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2009_日本代表・・「組織サッカー」がもどってきた・・やっぱり人だよ、人!・・(日本vsフィンランド、5-1)・・(2009年2月4日、水曜日)

さて、久しぶりにスタジアム観戦した日本代表。良かったですよ。もちろん、相手がフィンランドの若手代表チームであることを考えれば(バクスター監督も、このチームから一軍チームに入るのは一人か二人くらいだと認めていた!?)手放しで喜べるわけじゃないけれどネ。

 とはいっても、日本代表のディフェンスは、組織的にうまく機能していたと評価すべきパフォーマンスを魅せてくれた。もちろん、いくら若手代表とはいえ、相手はフットボールネーションのフィンランドだからね、イエメン戦のように押し込みつづけられるわけじゃないけれど、それでも、忠実なチェイス&チェックを「守備の起点」に、次、その次と、ボール奪取(組織)プレスの輪を柔軟に機能させることで、効果的に相手からボールを奪い返していた。

 要は、守備の機能性が、バーレーン戦とは比べものにならないほどうまく機能しつづけていたということだけれど(もちろん、岡田監督が言うように、小さなトコロでは、まだまだ課題はあるにしても・・)そんな効果的な組織ディフェンスを観ながら、私は、組織的なプレス守備を標榜するチームのミッドフィールダーのなかで、本当に一人でも「協力プレスの流れ」に乗らなかったら、すぐにでも全体の機能性が地に落ちてしまうというセオリーに思いを馳せていた。そう、バーレーン戦での守備。そうそう、それにバーレーン戦では、協力プレスの流れにうまく乗り切れなかった選手が二人もいたしな〜〜。本田圭佑と稲本潤一・・

 そして私は、このゲームで日本代表が魅せつづけた機能的な組織ディフェンスを観ながら、稲本潤一が描く「守備プレーイメージ」のことを考えていましたよ。

 彼が所属するアイントラハト・フランクフルトでは、守備に入ったら、例によって互いのポジショニングバランスを重視する・・要は(相手ボールホルダーも含めて)ケアーする相手選手の受け渡しをスムーズに行うことに神経を使うということ・・だから稲本は、チェイス&チェックはほどほどに、次のボール奪取勝負(インターセプトや相手トラップの瞬間を狙ったアタック)ばかりにイメージを絞り込む・・そうだよな〜、フランクフルトは、そんなに積極的に(組織的な)フォアチェックを仕掛けていくような守備はやらないからナ〜〜・・

 もちろんフランクフルトのチームメイトたちは個のチカラがあるから、そのような「ポジショニングバランス・オリエンテッド」なディフェンスも、うまく機能させられるでしょ。でも、岡田武史が率いる日本代表チームは違う。守備に入ったら、チャンスがある者は誰でも、間髪を入れずにチェイス&チェックを仕掛けなければならないのですよ。その守備の起点プレーこそが、次、その次の「組織的ボール奪取コンビネーション」を活性化させ、うまく機能させる原動力なのです。

 いまさら、稲本潤一に、ガットゥーゾのような「ガツガツとした猟犬タイプの守備プレー」を要求するのは難しいのかもしれないネ。でも彼が、「アナタは汗かきプレスを仕掛けていく人・・私はボールを奪う人・・」なんていうイメージじゃ(日本代表の)中盤ディフェンスの機能性が地に落ちてしまうのは目に見えているしな〜〜・・

 だからこそ私は、球際の(ボール奪取勝負での)テクニックとパワーとスピードでは日本屈指の稲本潤一は、最終ラインこそがベストポジションだと言いつづけているわけです。もちろん稲本が、日本代表チームとフランクフルトとの「チーム戦術的ディフェンスイメージの相違」をしっかりと理解し、もっと積極的に「組織プレスの輪」に入っていくような汗かきプレーにも精進すればハナシは別だけれどネ。さて・・

 あっと・・ハナシが逸れてしまった。さて試合。

 このゲームで、もっとも目立っていたのは、何といっても岡崎慎司のタテへの(決定的スペースへの)抜け出しフリーランニング。もちろん、そのフリーランニングを明確にイメージした勝負のタテパスがあって初めて、その動きが活きるわけだけれどネ。要は、一発タテ勝負コンビネーションの「イメージ・シンクロ」のことです。

 立ち上がりの7分、8分、11分と、立てつづけに、岡崎が決定的スペースへ飛び出し、その動きを「明確にイメージした」ベストタイミングの(コース、球種などなどの)勝負パスが飛んだ。ビッグチャンス!! 勝負パスを出したのは、遠藤ヤット、中村憲剛、内田篤人といったところ。でもゴールを割ることが出来ない。

 そうね・・決定力が課題だよネ・・そこでは心理的なファクターが大きいから、それは日本人のもっとも大きな壁だって言えるよな〜〜・・なんて斜に構えていた矢先の前半14分、内田篤人からのタテパスに抜け出した岡崎慎司が先制ゴールを決めたのですよ。思わず・・甘く見てスミマセン・・なんていう声が出た。あははっ・・

 それだけじゃなく、前半31分には、中村憲剛からのタテパスと岡崎の「抜け出し」が見事に「シンクロ」し、二点目が生まれた。お見それしやした〜〜!!

