The Core Column
- The Core Column(51)_スペースの攻略プロセス・・二つの「タイプ」・・(2016年2月11日、木曜日)
- ■もっと簡単に、しつこく、いろいろな戦術エッセンスを議論していこう・・
またちょっと、ご無沙汰してしまった。
ところで・・
当HPでは、本編コラムや「The Core Column」において、ゲームレポートやサッカーの概論をディスカションしていきながら、瞬間的なグラウンド上の現象(=攻守にわたる戦術エッセンス≒5秒間のドラマ!?)についても語ってきたつもりだ。
心理・精神的なモノも含めて、攻守にわたる局所的な(戦術)ファクターが、とても複雑に絡み合っているサッカーだからね。
例えばシュート決定力、例えば二軸動作、例えば味方との連動イメージに基づいたインターセプト等など。
サッカーでも、そんな、攻守にわたる局所的な戦術(物理的・心理精神的!?)ファクターが、複雑に絡み合いながらゲームが進んでいくというわけだ。
またそこには、クラブやチームのマネージメント、次の対戦相手や自然条件、(意識や意志も含む!?)両チーム合わせて「22個」のパーソナリティーや才能コンテンツ、そしてもちろん生活文化などなど、ものすごく多岐にわたるバックボーンも満載だ。
あっと、またまた、ハナシが横道に逸れそうになっている。でも、まあ、ちょっとだけ。
例えば、「勝負のラストパス」というシチュエーション・・
そこでは、パサーと、(3人目、4人目のフリーランナーも含む!?)パスレシーバーだけじゃなく、それを受け止める相手の連動ディフェンスなんていう局面ファクターが複雑に絡み合っている。
だからこそ我々は、錯綜する攻守ファクターについても、俯瞰(ふかん)的に、そして瞬間的に分析できるだけの「眼」もトレーニングしなきゃいけないっちゅうわけだ。
ということで、これからは、細部の戦術ファクターにも、より頻繁に入り込んでいくことにしよう・・と、キーボードに向かった次第なのであ〜る。
・・ってなコトを宣言したまでは良かったけれど・・
どうも、スムーズに筆が進まない。
シンプルな表現によって、「自由」であるからこそ複雑怪奇なグラウンド上の現象を描き出すのに四苦八苦しているんだ。
表現力、構成力の(文才の!?)限界っちゅうことか。
フンッ・・
■まあ、いいサ・・ということで、今回のテーマはスペースの攻略・・
このテーマ自体、アプローチの仕方によっては、かなり外郭(概論)的なディスカッションになってしまうことは分かっている。
だからこそ、前回の「ボランチ・コラム」同様に、視点を絞り込むことで、より具体的なディスカッションにもっていければと思っているわけだ。
あっと・・
今回の「スペース攻略」というテーマだけれど、攻撃にスポットライトを当てる。そう、最終勝負プロセスでの、相手守備ラインの「ウラ」への攻め込みだ。
以前、「スペースへ・・スペースへ・・」というコラムを発表したことがあった。
そこでは、「ラストパスを呼び込む動き」というのがテーマだったけれど、今回は、スペースを攻略していくプロセスの「外郭的なメカニズム」についてディスカッションしようと思う。
でも、その具体的ディスカッションに入っていく前に、まず攻撃における大原則コンセプトを再確認したい。それは・・
・・攻撃の目的は、シュートを打つこと・・ゴールは、単なる結果にしか過ぎない・・
だからこそ、シュート決定力という戦術的な(そして心理・精神的な!?)ファクターは、まったく別次元のテーマとして別途にディスカッションしなきゃいけないと思うのだ。
その、ある意味、捉えようのない「シュート決定力」という、とても分かりにくいテーマについては、以前、「ヘネス・ヴァイスヴァイラーの教え・・」という発想ベースで構成した(上でもリンクを張った)「このコラム」も参照していただきたい。
あっと、スペースの攻略・・
それは、シュートチャンスを創りだすための当面の目標イメージ・・なんていうふうにも表現できるだろうか。
言わずもがなだけれど、ここで繰り返す「スペース攻略」というグラウンド上の現象は、ある程度フリーでボールを持つことと同義だよ。
もちろん、そのスペース攻略ポイントが、ペナルティーエリア内やその角エリアなど、ゴールに近いゾーンだったら、直接的にそれが最終勝負の「起点」ということになるわけだ。
■テーマは、そんな「最終勝負の起点」を創りだすプロセス・・
「それ」には、大きく分けて、二つのタイプがある。
一つは、ダイレクトパスコンビネーション等による、組織的なチャレンジ。
ボールを止めない「ダイレクト」によるパスやシュートという表現については、以前に発表した「このコラム」を参照して欲しい。
ということで、組織的なスペース攻略プロセスだけれど・・
忘れてならないコトは、守備のイメージング能力「も」大幅にアップしている現代サッカーでは、ワンツーなどのダイレクトパス交換だけじゃ、まったく十分ではないという現実だ。
だからこそ、コンビネーションのなかに、3人目、4人目のフリーランニングも効果的にミックスしていくような「ハイレベルの組織力」が必須になるのだ。
パスの受け手(フィニッシャー)については、前述した「スペースへ、スペースへ」コラムも参照して欲しいけれど、そこでは、パサーや中継プレイヤーなども含む複数プレイヤーたちのイメージを、いかに有機的に「シンクロ」させるのか・・というテーマと取り組むことになる。
そして、もう一つ。スペースを攻略していくのに効果を発揮するツールが、ドリブル突破チャレンジである。
リオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウド・・等など。まあ、そんな天才連中のスーパー突破ドリブルについては、ここで書くまでもない。
■でも実際は・・
そうなんだよ。
グラウンド上で起きている、「最終勝負の起点をつくりだすプロセス」を、明確に二つのタイプになんて分けられるはずがない。
