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2009_ナビスコ決勝・・自分たち主体の仕掛けサッカーvsゲーム戦術サッカー・・(FCTvsFR, 2-0)・・(2009年11月3日、火曜日)

あ〜らら・・あの強いフロンターレが、FC東京にうっちゃられてしまった。

 まあ、自業自得というニュアンスも強かったけれど、 全般的に支配したゲーム内容からすれば、フロンターレにとってかなりショッキングな敗戦だったに違いない。彼らにとっての初戴冠になるはずだった(それも二つ目の!)タイトルを取りそこなってしまったことも含めてね。

 ということで、この試合の構図だけれど、それは、まさに明白でした。

 組織プレーと個人勝負プレーが高次元でバランスする「自分たちの」サッカーを貫き通すことでタイトル奪取を目指すフロンターレ。それに対し、カボレ、石川直宏、はたまた長友佑都といった主力を、移籍やケガで欠いたこともあって、様々なニュアンスを内包する「ゲーム戦術」をもって試合に臨まなければならなかったFC東京。

 FC東京の城福浩監督に、そのあたりの事情を聞いてみた。

 「城福さんは、ハーフタイムのミーティングで、あるキーワードを使いました・・それは、ガマン・・この試合でのガマンとは、どのようなモノだったのですか?」

 そんな私の質問に対し、城福浩監督が、間髪いれずに答えます。「それには二つありました・・」

 「一つ目のガマンは、(中盤で!?)ボールに食いつき過ぎないこと・・二つ目のガマンは、前へ仕掛けていきたい気持ちを抑え、守備ラインも活用しながらパスをしっかりとつなぐことで、自分たちがボールをキープする時間を長くするということでした・・」

 守備では、相手ボールの動きをチェイスし過ぎた場合、互いのポジショニングバランスという意味で「穴」が出来てしまうということです。そうではなく、ボールを奪いにいきたい気持ちを抑えて互いのポジショニングバランスを保ちながら、より可能性の高いボール奪取チャンス(シチュエーション)を意図的に作り出すことをイメージするのです。要は、最前線の積極的なチェイス&チェックも含め、スリーラインをいかにバランス良くコンパクトに保つのかというテーマのことだね。

 また、城福浩監督が二つ目に挙げた、攻撃でのガマンの意味合いは、ボールをできる限り安定したカタチでキープすることで(最前線へのタテパスなどで前へ仕掛けていき過ぎず!)次の守備で組織のバランスが崩れたり、不用意にボールを失ってしまをようなピンチ因子を、極力抑えようという意図のことですかネ。フロンターレのショートカウンターには、たしかにリーグ随一の爆発パワーが秘められているからね。だからこそ、ガマン。フムフム・・

 そしてそのガマンが、まさにツボにはまったかのように功を奏し、一発勝負マッチでの成果をたぐり寄せたというわけです。それは、それで見事だった。

 ただ、前述したように、特に前半のフロンターレは、FC東京が敷く、上手くバランスが取れたコンパクトな守備ブロックに対しても、例によって、牛若丸(=中村憲剛)が、縦横無尽に動き回ることで、しっかりとチャンスを作り出していた。

 牛若丸が魅せつづけた、ボールがないところで動きだけれど、それには取り決めなどありませんよ。基本はインプロビゼーション=即興=なのです。そして、動き回り、ボールに触りまくることでチームを動かしつづけるのです。それこそが、 攻撃に「変化をつける」ということの本質的な意味合い。彼は、まさに、本物のリンクマンとしての優れた機能性とリーダーシップを発揮しつづけたのです。

 もちろん、レナチーニョとは、サイドチェンジに関する「あうんの呼吸」はあったでしょ。でも、ステレオタイプ的な(型にはまった)計画プレーじゃないよ。関塚隆監督も言っていたように、それは、あくまでも「柔軟な発想」による自由なプレーの一環なのです。

 あっと・・、中盤の王様、牛若丸。やはりケンゴは素晴らしいね。縦横無尽に動き回り、ボールの動きを完璧にリードしつづけていた。それだけじゃなく、守備でも、抜群の効果レベルで守備的ハーフのタスクもこなしてしまうのですよ。だからこそ(基本的には守備的ハーフの)谷口博之も、後ろ髪を引かれることなく、相手ゴール前まで飛び出していける。そう・・相手守備にとって「見慣れない顔」としてネ。

