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2010_全日本大学サッカー選手権大会_決勝・・とても素敵なテーマを見つけた・・福岡大学監督の乾真寛さんに乾杯!・・(2010年1月6日、水曜日)

「セットプレーについては、試合前に、短い時間(簡単に)トレーニングするだけで済ましてしまうというチームが多いですよね・・ただウチの場合は違うんですよ・・とにかく毎日、クールダウンの時間などを使ってトレーニングをつづけているんです・・」

 福岡大学の乾真寛監督(ポータルサイトで検索して下さい・・たとえば「こんな」感じ・・とても立派なキャリアのサッカーコーチ兼教育者です)が、オフィシャルな記者会見の後、私のところへ寄ってきて、色々なハナシをしてくれました。彼とは面識はなかったはずだから、とても驚いた。でも、悪びれる様子など微塵も見せずに、私や後藤健生さんの質問へのサッカー講話に花を咲かせちゃうのですよ。最後は10人ほどのジャーナリスト仲間が取り囲むようにハナシを聞いていたから、まあ「囲み取材」っちゅう雰囲気になったけれどネ。

 そんな積極的な対人姿勢ひとつにしても、深い自信に裏打ちされたポジティブなパーソナリティーを感じるじゃありませんか。乾真寛監督。サッカーコーチとしての彼に対して、個人的な興味も湧き出してきたものです。やはり、優れたパーソナリティーに接したら、気持ちも前向きになるよな・・フムフム・・

 ところで冒頭の、乾真寛監督の発言。それは、私のこんな(例によって、とても長〜い)質問に対するコメントの一部でした。

 「負けてしまったけれど、内容的にはとても素晴らしいモノをみせてもらった・・前半などは、明治大学がボールを支配しているように見えて、実は、ボールを回させられていたというのが実体だった・・ボールは動いているけれど、明治は、まったくといっていいほどスペースを突いていけなかった・・だから実質的には、ポゼッション率の低い福岡大学のペースだったと言っても過言じゃなかった・・事実、チャンスの量と質では、福岡大学が圧倒していた・・まあ、一点を追いかけていた後半の20分間に魅せた強力な波状攻撃こそが本来の福岡のサッカーなのだろうが・・」

 そこで息継ぎをしてから質問をつづけた。あははっ・・

 「そんな福岡大学のサッカーで、特に目立っていたのは、何といっても、とても危険なカウンターと、あまり目にしたことがないほどの確率で決定機を作り出してしまうセットプレーだった・・これは、もう、トレーニングの賜物と言うしかない(監督のウデとしか言いようがない!)・・そのあたりの事情をお話しいただけないだろうか・・」

 読者の皆さんは、その質問のニュアンスから、(わたしが分析した)実質的なゲーム内容についてはご理解いただけたものと思います。そう、実質的には、ゲームに負けた福岡大学の方が、優れたサッカーを展開していたと思うのですよ。

 いや・・とはいっても、たしかに明治大学も、とても良いサッカーをやっていたよ。弱体と言われていたディフェンスも、ある程度は安定していたし、二点目を入れてからは(リードしてからは)やっと彼ら本来の、とてもダイナミックな組織サッカーが観られるようにもなった。その組織パスプレーは、要所での、効果的で危険な個人勝負プレーを導き出してもいた。

 でも、やはり総体的には、今シーズンの九州リーグと総理大臣杯チャンピオンの(すでに二冠を達成した)福岡大学に、明らかに一日以上の長があった。まあ、結果については神様の領域だから仕方ないにしても、エースの日本代表、永井謙佑を欠いているにも関わらずのハイレベルサッカーは、とてもインプッシブだった。

 「永井がいなくても、これだけのサッカーが出来ることを証明できて満足です・・なんて、勝ったら言おうと思っていたんですがネ・・やっぱり、負けたのは、とても悔しいですよね・・」などと周囲を笑わせる乾真寛監督なのです。

