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- 2009_日本代表・・勝ったことは素晴らしい成功体感の蓄積・・でも実質的な内容では、世界との僅差はまだまだ歴然・・(ガーナvs日本、3-4)・・(2009年9月9日、水曜日)
- さ〜〜て、どのように総括しようか・・まあ、ポイントだけ簡単にまとめるところからコラムに入っていくことにしよう・・
・・結果を出せたのは、とても大事な果実だったと思う・・課題だったゴールを叩き込み(それも四つも!)、大逆転でアフリカの強豪ガーナに勝利したのだから・・
・・ゴールを奪い取った体感、そして実際に勝利を収めたことは、世界ベストフォーという「高み」へ挑戦していく上で大変な宝物になる・・「あの」ガーナから四点も奪って勝利したんだぞ!という、心理(自信&確信)ベースの蓄積・・
・・とはいっても、日本選手は「別の現実」も体感したに違いない・・世界の(アフリカの!?)スピードとパワーの凄さ・・そして、どんどんと発展しつづけている「組織プレーと個人プレー」のバランス(優れた戦術イメージ)の脅威・・
・・あれほど日本がゲームを支配していながら、またトゥーリオのスーパー(ダイレクト)スルーパスからの前田遼一のシュートや、中村俊輔から出たスルーパスを(決定的スペースへ抜け出して受けた)牛若丸(=中村憲剛)のフリーシュートなど、決定的チャンスも作り出したのに、結局は、長友佑都のハンドでPKを取られて先制ゴールを奪われただけじゃなく、後半の立ち上がりには、相手GKの一発ロングパスから、日本が誇るセンターバック中澤佑二が、ガーナFWギャンのスピードとパワーに翻弄されて(競り合いに敗れて)追加ゴールまでブチ込まれてしまう・・
・・また、せっかく牛若丸(中村憲剛)が、このオランダ遠征では初得点となる追いかけゴールを挙げたのに、後半21分には、一発のスルーパスから抜け出されたアモアに、簡単に三点目を奪われて突き放されてしまう(アモアが抜け出すときのダッシュスピードに、トゥーリオが置き去りにされた!)・・
・・たしかに日本は、攻守にわたるハイレベルな組織プレーを基盤に、ゲームのイニシアチブを握っていたし、前述したチャンスも作り出した(また、4ゴールも叩き込んだ!)・・とはいっても、ひとたびガーナが勢いよく攻め上がってきたときの迫力と危険度は、やはり日本代表の比ではなかった・・たしかに、ギリギリのところで、はね返してはいたけれど、日本の守備ブロックは、世界のスピードとパワー(それにアフリカ的な組織と個のハイレベルバランスも!?)を体感したはず・・
短くまとめると・・・たしかにガーナから4ゴールも奪って勝利を収めたことは大きな成果だったけれど、ギリギリの勝負マッチというホンモノの舞台でも勝ち切れるのかという視点(実質的な内容)では、世界との最後の僅差は、歴然としていた・・ということですかね。
それにしても日本は(ラッキーな要素も大きかったけれど)ホントに、よく4ゴールも決めたものだ。そのゴールに効果的に絡んでいたのは稲本潤一。三点目を決めた岡崎慎司のヘディング場面では、 相手最終ラインとGKの間に広がる決定的スペースを狙った、素晴らしいコースとタイミングのラストクロスを送り込んだし、大逆転ゴールとなった4点目は、彼自身が叩き込んだ。
たしかに稲本潤一は、「中盤の底プレイヤー」としては、まだまだ(日本代表が志向する組織サッカーにおいて求められる!)汗かきアクションの量と質に課題を抱えている。
中盤での(日本的な!?)組織ダイナミズムを生み出すための「仕事量」という視点は、まだまだなのですよ。でも、局面でのボール奪取勝負は相変わらず力強いし、(この試合では)攻撃でも「ここぞ!」のクオリティーを魅せた。まだまだ稲本潤一も捨てたモノじゃないネ。
とはいっても、やはり、いまの日本代表の「中盤カルテット(中盤クインテット)」が、攻守にわたって魅せつづける素晴らしい組織サッカーの量と質からすれば、いまの稲本潤一が、その機能性を「より」強化し、発展させられるかは疑問だね。
ここで言う「中盤カルテット」とは、長谷部誠、遠藤ヤット、中村俊輔、中村憲剛(牛若丸)の四人ということになるけれど、もう一人加えたクインテットということになったら(要はワントップ気味)、その四人に岡崎慎司が加わる!? 岡崎慎司については、どちらにしても攻守にわたるアクション半径が大きいし、彼自身も、二列目から飛び出していく方が効果的だと理解しているはずだからね。
もちろん「ゼロ・トップ」という発想からすれば、「六重奏(ヘキサ・・)」ということになるわけだけれど・・
皆さんも分かっているとおり、この「ゼロトップ」というのは、トップに誰もいないというのではなく、状況に合わせ、いつでも、誰でもトップに入って行けるという意味だよね。決まった選手がトップに張っているというのではなく、柔軟に、ワントップになったりツートップになったり、またそのメンツも、どんどん変化する。そうなると、相手の最終ラインも、守備イメージを効果的に構築できなくなる・・。フムフム・・
だから、例えば玉田圭司がFWメンバーに入ったら、彼も「六重奏グループ」の一角を担うということなるわけです。
まあ、日本代表の場合、攻撃陣は、限りなく「トータルフットボールのイメージ」でプレーするのが望ましいということだろうけれど、その意味で、このガーナ戦でも、しっかりとした成果を挙げたよね。
試合後の記者会見で、岡崎慎司が、こんな興味深いことを言っていた(テレビ観戦だと、こんなメリットがあるのか〜〜!?)。
「早いプレッシャーが機能すれば、どんな相手でもミスをする・・(そんな積極的なプレスの流れのなかでボールを奪い返すことができれば!?)次の攻撃でも、自分たちのなかでしっかりとボールを動かせる(より効果的に数的優位な状況を作り出せる・・」
