トピックス
- 2009_ナビスコ・・「様々な変化」のなかでポジティブな発展ベクトルに乗りつつある二チームの対戦・・ということで、とても面白かった・・(マリノスvsレッズ、0-1)・・(2009年3月29日、日曜日)
- 「なんか、こう、盛り上がりに欠ける試合だったよな〜〜」。試合後に、コンファレンスルーム(プレス会見場)へ向かう記者の間からそんな声が聞こえてきました。
まあ、ゴールはポンテのPKだけだったし、後半残り10分くらいの時間帯には、最終ラインから金根煥を前戦へ上げるなど(この時点でマリノス最終ラインはツーバック)レッズを押し込み、何度もスペースを攻略してチャンスを作り出したマリノスだったけれど、結局は同点ゴールを奪えずに(=ゲームを盛り上げることができずに)逃げ切られてしまったという展開だったから、たしかに「ゴールをコアにした」勝負ドラマとしては盛り上がりに欠けたと言えるかもしれないね。でも、サッカー的には、なかなか濃いモノがありましたよ。
この時点で、マリノスにしても、レッズにしても、(メンバー的、チーム戦術的、監督の交代や、監督のクラブ内ポジショニングの強化などといった)様々な「変化」の真っ只なかにいるよね。そしてこの両チームには、サッカーの内容が継続的にアップしているという共通項もある。ただ、レッズが結果「も」モノにしているのに対し、マリノスは、まだ今シーズンの勝利がない。フムフム・・
そこで、マリノス木村浩吉監督に聞いてみた。
「たしかにサッカーの内容はよくなっている・・とはいっても、うまく結果がついてこない場合、ご存じのように、心理的な悪魔のサイクルに落ち込むことでチームが崩壊する方向へ傾いてしまうケースも多い・・いま木村監督は、チーム内の雰囲気は良好だとおっしゃったが(悪魔のワナにはまらないための)心理マネージメントとして、どのような方策を考えていますか?」
ニヤリと口元が緩んだ木村監督が、わたしの質問に対して、こんなニュアンスのことを語ってくれた。
「まず、競争がうまく機能していることが大事だと思う・・(言葉を換えれば)ウチのチームでは、頑張れば、誰もがチャンスを獲得できるという雰囲気が定着しているとも言える・・また、ベテラン選手も、チームの雰囲気を盛り上げてくれている・・わたし自身が選手と個別にハナシをすることは少ないが、考え方を共有しているコーチ陣が、選手に的確にアプローチしてくれている(だからチーム内コミュニケーションも問題ない)・・とにかく、誰が出ても同じようなチームパフォーマンスを発揮できるように・・など」
わたしは、そんな木村監督の発言を、『フェアな競争』と『トレーニングでのフェアな評価』という二つのキーワードに集約したいと思います。まあ、「フェアネス」が、もっとも大事な要素ということだね。そこはスポーツだからネ、政治的な思惑が絡んできたら、すぐにでもチームは崩壊の一途をたどってしまうよね。
とにかく、いまのマリノスのサッカーを観ていれば、チームの体質が非常に健全だということがすぐに分かる。そこに結果が伴ってくれば、確実に優勝戦線に名乗りを上げてくることでしょう。彼らもまた、わたしの大事な「学習機会」なのです。
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さて、レッズ。良かったですよ。サッカー内容がどんどん高揚しつづけている。局面での個人勝負という「エスプリプレー」もうまくミックスした組織パスサッカー。まあ、「仕掛けテンポの自在なコントロール」というテーマは、まだまだだけれどネ。
フォルカー・フィンケ監督は「コンビネーション」という表現にこだわっているけれど、それには、戦術的、心理的なものなど、本当に色々な要素が絡み合っている。とはいっても、もっとも大事なことは、やはり「共有イメージ」と「やり遂げる意志」ということに集約されるだろうね。
この試合でも、調子に乗れば、小気味よいテンポでボールが動きつづける。そんなプレーを観ながら、徐々に、タッチ&パスというコアプレーに、チーム全体が共有する「一定のリズム」が出てきていると感じていましたよ。それがあるからこそ、パス&ムーブやフリーランニングなど、人の動きとボールの動きが、よりうまく噛み合うようになる。
また、組織的な「人とボールの動き」に確固たるリズムが出てきているからこそ、原口元気やポンテ、はたまた高原直泰といったところが繰り出す勝負ドリブルも、うまく組織プレーの流れと噛み合うようになる。原口元気がドリブル勝負に入れば、周りの選手は、次のパスのタイミングを見計らうように「タメ」ながら、次の勝負スペースへのスタートを狙うのです。フムフム・・
この試合では、鈴木啓太と阿部勇樹が守備的ハーフコンビを組み、その前で、山田直輝とポンテ、そして原口元気が縦横無尽のポジションチェンジを繰り返していた。また、ワントップ気味の高原直泰も、前後に大きく動きつづけながら、攻守にわたって、しっかりと勝負所に絡みつづけていた。
要は、高原直泰、ポンテ、原口元気に山田直輝という、ポジションチェンジを繰り返す前戦の四人の動きに、両サイドバック(平川忠亮と山田暢久)と両守備的ハーフ(鈴木啓太と阿部勇樹)が、臨機応変に絡んでいく・・っちゅう構図かな。
もちろん、そんな「コンビネーション・サッカー」をうまく機能させるための絶対的なキーワードは「守備意識」。それも、決して受け身で消極的な「安全マインド」ではなく、あくまでも、チャンスとあれば誰でも「後ろ髪を引かれることなく」仕掛けていくための絶対的な基盤としての守備意識ですよ。