 ということで、冒頭の乾真寛監督のコメント。それは、セットプレーでのチャンスメイクの量と質に関するものでした。

 やはり彼らは、大変な努力を積み重ねていたんですよ。セットプレーの際に、ボールを受ける選手が、それは、それは大変な勢いで動きつづけている。そして動きのなかでボールに触ろうとする。それは、相手に競り勝つための絶対的な前提条件。そう、ラストパスを呼び込む動き。まあ、そこまで高度ではないにしても、どこにボールがきても、少なくとも一人は『相手よりも先にボールに触れる状態』を常に作り出しつづけていたのは確かな事実だった。

 要は、フリーキックにしてもコーナーキックにしても、はたまたロングスローインにしても、ボールが飛んでいくスポットは(中村俊輔や遠藤ヤットほどには!?)安定しないにしても、そのズレたスポットにでも、常に、誰かが(ある程度フリーで!)動いて入り込み、相手よりも先にボールに触るということです。

 そんなだから、高い頻度でダイレクトシュートを打てるわけではないにしても、こぼれ球は、かなり高い確率で支配しちゃう。それも相手ゴール前のゾーンだからね。セットプレーからのチャンスメイクが、とても異質な感じに「高い」ことのバックボーンは、そんなトレーニングを積み重ねる彼らの日常の努力にあったというわけです。

 日常のちょっとした努力の積み重ね・・それこそが成功への唯一の近道・・。

 このことは、よく話題になるシュート決定力にも言える。もう何度も書いたことがあるけれど、私の(心の)師でもあるドイツのスーパーコーチ、故ヘネス・ヴァイスヴァイラーが、ケルン監督時代に、スターストライカー(例えばディーター・ミュラー)を徹底的に鍛えていたことを思い出しますよ。それもレギュラーのトレーニングの前にね。その徹底ぶりは、とても筆舌に尽くせない。あんな厳しい試練を積み重ねれば、確実に、シュートをゴールに結びつけられる確率はアップするでしょう。決定力をうまく高められない選手の場合、要は、努力の量と質が足りないという単純な理由なんだヨ・・いつも書いているようにネ(もちろん積み重ねトレーニングの際の緊張感も重要・・だから、鬼オヤジのヘネス・ヴァイスヴァイラーの存在が大きかった!!)。

 とにかく、継続こそチカラなり・・ということが言いたかった。福岡大学のセットプレーでは、とにかく、ボールを受ける方のアクションの量と質が、異様に素晴らしい。それが、日々のクリエイティブなトレーニングの賜物と聞いた。ちょっと感動ものだったね。

 さて、ということで、次は、カウンターというテーマ。実は、乾真寛監督は、最初にこのテーマからコメントに入ったのでした・・あははっ・・。

 「トランジション・・って言うじゃないですか・・そう、攻守の切り替え・・ウチでは、相手からボールを奪い返してから三秒間で相手ゴールに迫るというイメージを実践させている・・それがうまく機能しはじめていると感じる・・毎日のハードトレーニングが実を結びつつあるということだろう・・」

 いや・・ホントに素晴らしい。たしかに福岡大学のカウンターの勢いは、次元を超えているよね。でも彼らのテーマは、あくまでも「トランジション」だからね。そう、攻守の切り替え。カウンター攻撃だけじゃない。

 この試合でも、残り数分というところで、こんなシーンがあった。押しっぱなしの福岡大学が、変なカタチでボールを失ってしまった(セットプレーだったかな〜〜!?)・・次の瞬間、待ち構えていたように明治大学が「蜂の一刺しカウンター」を仕掛けていく・・素晴らしい全力ダッシュ・・ボールがないところでの素晴らしい全力サポート・・でも、そんなスピーディーなカウンターを、これまた120パーセントの全力ダッシュで鬼神の追いかけを魅せた選手が二人もいた。そう、福岡大学の選手。とても感動した。そして、乾真寛監督に対して、心から拍手をおくっていた。

 次は高校選手権の決勝ですかネ。

 




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