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- 2009_天皇杯準決勝・・とても魅力的な決勝カードになった・・それにしても「J1」返り咲きのベガルタは良いチームだ・・(2009年12月29日、火曜日)
- 「ベガルタは、とても良いチーム・・今シーズンがはじまる前のトレーニングマッチでは、圧倒的にゲームを支配された・・(攻守の)切り替えが素早いから、カウンターがとても鋭い・・今日のゲームは(プレシーズンキャンプでの対戦から数えれば)一年後の対戦ということになったわけだが、失礼ながら、とても成長していると体感させられた・・個々のプレーもしっかりとしているし(チーム戦術的な)一体感のあるチームだと思う・・」
試合後の記者会見でベガルタの印象を聞かれたガンバの西野朗監督が、とてもフェアに、そんなコメントをしていた。然り・・。来シーズンの(J1での)ベガルタは、大きな波風を立ててくれるに違いありません。楽しみですよ、ホントに・・
西野朗ガンバ監督が指摘していたように、ベガルタの攻守の切り替えは(特に攻撃から守備への切り替え!)は、異様に速い。そして、切り替えた全員が、まさに全精力という勢いで戻りながら効果的なディフェンスを展開するのです。ものすごくダイナミックなチェイス&チェック・・素早く効果的な協力プレス・・忠実でハードなマーキング・・予測ベースのクレバーなポジショニングからのインターセプトや(アタックからの)ボール奪取・・などなど。
今シーズンの「J2」を制してトップリーグへ昇格してきたベガルタ仙台。51試合で39失点しかしていない。手倉森誠監督が、「悔しい・・我々にとっては、いかに(不用意な)失点しないゲームを展開するかがテーマだった・・」と言っていた。フムフム・・
彼らのゲームを観ていて(準々決勝でフロンターレを凌駕したゲームも含め)、そんな手倉森誠監督のコメントに、ナルホドと納得していた。もちろん守備だけではなく、強烈な意志に支えられた忠実ディフェンスを基盤にしたカウンターも、非常に鋭い。もちろん、選手一人ひとりが、強烈な意志を背景に、「絶対に最後まで仕事をやり遂げるぞっ!」という姿勢でギリギリの積極プレーを展開しているからこその、日本刀の切れ味なのです。
とはいっても、ゲームの結果自体は、「順当」なモノでもありました。内容的に、明らかにガンバが優位に立っていたのです。たしかにガンバが挙げた二つのゴールは、一つはベガルタGKのパンチミスだったし、もう一つの決勝ゴールは、ガンバのタテパスが相手に当たり、ピタリとルーカスの足許へ転がってしまうといった不運が重なったものだった。でも、実質的なチャンスメイクの量と質を見ていれば、明らかにガンバに軍配が上がるのですよ。
もちろん「それ」は、ガンバが、まさに必死にサッカーをやったから他なりません。だからこそ「地力の差」を明確にグラウンド上に現出させられた。
いつも書いているように、地力で勝っているとはいっても、その優位性は、攻守にわたる(特にディフェンス!)必死の全力プレーを完遂することでのみ、誰もが体感できるほどに明確に表現できるものなのですよ。特に、上位から下位まで、その実力に大差のないJリーグの場合はネ。
ところで、この試合において(私にとって)もっとも目立っていた「意志のプレイヤー」。それは、言わずと知れた遠藤ヤット(保仁)でした。中盤の底から最前線ゾーンまで、広く、スピーディーでダイナミックにカバーしながら、素晴らしいボール奪取プレー(守備での効果的な組織プレーとアタックプレー等々)を展開しつづける。だからこそ彼にボールが集まるし、彼がボールをもった状況で、周りの味方もよく動く。
遠藤ヤットがボールをもったら、周りの味方がよく動く・・という現象。その背景には、もちろん、彼のボールを扱う才能や視野の広さ、そして優れたパス能力に対する信頼もあるけれど、私は、それと同等以上に、守備での素晴らしい実効レベルの汗かきプレーに対するチームメイトの敬意があると思っている。だからこそ、遠藤ヤットが、ガンバのチーム体質に、とても素晴らしいポジティブな影響力を行使している・・!? フムフム・・
遠藤ヤットについては、日本代表マッチも含め、あまり多くは語っていないように感じます。その、攻守にわたるハイパフォーマンスは、私にとって「当たり前という心理環境」になってしまっているからなんだろうね。でも、それじゃアンフェアだしね・・
ということで、この試合での遠藤ヤット。そこでの彼は、素晴らしい闘う姿勢(強烈な意志のチカラ)だけではなく、組織コンビネーションのコアとしても、個人プレーの勝負師としても、とても素敵なクリエイティブプレーを魅せつづけてくれた。もちろん、必要ないところでは、しっかりとクレバーに休むというクリエイティブなプレー姿勢も含めてネ。わたしは、そんな彼のプレーを観られただけで、とてもハッピーだった。
あっと・・ガンバが魅せた、チームとしての闘う姿勢というテーマだった。
