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2009_JOMOカップ・・両国の攻撃ニュアンスの微妙な違い・・また、マルキーニョスと明神智和による(前後の)優れた守備意識のコラボレーション・・(2009年8月10日、月曜日)

韓日オールスター戦、JOMOカップ。週末は色々な用事が重なったことで、今日になってやっとビデオを観ることができました。

 両チームともに素晴らしく気合いの乗った(真剣勝負の)ハイレベルな対戦になりました。日本選抜チームの高揚した気合いからは、オズワルド・オリヴェイラ監督の「心理マネージャーとしての優れたウデ」が垣間見えてくる・・。

 そんなホンモノマッチとなった「JOMOカップ」。今回は、日本の方が、一枚も二枚も上手ということになった。そのゲーム内容は、組織イメージが個の勝負マインドを凌駕した・・なんて表現できる!? 

 このテーマは、微妙な「戦術イメージのニュアンス」が絡んでくるから興味深い・・。

 要は、相手とのフィジカルなコンタクトを出来る限り「排除」するような組織サッカーをイメージする日本に対し(とはいっても、サンフレッチェの『それ』に比べたら、まだまだ!?)、もちろん必要なところではしっかりとボールは動かすけれど、勝負プロセスに入ったら(どちらかといったら・・といったニュアンスで!)ドリブル勝負を最終勝負のメインツールとして前面に押し出す傾向が強い韓国(もちろん中盤でも、チャンスとなったら、タテのスペースをつなぐように超速のドリブルを積極的に繰り出していく!)といった、攻撃ニュアンス(共有イメージ)の違いのことです。

 もちろん日本も、マルキーニョスやジュニーニョといった「個のチカラ」に長けたドリブラーもいるけれど、彼らにしても、シュート直前の最終勝負に入るまでは、しっかりと人とボールの「軽快な動きのリズム」に乗りつづけるのですよ。

 微妙なニュアンスだけれど、マルキーニョスとジュニーニョ以外は、中村憲剛、遠藤ヤット、小笠原満男といった組織プレイヤーが「全体的な動き」を仕切っているからね。どちらかといったら「パサー・イメージの強い」彼らは、ゴリ押し(=イチかバチか)のドリブル勝負は仕掛けていかないよね。

 難しいニュアンスだけれど、韓国サッカー成功のバックボーンは、何といっても、そんな「自己主張の強さ」にあることは誰もが認めるところだと思いますよ。彼らの場合、サッカーがうまく機能するときは、そんな、中盤や勝負ゾーンの局面で繰り出される「個の勝負」が、とてもスムーズに「組織リンク」されるのです。

 あうんの呼吸!? 彼らは、誰が、どんな状況で勝負ドリブルを仕掛けていくのかということが明確にイメージできている・・だからこそ、周りの「ボールがないところでのサポートの動き」もうまく連動させられる・・だからこそドリブラーは、そのままドリブルで最終勝負へいくだけではなく、より良いポジションに入った味方への勝負パスを繰り出すという効果的オプションを「常に」高い次元で維持できる・・フムフム・・

 ただ、この試合の韓国チームは(たしかに何度かは、左サイドのチェ・ソングなどが繰り出した効果的な局面ドリブル勝負で決定機を演出したけれど・・)全体的な、人とボールの勝負の動きを「加速させる」ような局面ドリブル勝負が、うまく「流れに乗る」といったシーンを多く演出することが出来ず、徐々にリズムを失っていった。

 もちろんそれは、日本の守備ブロックが効果的に機能しつづけていたからに他なりません。忠実なチェイス&チェック・・それが、次のポール奪取勝負イメージにうまく連動しつづける・・だからこそ、韓国のリズムを分断できたし、良いカタチでボールを奪い返すことができた・・

 ということで、このコラムのメインテーマに入っていきます。その中心人物は、アントラーズのマルキーニョスと、ガンバの明神智和。

 この二人とも、とにかく素晴らしく効果的なディフェンスを魅せつづけていた。一方は最前線からの爆発的なチェイス&チェックで、もう一方は、抜群の「戦術眼」をベースにした後方での「忠実な穴埋めマーキング&カバーリング」や「タイミングの良いボール奪取勝負アタック」などで・・

 それにしてもマルキーニョスはスゴイね。その、最前線から繰り出しつづける忠実で爆発的なチェイス&チェックは、アントラーズの強さの大きなバックボーンの一つだ・・といっても過言じゃありません。もちろんアントラーズの場合は、本山雅志や野沢拓也といった優れた守備意識を持つ(組織マインドにあふれた)ミッドフィールダーも大変な貢献度だけれどね。

 まあ、前と後ろの「優れた守備意識のコラボレーション」ということか。この試合では、その「前後の守備意識のサンドウィッチ」を引っ張りつづけたのが、マルキーニョスと明神智和だったというわけですね。彼らの「忠実&創造的」なディフェンスを観ているだけで、入場料にお釣りがくるというもんじゃありませんか。

 ところで、この試合は岡田武史監督も観戦していたわけだけれど、明神智和は、「世界とのギリギリの勝負マッチ」では必ず必要になる『中盤アンカー的なタイプ』として代表に招集されることはあるのだろうか?? 岡田監督の判断に興味をひかれるネ。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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