実際には、その二つが、とても複雑に絡み合っているということだ。
例えば・・
・・リオネル・メッシが、右サイドから中央ゾーンへ向けてドリブルをスタートした・・
・・もちろんチームメイトは、メッシのドリブル突破の邪魔をしないように、彼がイメージするスペースを「空けるように」動く・・
・・でも彼らは、メッシに勝負ドリブルのスペースを空けるだけじゃなく、彼のドリブルが詰まったときのために、決定的スペースへのフリーランニングもイメージしている・・
・・そこでは、瞬間的に、バルセロナが世界に誇る「アイコンタクトスキル」が、抜群の機能性を発揮する・・
・・そしてメッシは、シュートへつながる勝負ドリブルとラストパスという「二つのオプション」を(才能に恵まれているからこそ!!)活用できるというわけだ・・
でもリオネル・メッシは、何といったって世紀の「例外」だからね。普通のプロチームが、彼のようなスーパードリブラーを擁しているわけじゃない。
だからこそ、ダイレクトパスコンビネーション(組織パス)と勝負ドリブルの効果的な組み合わせによる「スペース攻略」チャレンジが現実的というわけだ。
まあ、多くのケースで、最終勝負プロセスの「基調」が、組織的な(ダイレクト)パスコンビネーションにあることは言うまでもないと思う。
とはいっても、そのタイプの最終勝負プロセスでも、臨機応変に、(仕掛けの変化としての!!)ドリブル勝負もミックスしていくというわけだ。
そう、相手を抜き去って背後スペースを突く勝負ドリブルだけじゃなく、タメを演出するキープドリブル、スペースをつなぐ直線的ドリブル・・等など。
とにかく、決定的スペースの攻略プロセスに、グループ戦術的なタイプ(傾向)と、個人戦術的なタイプ(傾向)がある・・というコトを言いたかった。
もちろん、ハナシを発展させると、こんな視点も出てくる。
そんな二つの傾向タイプを、巧く(効果的に!)使い分けられれば、「仕掛けの変化」という意味でも、強力な武器を手に入れたことになる・・!?
何せ、最終勝負の危険度は、いかに効果的に相手ディフェンスを「ダマすのか」というテーマに集約されるわけだから・・さ。
そう、バルセロナやバイエルン・ミュンヘン(等など)のように・・
■そして最後は、コーチの最重要タスクというテーマで締める・・
ディフェンスのイメージング能力(守備スキル!)が進化している現代サッカーでは、完璧な「決定的スペース攻略シーン」なんて、そうそう観られるモノじゃない・・と書いた。
とにかく、相手ディフェンス最終ラインの背後にある「決定的スペース」を攻略するような美しい仕掛けプレーは、簡単じゃないんだ。
そこでは、優秀なドリブラーが必要だし、人数をかけて組織コンビネーションを仕掛けていくために、チーム全体に浸透した「リスクチャレンジ姿勢」も必須になってくる。
ここで、ちょっとドメスティックな話題にも触れよう。そう、「J」。
そこでも、有無を言わせないような、手に汗握る「決定的スペースの攻略シーン」を、もっともっと多く創りださなければいけない。
そのためには、勝負を仕掛けていくイメージングと(強烈な意志と勇気に支えられた!)実際アクションの内容をもっともっと活性化させ、よりハイレベルに「シンクロ」させるコトが必須になる。
だからコーチは、選手たちの「意識と意志と勇気」を引き上げるだけじゃなく、それらを「高み」で安定させるために全精力を傾注しなければならないと、思うわけだ。
私は、どんなに難しい状況でも、常に、選手たちに「スペース」を意識させ、そこを攻略することへのトライを要求する。
そう、決定的スペースを攻略していくイメージ(意志)を引き上げていくために、リスクチャレンジへの意志を、限りなく高揚させるのだ。
ドリブルに才能がある選手ならば、いの一番に、ドリブル突破にチャレンジさせる。
もし彼が、失敗することを怖がって横パスに逃げようモノなら、すぐさま、何らかの(爆発的な!?)刺激をブチかます。
また、自分の前にスペースがあり、状況がほんの少しでも「ポジティブ」な場合、その時点でケアーしている相手フォワードを放り出してでも、そのスペースへオーバーラップさせる。
そこで、もし少しでも、次の守備に後ろ髪を引かれるような「ぬるま湯」のプレー姿勢が見えたら、それこそが、状況悪化の元凶になってしまうのだ。
だから、「行ける可能性」が少しでもあったら、120%の思い切りで、リスキーなオーバーラップへチャンレンジしていくように勇気づける。
そんな「刺激」を与えつづけることで、選手たちが、決定的スペースの攻略に、より積極的にチャレンジしていくように(心理的に!)リードしていくのだ。
もちろろんそこでは、ボールを失ってカウンターを喰らう危険性と、常に隣り合わせだ。
でも、もしコーチが弱気になったら、選手たちは、それに輪を掛けた「不安」に苛(さいな)まれるに違いない。そしてサッカーが、寸詰まりのレベルに落ち込んでしまう。
それでは、相手ディフェンスのウラに広がる決定的スペースを攻略していけるはずがない。
それは、不確実なサッカーだからこそ、とても微妙で根源的なディスカッションであり、「攻撃と守備のバランス」とか「内容と結果のバランス・・」、はたまた「美しく勝つために・・」なんていう普遍的なテーマに通じる。
まあ、そのディスカッションについては、次回にまわすことにしよう。
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「The Core Column」の全リストは、「こちら」です。
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは”Football saves Japan”の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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