まあ、その象徴的なプレイヤーが(チームメイトを引っ張る明確なリーダーとしても存在感を発揮しつづける!)遠藤ヤットだったということだけれど、とにかくこの試合でのガンバは、相手のベガルタが強豪チームだという意識を明確にもってゲームに臨んでいた。それが、立ち上がりの、ベガルタを凌駕して先制ゴールを奪ってしまうという、強烈に力強いダイナミックサッカーとなってグラウンド上に表現された。西野朗監督の、心理マネージャーとしての優れたウデに拍手だね。
たしかに何度か、ベガルタが全体的なゲームペースを握るという展開もあったわけだけれど、最終勝負プロセスの「内容」では、明らかにガンバに一日以上の長があった。要は、ガンバの攻撃の方が、より危険なニオイを放っていたということです。
攻守にわたる組織プレーコンテンツが同等レベルの場合、やはり最後は「個のチカラの差」が勝敗を分けるということでしょう。
この試合でも、全体的な運動の量と質も含む、攻守にわたる組織プレーではかなり拮抗していた両チームだったからこそ、最後は、局面での個の勝負の内容によってゲーム全体の流れが大きく左右されていった。そして、実質的なゲームのイニシアチブはガンバが握ることになっていった。
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さて、これで、天皇杯の決勝は、ガンバ対グランパスという興味深い対戦カードになった。
「我々は、グランパスとの決勝を望んでいた・・リーグでは二つとも負けてしまった・・ただ、負けたとはいっても、全体的なサッカー内容では我々の方が勝っていたという思いはある・・決勝では、アグレッシブなアクションサッカーで借りを返したい・・」
西野朗ガンバ監督が目を輝かせていた。
ところで、もう一つの準決勝、グランパス対エスパルス。ビデオ観戦だったから、一つだけ目立っていたテーマを抽出するに止めます。それは、両チームで異なる「最終勝負のタイプ」。
グランパスは、より意識してサイドから仕掛け、そこからクロスを送り込むことで最終勝負を挑んでいく。そう、ケネディーのヘディング能力と効果的なポストプレーをイメージして・・。
対するエスパルスは、グラウンド全体を駆使しながらも、岡崎慎司の、並外れた「抜け出し嗅覚」を駆使することを第一義的な仕掛けイメージにして攻撃を組み立てていく。実際エスパルスは、その岡崎へのタテ(ロング)パス一本で先制ゴールを叩き込んだし(岡崎慎司のゴール!)それ以外でも、岡崎慎司の粘り腰プレーをコアにした危険な仕掛けを魅せていた。
両チームが作り出したシュートチャンスも、まさに、彼らの攻撃(仕掛け)の特長を最大限に活かしたモノだった。
グランパスは、田中隼磨とアレックスの両サイドバックだけではなく、玉田圭司や小川佳純といったサイドハーフ陣も、ケネディーのヘッドをイメージし、効果的なクロスを送り込みつづけていた。特に、アレックスの正確なフィーディング(アーリークロスや、タッチライン際の深いゾーンから送り込む戻り気味のクロスボール)は、エスパルス守備陣にとって危険きわまりない効果を発揮しつづけていた。久しぶりにアレックスは、彼がチームにとって危険な武器であることを(ピクシーに)再認識させていた!?
またエスパルスも、岡崎慎司の決定的スペースへの飛び出し(もちろんタイミングの良い決定的タテパスとのコラボレーション!)だけではなく、粘り強い最前線からのチェイス&チェックと、そのアクションをコアにした組織的なボール奪取が成功することをイメージした押し上げ(まあ、高い位置でのボール奪取をイメージしたショートカウンター)を効果的に繰り出していた。
ただ、チャンスを作り出した両チームだったけれど、結局は決め切れずに「PK」に突入し、最後はグランパスが逃げ切った。こちらも、とてもエキサイティングな仕掛け合いマッチではありました。
ということで、期待がふくらみつづけるガンバ対グランパスの決勝戦。いまから楽しみで仕方ありません。
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最後になりましたが、年明け元旦に国立競技場で行われる天皇杯の決勝。例によって、ラジオ文化放送で解説します。
メイン・キャスターは、文化放送のスーパーアナウンサー、長谷川太さん。今年で、コンビを組んで(マイクを奪い合って!?)何年目になりますかネ。まだオファーがあるということは、放送の内容が、そんなに悪いモノじゃないということなんですかネ。あははっ・・
ポジティブシンキングの湯浅でした。それでは、また・・
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ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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