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2009_ナビスコ・・発展をつづけていくために必要な「チーム共通コンセプトの浸透」・・(レッズvsアルディージャ、6-2)・・(2009年6月13日、土曜日)

「まあ・・詰めかけてくれた観客の皆さんにとっては価値のある面白いゲームだったと思う・・とはいっても、サッカーの内容としては多くの課題が残ったけれどネ・・」

 フォルカー・フィンケは、いつも(ロジックにコントロールした!?)オープンマインドで正しいことを言うよね。サッカー監督は、社長に対して、選手に対して、そしてメディアに対して、それぞれに(それぞれの事情に対応して!?)言葉を選ばなければならない・・なんて言っていたけれど、我々に対するフォルカー・フィンケの言葉からは、少なくとも、メディアを「上手くはぐらかして利用しよう」なんていう高慢な態度は感じられないから・・いいね。

 わたしは、サッカー監督にとって最も大事な資質である「優れたパーソナリティー」の最後のところは、二つの「H」で決まると思っています。Humble(謙虚)であることと(≒高い学習能力)、Honest(誠実)であること。

 フォルカー・フィンケは、その両方のファクターについて、しっかりとした人間性に支えられた「哲学」を確立していると感じます。そんな監督の「パーソナリティーの質」が、チームの雰囲気を決めるというわけです。だからこそ、今のレッズには、心的なこともふくめた健全なダイナミズム(活力・迫力・力強さ)があふれている・・

 「サッカー内容自体には多くの課題が見え隠れしていた・・」

 フォルカー・フィンケが、そんなことを言っていたわけだけれど、それは・・守備における「有機的な連鎖プロセス」での(例えば協力プレスを仕掛ける状況での)小さなポジショニングミスとか判断ミス・・まだ見受けられる、気抜けのアリバイプレー(闘う意志の欠如!)・・また攻撃では、ボールがないところでの動きが足りなかったり効果的ではなかったことで、スペース攻略のチャンスを失ってしまったり・・などなど

 たしかに(全体的には)今のレッズでは、攻守にわたる基本的な発想(組織プレーでの有機的な連鎖イメージ)はどんどん高揚している。でも局面では、まだまだ、そんな「小さな改善ポイント」が山積みだということです・・(満足しちゃったら「そこ」で進歩が止まっちゃうわけだから、正しいマネージメント姿勢!)

 そんな「小さなこと」を改善していくプロセスでは、監督やコーチが「有効なヒント」を出すのは当たり前だけれど、もっとも「実効」の上がるのは、何といっても、チームのなかで「選手同士がオープンに指摘し合う」という雰囲気が醸成されること。

 「なんで、あのスペースへ抜け出してくれなかったんだよ・・オレは、後方からパスをもらう前から、そのスペースをイメージしていたのに・・」とか、「どうして、相手のパスレシーバーに対して、マークの間合いを詰めてくれなかったんだよ(だから次のパスをカットできなかった!)・・オレは、オマエにボールを奪い返させるために(そこへパスを出させるために!)必死にチェイスしたんだゼ・・」とか・・ネ。

 私が言いたかったことは、チームのなかに、オーブンに『文句』を言い合える雰囲気を醸成するのは、とても難しい作業だということです。

 才能のあるヤツらは、攻守両面での忠実プレーを「サボる」ことが多いし、年の差による「遠慮」もあるでしょ。また有名な選手やベテランは、自分がイメージする「テンポ」でサッカーをやりたがるものだしネ。

 だからこそ、フォルカー・フィンケという優れたリーダーの存在感が際立つというわけです。

 いまのレッズの雰囲気は、とてもオープン(高揚感にあふれている)と感じます。だからこそ、エジミウソンが攻守にわたる「汗かきプレー」にも見違えるように取り組みだしたし、高原直泰も復活の兆しを魅せはじめている。

 高原直泰だけれど、その「復活の兆し」を具体的なプレー内容に当てはめたら、こんな感じになりますかネ。

 ・・復調しつつある高原直泰・・攻守にわたる「全力を傾注する忠実組織プレー」への意志の高まりを感じる・・例えば、守備での(前戦からの)忠実なチェイス&チェック・・攻撃での、正確で創造的なボールコントロールから繰り出される、パス&ムーブを主体にした「シンプル組織プレー」などなど・・

 ・・そんな組織プレーイメージが、とても活性化しはじめていると感じる・・彼は(全速力で流れながらパスを受けるとか、そんな絶対的に有利なシーン以外)相手と対峙する止まった状態からドリブルで相手守備ブロックを切り崩していけるようなタイプじゃないよね・・とにかく、彼の個の能力は、組織プレーのなかでこそ活きるし、その積み重ねこそが「組織ストライカー」である高原直泰の真骨頂でもある・・

 ・・というわけで、いまの高原直泰のプレーからは、徐々に、全盛期のジュビロ当時の雰囲気が感じられるようになっていると思っているのですが・・

 ちょっと脱線。ということで、また「チームの雰囲気」というテーマに戻るけれど、いまのレッズには、若手の台頭という下克上の雰囲気もあるよねネ。それは、中堅・ベテランの危機感(緊張感)を健全にアップさせるでしょ。

 その絶対的な(心理・精神的な)基盤は、フォルカー・フィンケが、「自分が志向するサッカー」を、選手に対し、明晰に「提示」できている(理解させられている)ということです。

 だからこそ、選手たちのプレーに「迷い」がない。要は、選手たちが、どのようなプレーが「良いプレー」なのかということに対して「明確なイメージ」を持てているということです。

 だからこそ若手も、「どのようなプレーが評価されるのか・・」を、しっかりと理解し、吹っ切れた積極プレー(リスクチャレンジ)を心おきなく繰り出していける。ここが重要なポイントなのですよ。

 フォルカー・フィンケが志向するサッカーイメージが浸透してきているからこそ健全なライバル関係と健全な緊張感が成立する・・だからこそ、チーム全体のパフォーマンスを底上げさせるような「次の発展エネルギー」が自然とわき出てくる・・。

 いまのレッズが醸し(かもし)出している「上昇エネルギーの源泉メカニズム」は、そんなことなのかもしれないネ。

 そしてだからこそ(山田直輝、高橋峻希、西澤代志也、永田拓也、原口元気、濱田水輝といった)若手が、吹っ切れた「下克上プレー」を披露する。フムフム・・

 最後になったけれど、守備的ハーフコンビによる中盤ダイナミズムの演出・・というテーマにも簡単に触れておきましょうかネ。

 まあこの試合では、山田直輝も、攻守にわたる「中盤ダイナミズム源泉メカニズム」に組み込まれていたから、中盤の「ダイナミック・トライアングル」ということになるかな。

 そんな彼らが、守備(汗かきディフェンス)だけではなく、攻撃でも、リンクマンとして、ゲームメイカーとして、後方から前戦スペースへ飛び出していく三人目や四人目の「影武者」として、そして中盤での縦横無尽のポジションチェンジの演出家として、大いなる存在感を発揮しつづけた。

 それこそが、発展をつづけるレッズのコンビネーションサッカーを支えている!? まあ、そのバックポーンの一つとして大いなる機能性を発揮しているということだよね。皆さんもご覧になった通り、長谷部誠と遠藤保仁が抜けた日本代表では、明らかに、組織プレーによる仕掛けプロセスの勢いが落ちていたからね。あっと・・蛇足。

 さて、これからレッズナビ。今日はどんなハナシになるんだろうか・・

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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