 両チームを通じて最初の絶対的チャンス。それは、東京ディフェンスにとっての「見慣れない顔」が、前半19分に作り出した。そう、三列目から最前線へ飛び出していった谷口博之。

 彼に、ベストタイミングとコースの決定的タテパスが通ったのですよ。まったくフリーでタテパスをコントロールしてゴールラインまで持ち込み、東京ゴール前で待ち構えるジュニーニョにラストパスを送り込む谷口博之。誰もが、アッ・・フロンターレの先制ゴールだ!と、息を呑んだ瞬間です。

 でも、そのラストパスをダイレクトで叩いたジュニーニョのシュートは、あわれ、「宇宙開発」になってしまって(シュートをゴールのはるか上に蹴り上げてしまった!)。

 ここで言いたかったことは、後方から全力でオーバーラップしてくる相手の二列目、三列目プレイヤーをしっかりとマークするのは至難のワザであるということです。そして、そんな(例えばフロンターレでは谷口博之の!)危険な飛び出しフリーランニングを演出したのが、タテのポジションチェンジの演出家として素晴らしいリーダーシップを魅せつづけた牛若丸だったのです。

 そんな(見慣れない顔の)谷口博之が絡んだチャンスメイクは、その後も、何度もありました。でも、そのチャンスをゴールに結びつけられない。そうこうしているうちに、FC東京の若武者、米本拓司が放った中距離シュートで先制ゴールを奪われてしまうのです。それは、FC東京にとって、まさに起死回生とも呼べる一発でした。

 それにしても、そのミドルシュートは、ものすごい「ブレ球」だった。国立競技場の大型スクリーンに映し出されたそのシュートは、(ゴール裏から映されていたこともあって!)とても奇妙な変化をしていたのですよ。フロンターレGK川島永嗣にとっては、悔やまれる一発だったけれど、そんな「プレ球」を確実に抑えられるのは、世界のどこを探したっていないよネ。

 そして、その先制ゴールから(後半にかけて)、関塚隆監督自身がいみじくも言っていたように、フロンターレが我を忘れていくのです。そう、それまでのシンプルな組織プレーから(勝負ドリブルも活用して!)サイドゾーンを攻略していくというイメージではなく、「個のゴリ押し勝負」を前面に押し出し過ぎるという低次元のサッカーに落ち込んでいったのです。

 関塚隆監督が言います。「我々は、自分たちのサッカーを90分間通して出来るかどうかというテーマと取り組んでいる・・先制ゴールを奪われてからは(後半にかけて) シンプルな組織プレーを基盤にサイドから崩していくというイメージを維持できず、自分たちの弱点をさらけ出してしまった(ゴリ押しの個人勝負が目立つ仕掛けプロセス!)・・チカラがある選手たちだからこそ陥る心理的なワナということかもしれない・・」

 たしかに最後の時間帯のフロンターレは、ものすごいスピードとパワーで攻め込み、何度か、ヘディングや中距離シュートでFC東京ゴールを脅かしたけれど、結局は、スマートさが感じられないゴリ押しのパワープレーという、苦い印象だけが残った。フ〜〜・・

 さて、フロンターレ。わたしは、あれだけの個の才能連中に「組織プレーイメージ」もしっかりと植え付けるだけではなく、実際にスマートに機能させている関塚隆監督の(シーズン当初から、このレベルまでサッカー内容を高揚させたプロセスも含めて!)プロコーチとしてのウデを高く評価しています。

 たしかにアントラーズも調子を取り戻しつつあるから、これからのリーグ優勝争いはギリギリの闘いになるだろうけれど、わたしは、プロコーチしてもメキメキとウデを上げている関塚隆監督に、何とかリーグタイトルを取ってもらいたいと思っています。

 それは、関塚隆監督にとっても、とても意義深い「ブレイクスルー」になるはずです。勝者のメンタリティー・・。日本にもっとも必要とされているのは、「個人事業主」としての強烈なパーソナリティーにあふれた優れたプロコーチなのです。

あっと・・もちろんFC東京の城福浩監督も、とても優れたプロコーチだと高く評価していますよ。でも、この場では、特に関塚さんにフォーカスしたかった・・ということです。悪しからず・・

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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