 こんなに頻繁に、そして見事に「決定的スペースを攻略する一発タテパス&抜け出しコンビネーション」が決まるゲームも希だよね。逆から見れば、何度も、何度も、繰り返しタテ一発の仕掛けコンビネーションにやられてしまったフィンランド守備ラインが「ザル」だったということですかね。

 岡崎慎司は、本当に素晴らしい「抜け出し感覚」を備えていると思いますよ。その優れた感覚に対する「信頼」があればこそ、中盤である程度フリーでボールを持ったチームメイトが、岡崎の抜け出しの可能性を「自動的に」意識するようになる!? まあ、そういうことです。

 もちろん、同じような「抜け出し勝負イメージ」に高いクオリティーを備えている選手に、サンフレッチェの佐藤寿人やガンバの播戸竜二がいるわけだけれど、この時点じゃ、ディフェンスでの貢献度なども含む「攻守にわたる組織プレークオリティー」という視点で、岡崎慎司が一歩リードしていると言えそうだね。

 あと目立っていたのは(まあ中村憲剛や遠藤ヤット、はたまた自信を取り戻してきた橋本英郎といったところは、例によって高みで安定したステディープレーを披露していたけれど・・)何といっても香川真司をピックアップしなければなりません。この試合での彼は、とても良いパフォーマンスを魅せていたと思いますよ。

 要は、日本代表チームにも「慣れ」てきたことで、本来のパフォーマンスを「より積極的に」誇示できるようになってきたということなんだろうね。若い選手には時間が必要だけれど、その視点で、香川真司の「秘めたる才能」を確信して使いつづけた岡田武史のガマン強さに「レスペクトッ!」なのです。

 香川真司の「自信に裏打ちされた自己主張プレー」のなかで、もっとも目立ち、そして効果的だったのは、何といってもドリブル勝負。まあ、そのドリブルの現象面を具体的に表現することは割愛するけれど、とにかく、香川真司のドリブルには、『(個人勝負で)相手を抜き去って決定的チャンスを作り出せる』という期待を抱かせるに十分なダイナミズムが内包されていることだけは確かな事実だと思うのです。

 「この試合では、ヨーロッパ組に取って代われるだけの能力を秘めた選手がいると確信できた・・」

 岡田武史監督は、そんなことも言っていた。まさにその通り。ヨーロッパでプレーしているから国内組に優っている・・なんていう公式など、まったく存在し得ないのですよ。これで(監督の確信レベルが高揚したことで!!)本当の意味での「ライバル環境」を、より活性化させることが出来る。ホント、良かった、良かった・・

 最後になったけれど、「クロス勝負」というテーマにも少し触れておきましょう。

 「たしかに岡崎慎司のタテへの抜け出し感覚をベースにした岡田監督のイメージ作りは大きな成果を挙げているとは思うが、それに比べて、クロス勝負では、どうも具体的なイメージが見えてこないのだが・・」という私の質問に対し、岡田監督が「潰れ役」というキーワードを出した。フムフム・・

 要は、この試合での日本代表の「クロス勝負」からは、ニアポスト勝負とかファーポストゾーン狙いといった具体的なターゲットイメージが見えてこなかったということです。クロスボールが送り込まれる状況で、爆発的なクロスレシーブアクションを起こす「センターゾーンで待つ味方選手」も出てこなかったし、クロスボール自体も、そんな「意図したアクション」を意識したモノではなかった。

 そのことについて(まあ巻誠一郎かな・・!?)クロスボールに合わせて(例えばニアポストゾーンなどで)相手と競り合いながら「潰れる」ことで、ボールを「流す」ような選手がいれば、クロスボールも、より具体的な「狙い目」をイメージするようになるけれど・・という意味だったと思うのです。

 いまの日本代表チームの前線選手としては、玉田圭司、田中達也、香川真司、岡崎慎司松井大輔、大久保嘉人(まあ安田理大も含めるかな!?)といった「小兵」がメインだからネ。高さを備え、ポストプレー(これにも潰れるプレーというニュアンスが含まれている!)も期待できる「最前線のターゲットマン(潰れ役)」的なイメージのトップ選手は、巻誠一郎しかいないよね。その巻誠一郎にしても、基本的には「切り札」的な使われ方が基調だからね。まあ、ということで、いまの日本代表の攻撃陣は「ゼロトップ」が基本的な考え方ということです。

 高い「守備意識」を絶対的なベースに、縦横無尽のポジションチェンジを繰り返しながら、誰もがポストプレー(潰れ役)をやり、決定的スペースへ「抜け出し」、サイドゾーンを攻略し、最終勝負コンビネーションの「コアになったり、コマになったり」する。もちろん、最前線プレーの機能は、そんなモノだけじゃなく、数え切れないほど多いわけだけれど、(小兵)全員が、それらのタスクを臨機応変に果たしつづけるというイメージですかね。

 まあ、攻守にわたる(世界をアッと言わせるくらいに)レベルを超えた組織プレーを標榜する(!?)日本の場合、「そんな方向性」がいいかもしれないね。さて・・

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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