また牛若丸(中村憲剛)も、インタビューに応えて、こんなコメントを出していた。
「相手のスピードとパワーはすごかった・・だから、なるべくフィジカルな接触をしないように、素早く、広くボールを動かしつづけるイメージでプレーした・・」
最終ラインをしっかりと押し上げる(中盤ゾーンをコンパクトにする)という基本的なチーム守備戦術を基盤に、忠実で素早く、クレバーな組織プレー(有機的なプレー連鎖の集合体としての協力ディフェンス)でボール奪取勝負を挑んでいけば、多くのシーンで、次の攻撃にも、人数と勢いが乗っていくものなのです。
そして、人数をかけることができれば(数的に優位な状況を作り出せれば)、しっかりとボールを動かすことで、相手とのフィジカルな接触を避けることができるし、そのことで相手を「心理的な悪魔のサイクル」に陥れることだってできる(相手がボールウォッチャーになることで消極的になって足を止めてしまう・・!?)。
サッカーはホンモノの心理ゲームだからね、そこでは、いかに効果的に、相手に「誤認させる(消極的な心理に陥れる)のか・・」というテーマもあるわけです。
だからこそ、最初からガンガンと積極的にボールを奪いにいくことでゲームのイニシアチブを握ることが大事なテーマになってくるのですよ。特に、個の勝負では大きなハンディーを抱えている日本チームの場合はネ。
そして、そんなダイナミックな組織プレーを、常に、高みで安定させられるようになったら(セルフモティベーションが完璧にコントロール出来るようになったら!?)、相手ではなく自分たちが主体になった「ゲームのペース配分」というテーマにも取り組んでいくわけです。
とはいっても、この「テーマ」に行き着くまでには、人の動きの量と質を「最高レベルで安定させる」ことが求められるし、志向する組織サッカーも完璧なモノに仕上げなければならないよネ。
難しいテーマだよね。もし、(個の)フィジカル、技術、戦術、そして心理・精神的なファンダメンタルズ(基本的な能力レベル)において、日本と比べて一日の長があるフットボールネーションの代表チームが、日本のように、豊富な運動量をベースにする、ダイナミックな組織ディフェンスからゲームに入ってきたら・・なんてコトを考えはじめたらネ・・。
まあ、とにかく、そんな(恐ろしい)ことは考えず、とにかく日本代表は、岡田武史監督が表明しているように、いまの(優れた守備意識を絶対的なベースにした)組織サッカーというベクトルを追求しつづけるべきだと思いますよ。
何せ、来年のワールドカップは「涼しい大会」になるんだからね(南アの6月-7月は、一年でもっとも気温が低い時期・・最高気温でも、ヨハネスブルクで16度前後!)。たしかにヨハネスブルクは、高度が高いけれど、とにかく暑い大会にならないことだけは確かですよ。岡田武史監督も、もちろん、そのことを意識して準備している(様々な意思表明をしている)に違いありません。
とはいっても、やはり(前述した)効果的な(自分たちがイニシアチブを握った!)ペース配分というテーマにも、なるべく早く取り組みはじめなければならないよね。でも、そこでの「心理マネージメント」はとても難しい。何せ、選手に、「言い訳のリソース」を解放することになるんだからね。
あっと・・この試合では、限界までガンガンの(プレッシング)ボール奪取勝負を仕掛けていくのではなく、より「狙いすました協力プレッシング」というスマートなディフェンスにも取り組んでいることが伺えるシーンもあったと思いますよ。
まあ、岡田武史監督のことだから、もちろん、多くのチーム戦術的ファクターを、できる限り「同期させて」準備しようとしているということなんだろうね。
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あっと・・忘れたことがありました。実は、「NPO法人横浜スポーツコミュニケーションズ」が主催する講演会をすることになりました。ホントに久しぶりの講演会。さて、どうなるか・・
下記は、その告知です・・
第22回フットボール道場 at TIA SUSANA
「湯浅健二独演会〜さて、戦術を語ろうか」
第22回フットボール道場は、実に5年振りに湯浅健二さんをお迎えして開催することになりました。
今回は、湯浅さんが会場入りした瞬間に、一番伝えたい事をフリーランニングでお語り頂くべく、湯浅健二独演会と銘打っての開催です。
中身のヒントとして湯浅さんのコメントを少しだけお伝えしておきます。
9月の大型連休中の21日、信濃町のティア・スサナへ是非お越しください。詳しくは、「NPO法人横浜スポーツコミュニケーションズ」まで・・
・・湯浅さんコメント・・
テーマとしては、やはり「戦術」的なモノが面白そう。現場の連中が、どんな発想でゲーム戦術を考えているのか・・等々。でも、やはり最後に出てくるのは「心理・精神的なバックボーン」。それが、クリエイティブなルール破り・・という永遠のテーマを支えます。自由にならざるを得ないサッカーだからこそ・・。わたしの発想の骨格は、「未必の故意」というテーマに行き着きます。それらこそが、リスクチャレンジの本質なのです。戦術は数学ではなく、最終的に「それ」を支えるのは、心理・精神的なチカラなのです・・
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ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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