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2009_ナビスコ準々決勝・・レッズで進みつづける(保守体質の日本サッカー界では!?)希有な発展プロセス・・(レッズvsエスパルス、2-1)・・(2009年7月15日、水曜日)

「わたしは(中堅や)ベテランに対しても、しっかりと(チーム作りの)基本方針を説明している・・わたしは彼らを(優れたパフォーマンスを大前提として!)十分にレスペクトしているし、それこそが全てのスタートラインなのだ・・」

 ゲーム後の記者会見で、フォルカー・フィンケが、言葉に力を込めていた。

 その彼の発言は、わたしの質問に対する答えの一部でもありました。その質問は、こんな感じでした・・

 「いま監督が話されたように、レッズはまだ多くの怪我人を抱えている・・ただ逆に(ケガの光明とでも言おうか!?)だからこそ若手にうまく機会を与えられていると思う・・しかし、その若手のプレー内容が、日本サッカーの歴史の中でも異彩を放ほど高質なのだから驚かされる・・6-7人のハイティーン選手たちが、出てくるたびに(ベテラン顔負けの!?)立派なプレーを披露してしまう・・それは(才能ある若手を発展させるための確かなウデをもつ)フォルカー・フィンケと、特別な才能に恵まれたレッズのハイティーン選手たちの(奇跡的な!?)巡り合わせだったのか?・・他のチームにも、多くの才能ある若手選手がいるはずだけれど、彼らは、そんな『巡り合わせ』に恵まれていないということなのだろうか?」

 最後のところは、ちょっと質問ニュアンスが曖昧になってしまった。ホントは、「日本サッカー界の体質はかなり保守的だから、若手の才能をうまく解き放つことが出来ていないと思うのだが??」なんていうことも聞いてみたかったのですよ(もちろん上手くはぐらかされるだろうけれどネ)。

 でもまあ『レッズの巡り合わせ』についてだけでも、何かのキーワードが引き出せるかもしれないと、「そこ」で質問を切り上げた次第。とはいっても、質問が長くなってしまったように感じていた筆者でした。

 オマエの質問はいつも長〜い、長すぎるゾ!・・ってか。スミマセンね・・とにかく、質問のニュアンスを絞り込みたいがために、周辺ロジックも持ち出すべき(条件の絞り込みが必要!)だと考えているモノでね・・あははっ。

 そんなわたしの質問に対して、例によって『直接的に答える』のではなく、様々な言い回し(背景ロジックのヒント)で対応するフォルカー・フィンケ。

 「昨シーズンのレッズを何試合かスタジアムで観戦した(もちろんビデオでもほとんど全ての試合を分析した!?)・・そして、ある確信にたどり着いた・・それは、若手に積極的にチャンスを与えることで(競争環境を整備することで!)チームを活性化し、発展させていかなければならないということだ・・」

 そして冒頭の発言につながるわけだけれど、その一連のハナシの骨子で、もっとも重要だったことは、若手に対しても、中堅・ベテランに対しても、フェアなカタチで、様々な要求を出し、それについて明快な説明をしているということでしょう。

 それって、当たり前!? いやいや、チーム作りのコンセプトを具体的に説明し、そこで要求されることをストレートに明示していく作業は、微妙なニュアンスで互いの思惑が交錯するから難しいモノなのですよ。

 だからこそ、フォルカー・フィンケの冒頭の発言で、(中堅や)ベテラン選手に対して十分にレスペクトしている・・という部分が重要な意味をもってくるのです。

 プロ同士の(個人事業主同士の)フェアな対峙・・。そこで、互いにレスペクトする(レスペクトし合える)ためには、当然、そのバックボーンが絶対的な拠り所になるわけです。

 監督の義務と権利(仕事)を突き詰めれば、チームの戦術的コンセプトを定め、そこに選手を当てはめる(先発メンバーを決める)というもの。それに対する選手の義務は、(基本的には・・)監督が決めたことを全力で遂行するということです(選手の権利はとても微妙だから、ここでは触れないでおきます・・)。

 でもそこは「人間」だからね、様々な「考え」や「情緒」などが絡み合うでしょ。監督と選手の間では、常に「微妙なニュアンスの対峙」が発生するものなのですよ(=監督の不満マネージメントのウデが問われる!?)。

