたのは、後半12分に松井大輔が「抜けてから」だと思っています。岡田監督は、前半の半ばを過ぎたあたりから後半に掛けてサッカーが良くなった・・と言っていたけれどネ。
どうしようかな・・。あまり松井大輔に対するクリティックばかり書くのは気が進まないけれど、とにかく彼のパフォーマンス(彼がイメージするサッカー!?)が、岡田ジャパンが志向するベクトルとはかなりズレていることは確かな事実だからね。
彼も、本田圭佑のように、ボールがないところで動かないし、まともな守備もしない。たまには守備にも入るけれど、そこでの汗かきパフォーマンスが安定しない。
たしかにゲーム立ち上がりの数分は、全力のチェイス&チェックとか、パス&ムーブ(タテのスペースでのパスレシーブ)を魅せてくれた。そんなダイナミックなプレーを観ながら、「アッ・・松井大輔が甦ったかな・・そう、一昨年のクラーゲンフルトで魅せたダイナミックプレー・・」なんていう期待が高まったものです。でも・・
そんなダイナミックプレーの兆しが感じられたのは、結局その数分間だけ。その後は、例によって、攻守にわたって、全力スプリントをする場面などほとんどなく(全力スプリント=意志の発露!)、ボールを持っても、こねくり回すことで、日本の仕掛けをスピードダウンさせてしまったり(周りのチームメイトの足を止めてしまうネガティブ効果が大きい!)、まったくパス&ムーブをせずに止まって足許パスを待ったり、守備でも、チェイス&チェックなんかやらないし、相手ボールホルダーに対する「寄せ」もまったくのお座なり(相手が自由に勝負パスを繰り出してしまう!)。フ〜〜
とにかく、彼のプレーには、フラストレーションだけが溜まりつづけていました。
彼が秘める潜在能力には高いモノがある・・でも「それ」を、自ら限界まで引き出し、誇示することで(自己主張することで)チーム内の存在感をアップさせようとする強い意志を感じない・・そんな意志さえあれば、あれほどの高い能力を秘めた選手なのだから、チーム内だけじゃなく、本当の意味での「社会的レスペクト」までも獲得できるのに・・
まあ、本田圭佑にしても松井大輔にしても、合宿中のトレーニングでは、攻守にわたる全力スプリントや汗かきプレーなど、それなりの組織パフォーマンスを魅せていたということなんだろうね。それがなければ、岡田監督が使うはずがないだろうしね。また、単に「ヨーロッパ組」ということだけを根拠に(まあ潜在能力は、ある程度のレベルにあるワケだけれど・・)出場するのだったら、チーム内モラルだって地に落ちてしまうでしょ。
ということで、彼らは先発に名を連ねたわけだけれど、でもフタを開けてみたら、その「怠慢なプレー」によって、周りの味方のプレーダイナミズムまでもが阻害されたと言わざるを得ないネガティブ現象ばかりが目に付いた。
実際、松井大輔がいなくなったことで、最前線の玉田圭司や田中達也、交替出場した大久保嘉人、攻守にわたる抜群の組織プレーと「個の勝負プレー」を魅せつづけた中村俊輔だけじゃなく、長谷部誠や遠藤保仁の守備的ハーフコンビや内田篤人と長友佑都のサイドバックも含め、守備での協力プレス(優れた守備意識)をベースに、まさに「渦巻きのようなポジションチェンジ」とも呼べるような、人とボールが動きつづける組織的なダイナミックサッカーが機能するようになった。
もちろん、そんな激しい動きのなかでも、遠藤保仁や中村俊輔といったところが、前後左右の「バランス」をうまく司っていたわけだけれどね。いや、見応え十分でした。
大久保嘉人だけれど、よかったですよ。攻守にわたって、以前のような「意志や意識の空白」を感じることが少なくなった。
守備での効果的な機能性(効果的な汗かきプレー)だけではなく、攻撃でも、スペースへの抜け出しや爆発的なパス&ムーブ(全力スプリント)、はたまた勇気ある勝負ドリブルなど(大久保嘉人が仕掛けるドリブル勝負やフリーランニングが放散する強烈な意志とイメージが明確に見えるから、周りの味方も足を止めることがない!!)明らかに大久保嘉人はイメチェンしている。環境こそが人を育てるということか・・。
今日はこんなところですかネ。このコラムで書いたことについては、皆さんもビデオを見直すことでご確認あれ。あっと・・。それから、ある読者の方から「プレビューも書いて欲しい・・」という要望がありました。そうだな〜〜。まあ、状況を見て(わたしのモティベーションとの兼ね合いで!?)対応できれば・・なんて思っています。
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ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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