さて、ここからは、チームの発展プロセスの最も重要なコア要素となっている「若手」について触れましょう。もちろん、原口元気と山田直輝。もう完璧に「チームの積極マインドの牽引車」として機能しはじめているじゃありませんか。
山田直輝にいたっては、ベテランも含めたチームメイトが、積極的に彼を捜してボールを預けるなんていうシーンが続出するくらいの存在感を発揮するまでになっているからね(あの、ポンテでさえも彼にボールを預けていた!)。
また原口元気も、妙に「斜に構える」のではなく、とにかく走り回り(守備でもしっかりと貢献していた!)積極的にリスキープレー(勝負ドリブル)にもチャレンジしつづけていた。良い、良い。
それに対して、セルヒオ・エスクデロ。シーズン前のトレーニングマッチでは、かなり積極的にプレーしていたことで期待をしていたわけだけれど(彼には、素晴らしい天賦の才がある!)フタを開けてみたら、原口元気の後塵を拝しちゃって・・。また交替出場しても、オーバーラップする相手をマークしつづけるのではなく「行かせて」しまったことでチームが大ピンチに陥ってしまったり(相手が最終勝負プロセスに入ったら、基本的にはタテ方向のマークの受け渡しは御法度!)また逃げのパスを打ったり・・。
セルヒオには、特別な「イメージ&マインド・トレーニング」が必要なのかもしれないね。とにかく、能力的には「希有なレベル」にある選手なんだから。彼が、しっかりと実効の伴った(汗かきの)ディフェンスをやり、攻撃では(特にボールがないところで!)しっかりと動きつづければ、必ずや日本を代表するプレイヤーにまで成長するはずなんだけれど・・
フォルカー・フィンケ監督も、若手に対しては、チームにとって必要な優れた戦術眼を有するベテラン選手をサポートする意味も含め、とにかく、攻守わたって走ることが重要だと説いているそうな。そのファンダメンタルズ(基盤)さえ、しっかりしていれば、自然と伸びていくはずだとも・・。
走ること。そこには、言うに及ばず、物理的なエネルギーだけではなく、主体的に考えることとか、強い意志とか、結果としての強烈な自己主張とか、様々な(サッカーが与えてくれる自由を、本当の意味で心から謳歌するための!!)要素が内包されている。
言い換えれば、しっかりと走りつづけることには、サッカーの本質的なコノテーション(言外に含蓄される意味)が内包されているとも言える。だからこそコーチは、守備での汗かき仕事とか、攻撃でのフリーランニングといった目立たないチームプレーを、選手たちが何の抵抗もなく『率先して!』実行していけるようになるまで、七転八倒の努力を積み重ねなければならないのですよ。
イビツァ・オシムさんも含め、良いコーチは、彼らの本質的な仕事が、人間の弱さとの闘いであることを知っているものなのです。
とにかく、レッズの「正しい」発展プロセスに対する期待が、どんどんとふくらみつづけるじゃありませんか・・なんていう締めの文章を書いていたとき、ハッと思い出した。あっ、あのコトも書かなきゃ!!
そうなんですよ、ゲーム立ち上がり数分間における集中力の欠如と、ゲーム終了間際の「気抜けディフェンス」はいただけないという課題ポイントを書き忘れていたのです。
特に、終了間際のドタバタ。レッズがリードを奪っているし、相手はチカラがある(そして前へ全精力を傾注しはじめた)ホームのマリノスだから、押されることは仕方ない。それでも、押されていても、そこには、ある程度の「コントロール感」がなければいけません。要は、押されてはいるけれど、肝心な所は、しっかりと抑えている・・とかネ。
でもレッズは、攻め上がるマリノスに、何度も「ウラのスペース」を攻略されて大ピンチを迎えてしまったのですよ。彼らは、GKの山岸範宏に感謝しなければならない。それにしても、だらしがなかった。
要は、(人数が余っていることで!?)ボールがないところでのマークがいい加減なだけではなく、相手ボールホルダーに対するチェイス&チェックが甘すぎた。流れが悪くなったら、全員が、全力でのチェイス&チェックから守備に入っていかなければならないのですよ。そしてマンマークの間合いを厳しくする。
そして、セルヒオのところで書いたけれど、相手が最終勝負のコンビネーションに入ったら、タテへ抜け出していく相手には、その時点でマークしていた選手が、味方の最終ラインを追い越してでも「最後まで」マークしつづけることが大原則なのです。そこで、縦方向に「マークを受け渡す」なんて、世界トップの選手でも難しい。
相手ボールホルダーに対する「寄せ」が甘かったり、周りの選手がボールウォッチャーになったり、タテへ抜け出す相手のマークがいい加減で完全にフリーにしてしまったり。本当に、あの時間帯にシュートをブチ込まれなかったことはラッキーだった(木村マリノスに取ってはアンラッキーの極み!!)。
とにかく、そんな反省材料もあった「ポジ&ネガ内容テンコ盛り」のマリノス戦ではありました。
スゴ〜く長い(冗長な!?)コラムになってしまった。あ〜〜、疲れた。
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ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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