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2009_XEROX・・アントラーズの「一発勝負ゲーム戦術」がうまく機能した・・(アントラーズvsガンバ、3-0)・・(2009年2月28日、土曜日)

面白いテーマが山積みだったから、書き出したら止まらなくなるだろうな〜〜・・なんてことを考えながらキーボードに向かいました。でも今日は所用が重なっているから、何としても短時間でポイントをまとめなければなりません。フ〜〜ッ・・

 ということでこの試合のポイントだけれど、それは、何といっても、アントラーズ監督オズワルド・オリヴェイラの「指揮官としての優れたウデ」っちゅうことになるのではないだろうか。要は、オリヴェイラ監督が、一発勝負をイメージした「着実なゲーム戦術」をチームに徹底させたというポイントです。

 私は、そのゲーム戦術が、「ガンバの攻撃リズムを調子に乗せない・・」というポイントに集約されていたと考えています。それこそが、この一発勝負へ臨むアントラーズ選手が共有していた「イメージ・キーワード」だった!? ガンバの(人とボールがよく動く)組織コンビネーションがうまく「連鎖」しはじめたら(昨年のACLやクラブワールドカップで誇示されたように!)もう誰にも止められなくなるからね。

 そのガンバだけれど、例によって、人数を掛けた(人とボールがよく動く)組織プレーをイメージして立ち上がった(ゲームがはじまった最初の数分間に魅せた攻勢は迫力満点!)。そんなガンバの攻勢を、忠実に人をケアーする「マン・オリエンテッド気味」の守備によって抑え込んでしまうアントラーズ。そして、組織コンビネーションをスタートするために最も大事になってくる「ボールがないところの人の動き」や「パス&ムーブ」等も含め、ガンバのペースアップ要素が、ことごとく抑制されてしまうのですよ。

 そんなガンバは、ボールがないところでいくら走ってもマークを振り切れない(フリーでパスを受けられない!)など、イメージ通りにうまくボールを動かすことが出来ずにフラストレーションを溜め、そのことで、徐々にボールがないところでの動きが「停滞気味」になっていったと感じました。それは「擬似の心理的な悪魔のサイクル」とも表現できそうな現象かな・・!?

 ハナシがちょっと逸れるけれど、ガンバの場合、「動き」が出はじめたときの素晴らしく高質なダイナミックコンビネーションサッカーと、動き出すまでの沈滞サッカーの「ギャップ」が大きすぎるという印象があります。

 そのポイントについては、これまで何度も指摘したとおりですが、あれだけの個のポテンシャルを有したチームなのだから、プレーのペースを、自分たちが主体になって、自由自在にコントロールできてもおかしくないと思うのですよ。でも彼らの場合、どちらかといったら「相手のエネルギーダウン」というキッカケがなければ効果的にペースをアップできないという印象の方が強い。もちろん「主体的」にペースアップ出来ていたゲームもあるけれど・・

 私は、それはひとえに「中盤のリーダーシップ」が十分ではないからだと思うわけです。

 ガンバは、遠藤ヤット、二川孝広、橋本英郎、明神智和といった「リーダーたり得る能力を秘めたミッドフィールダー」を豊富に抱えているけれど、にもかかわらず、「実質的なリーダーシップのパワー不足」は否めないと感じるのですよ。

 まあヤットにしても橋本や二川にしても、また彼らに遠慮する(!?)縁の下の力持ちである明神にしても、ゲームの流れが停滞しペースアップがままならない状況で、チームメイトに対して(罵声での!?)叱咤も含めた「強烈な刺激を与えられる」タイプじゃないようだからネ。フムフム・・

 シュート数ではアントラーズの二倍も放っていたガンバ・・でも、アントラーズ守備ブロックの穴(決定的スペース)を突くような決定的なカタチを作り出せたのはほんの数回など、実質的なチャンスの量と質という視点では、アントラーズの後塵を拝していた・・。それが私の見立てでした。

 それにしてもアントラーズのツートップは素晴らしかった。興梠慎三とマルキーニョス。

 もちろんオリヴェイラ監督の「イメージ作り」が効果を発揮しているということだけれど、後方の選手がボールを持ったら、すぐさま、二人のうち一人は「決定的スペースへのロング(ラスト)パス」をイメージし、後方の味方がボールを持って顔を上げた次の瞬間には、ガンバ守備の背後に広がる「決定的スペース」へ向けて動き出すのです(逆に、もう一人は戻り気味に動いてタテパスを要求する!)。そして、決定的スペースへ向けて正確なロングパスが飛んだり、戻ってきたツートップの一角への正確な足許パス(仕掛けグラウンダーパス)が送り込まれたりする。フムフム・・

 そんなシンプルな仕掛けが、興梠慎三とマルキーニョスの個のチカラを基盤に、ことごとく効果的な最終勝負プロセスにつながっていきます。

 相手と競り合ってボールをコントロールし、このまま持ち込んでラストパスやシュートまで行ってしまったり、それがダメならば、しっかりとキープすることで、両サイド(内田篤人と新井場徹)ダニーロ、野沢拓也、本山雅志(また青木剛や増田誓志)といった後方からのサポートを(実効あるカタチで)待つ興梠とマルキーニョス・・。いや、ホントに素晴らしかった。

 さて「J」が開幕します。その開幕戦だけれど、もちろん私は、アントラーズ対レッズを観戦するつもり。いまから楽しみで仕方ありません(開幕前のレッズについては「このレポート」も参照してください)。

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 ところで、拙著「ボールのないところで勝負は決まる」の最新改訂版が出ました。まあ、ロングセラー。それについては「こちら」を参照してください。

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 ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。

 基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。

 いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。

 蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。

 




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