 そこでの監督は、チームにとって大事なパフォーマンス(優れた仕事内容=大事な選手)に対して、フェアにレスペクトしなければなりません。相手を尊重する態度がなければ、決して(パフォーマンス・ベースの!!)信頼関係を醸成させられないからね。

 その絶対的なベースは、言わずと知れた『プロ意識(個人事業主のプライド!?)』と、それをベースにした相互信頼。それが確固たるレベルにあるからこそ、『日常の不満』が『不信へと』変容していくプロセスが効果的に抑制されるのです。そして、だからこそ監督は、選手たちの『プロの自覚』を極限まで高める努力を怠ってはならないというわけです。

 これまでのレッズのサッカーを観察すれば、そんな微妙な、プロ同士の(=個人事業主同士の)フェアな(そして緊張感にあふれた!?)対峙がうまく機能していることは論をまたないでしょう。エジミウソン、ポンテ(まだベストフォームじゃないけれど)、高原直泰、山田暢久、トゥーリオなどなど、中堅やベテランのプレー内容(姿勢)を観察すれば、そのことは一目瞭然!?

 彼らは、チーム内でのポジション(ヒエラルキー)を維持するために(若手による下克上を抑え込むために!?)自分たちの「価値」を主張するわけだけれど、その価値に対する「評価基準」を明快に与えているのがフォルカー・フィンケというわけです。

 そのメカニズムは、基本的には若手についても同じだけれど、でも彼らの場合は、さまざまな「心理的&戦術的バックアップ」が必要になる。

 レッズでは、フォルカー・フィンケのリードの下、「パフォーマンスこそが全て・・」という意味合いも含め、「年齢は関係ない・・」という雰囲気が深く浸透しているはずです。

 だからこそ若手も(フォルカー・フィンケによる勇気づけや巧みなモティベーションによって!?)常に吹っ切れたパフォーマンスを示すことができる(そして健全な競争環境を深化&進化させている!)というわけです。

 年齢や(過去の)名声や実績といった、さまざまな「フレームワーク(パラダイム=理論的枠組み)」からの解放・・そして、健康的なテンション(緊張感)にあふれた、あくまでも(監督のコンセプトを絶対的な評価基準にする!)パフォーマンスを基盤にしたフェアな競争の活性化・・

 レッズで進みつづけている「日本サッカー界にとって希有な発展プロセス」は、いまのところは、とてもうまくマネージされていると思いますよ。とにかく今のレッズは、私にとって、とても興味深い学習機会なのです。

 あっと・・試合。

 エスパルスだけれど、個人の能力レベルだけではなく、志向するサッカー(チーム戦術)も含め、前節のガンバ戦で魅せたパフォーマンスが如実に現しているように、本来はとてもチカラのあるチームだと思いますよ。

 でも前半は「倦怠サッカー」に終始した。長谷川健太監督は、「あのサッカーは、決して(引き分け狙いの!?)アウェーゲーム戦術によるものではなく、自然発生的なモノだった・・わたしにも、どうして、そんな消極サッカーになってしまったのか分からなかった・・」と言っていた。フムフム・・

 でも後半は(ハーフタイムでの戦術的な変更と長谷川健太監督のモティベーションが効いたことで!?)本来のチカラを存分に発揮し、何度もレッズゴールを脅かすなど、格段にチームパフォーマンスが高揚した。

 とはいっても、全体的にみれば、シュート数だけではなく、決定的チャンスの量と質でも、明らかにレッズに軍配が上がるから、結果については「まあ順当」だったと評価するのが妥当だろうね。

 でも次はエスパルスのホームゲームだからね、まさに、どちらに転ぶか分からないエキサイティングな勝負マッチになること請け合い。この試合ではレッズが勝利を収めたけれど、状況は、まさに五分と五分なのです。

 楽しみではあるのですが、わたしは、来週の月曜日からヨーロッパ出張なのですよ。二週間・・。だから、ナビスコ準々決勝の第二ゲームだけではなく、「J」も観られない(二節分!?)。まあ、ビデオに録って、帰国してからジックリと観ることにします。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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