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2009_天皇杯準々決勝・・再び、強いチーム同士が対峙したハイレベルなゲーム・・(AvsGA, 1-2)・・(2009年12月12日、土曜日)

 「チカラのある両チームが全力でぶつかりあったゲーム・・高いレベルで拮抗するのは自然な流れ・・最後は、ほんのちょっとしたところで勝負が決まった・・」

 オズワルド・オリヴェイラ監督が、そんなニュアンスのことを言っていた。まあ・・そういうことだけれど、記者会見後の英語ベースジャーナリストによる「囲み取材」で、こんなことを聞いてみた。

 「たしかに、全体的なゲームの流れとしては互角の展開だったとも言えるけれど、本物のチャンスの量と質という視点ではアントラーズに軍配が上がる・・バーやポストに当たるシュートを放ったり、その他にも2-3本の好機があった・・それに対してガンバは、ゴールにつながった二本とダイレクトシュートチャンスが一つくらいだった・・でも効率的にゴールを決めて勝利を収めた・・」

 「たしかに、チャンスの演出という視点ではウチが上回っていたとは思うけれど、そこはサッカーだからね・・まあ、よくあることさ・・」と、オズワルド・オリヴェイラ監督。

 ということで、ガンバとアントラーズのサッカー内容を比べた場合、微妙なニュアンスだけれど、アントラーズに軍配が上がるというテーマを、すこし掘り下げてみようと思ったわけです。

 まず最初の視点が、アントラーズの展開の広さ。要は、アントラーズの方が、大きなサイドチェンジやロング(タテ)パスをうまく駆使することで、ボールがプレーされているところとは離れたゾーンを(要は、相手守備ブロックが薄いフィールドを)より効果的に活用できていたということです。まあ、スペース活用の量と質でアントラーズが微妙に勝っていたと言えるかもしれないね。

 もちろん、ガンバ大阪のコンビネーションイメージも、部分的には、とても魅力的に(そして効果的に)機能していたとは思います。

 西野朗監督も、「このところのリーグ戦も含め、ようやく、本来のガンバのサッカーを取り戻しつつあると実感できた・・ホッとしている・・」と語っていた。もちろん、実力あるアントラーズとのせめぎ合いだから、相手ディフェンスを振り回してしまうような仕掛けコンビネーションを繰り出せていたということではなく、強いアントラーズに対しても、自信をもって、自分たちのサッカーにトライ出来ていたというニュアンスです。

 遠藤ヤットはもちろんのこと、明神智和、二川孝広、橋本英郎のカルテットの機能性は、たしかに本来の力を発揮しはじめていた。「そう・・彼らが、ガンバの強さの源泉だし、とても良かった・・でも私は、ちょっと分かり難いかもしれないが、前回のリーグ戦で、我々が5-1と大勝したときの方が、ガンバの出来は良かったという印象が残っているんだよ・・」。オズワルド・オリヴェイラ監督が、そんなことを言っていた。フムフム・・

 とはいっても、この試合では、最終勝負プロセスの効果レベルという視点で、明らかにアントラーズの方が上だった。要は、個人勝負の量と質。

 この試合、アントラーズではマルキーニョスが、ガンバでは、ペドロ・ジュニオールとチョ・ジェジンが欠場しました。個のチカラで局面を打開できる選手・・。両チームともに、上手い組織的コンビネーションをベースに、そのなかに、効果的に個人勝負を組み込んでいくことに(組織と個をうまくバランスさせるイメージに)長けているグループだからね・・。

 でも、そんな「高度なバランス」を引っ張る主役(ドリブラー!?)が欠けている。とはいっても、アントラーズには、興梠慎三、本山雅志、野沢拓也、そして小笠原満男といった個の勝負師がいる。それに対してガンバでは、ルーカスにしても遠藤保仁にしても、二川孝広にしても、やはり組織プレイヤーという色彩の方が濃い。

 よく言われることだけれど、同じようなチーム戦術(組織プレー内容)でチカラが同等のチーム同士ならば、最後は個人勝負の量と質によって勝負が決まる・・。この試合は、そんなセオリーが、ある程度の「明度をもって」グラウンド上に現出したと表現できるかもしれないね。

 でも、結局は、ワンチャンスをしっかりとモノにしてリードを奪ったガンバが、最後の時間帯も、粘り強く守り切って勝利を手中にした。その意味でも、典型的なカップゲームだった・・と言えるかもしれないですね。

 ところでオズワルド・オリヴェイラ監督。

 記者会見の後、会見場を後にした彼を追いかけ、声を掛けた。「ミスター・オリヴェイラ・・!!」

 振り向いた彼に対して、まず、こう言って握手した。「三連覇、本当におめでとうございました・・また、日本サッカーに対するポジティブな刺激に対しても心から感謝します・・良いクリスマス休暇を過ごして下さいネ・・」。素敵な笑顔を見せてくれるオズワルド・オリヴェイラ監督。

 そこで英語での囲みインタビューがはじまったのだけれど、ひとしきり話した後、いまのブラジル代表について聞いてみた。「ドゥンガは良い仕事をしていると思うが・・?」

 目を輝かせるオズワルド・オリヴェイラ監督。「そうそう・・彼らは本当に良いチームになってきていると思うよ・・」

 すかさず、こんなコトを聞いた。「前回ワールドカップよりも優れたチームになっているという印象があります・・ブラジルは才能の宝庫だけれど、一つのチームに天才が多すぎたら百害あって一利なし・・前回ワールドカップのブラジル代表チームは天才を抱えすぎていた(出場メンバーに天才を入れすぎた!?)とは思いませんか?」

 そんな質問に対し、オズワルド・オリヴェイラ監督は、そつなく、こんな表現をしていた。「まあ・・様々な視点はあるだろうが、大会前の準備プロセスで少し失敗したのかもしれないな・・普通だったら、ブラジルの才能たちは、個人プレーだけじゃなく、組織プレーも効果的に機能させられるんだけれど・・とにかく、いまのブラジル代表は、様々な意味で、とても上手くバランスしていると思う・・大いに期待しているよ・・」

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 最後になりましたが、年明け元旦に国立競技場で行われる天皇杯の決勝。例によって、ラジオ文化放送で解説します。

 メイン・キャスターは、文化放送のスーパーアナウンサー、長谷川太さん。今年で、コンビを組んで(マイクを奪い合って!?)何年目になりますかネ。まだオファーがあるということは、放送の内容が、そんなに悪いモノじゃないということなんですかネ。あははっ・・

 ポジティブシンキングの湯浅でした。それでは、また・・

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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