湯浅健二の「J」ワンポイント


2006年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第26節(2006年10月7日、土曜日)

 

2006_「J1」第26節・・互いに持ち味を発揮したエキサイティングマッチ・・でも、退場さえなかったらネ〜・・(レッズ対ジェフ、2-0)

 

レビュー
 
 この試合でのレッズのポイントは、やはり、鈴木啓太(彼のことをマケレレ啓太なんて呼びたい心境かな・・)、長谷部誠、山田暢久のトライアングルを継続したということでしょう。そして、サッカーの絶対的なベースであり、全てのスタートラインであるディフェンス(ボール奪取アクション)からプレーに入っていくダイナミックな中盤が、攻守にわたって有機的に連鎖する優れた機能性を魅せつける。

 山田暢久が中盤の先頭にはいるけれど、両サイド(アレックスと平川)だけではなく、長谷部にしても鈴木啓太にしても(まあ、マケレレ啓太は後方支援がメインだけれどネ・・)、はたまたトゥーリオやネネといった最終ラインの選手までが、「流れのなか」で、山田を追い越して前線へ飛びだしていくのですよ。

 もちろんそんな状況では、山田暢久が、サイドに空いたスペースだけじゃなく、ときには最終ラインまで戻ることだってある。だからこそ、ポジションチェンジが効果的に機能する。まあ、そんな縦横無尽のポジションチェンジをリードしていたのは、前の山田暢久と後方のマケレレ啓太だったと言えそうだね。

 もちろん、そんな縦横無尽のポジションチェンジがうまく機能しつづける背景に、チームに深く浸透した高い守備意識があることは言うまでもありません。

 長谷部誠、山田暢久、そしてマケレレ啓太の三人は、例外なく、必要とあらば何十メートルもの「全力ダッシュ」でチェイス&チェックに入るという強烈なディフェンス参加イメージを持っています。この試合でも、山田暢久や長谷部誠の、何十メートルもの全力スプリントによるチェイス&チェックやボール奪取勝負を目撃しました。もちろんマケレレ啓太も、忠実なチェイス&チェックだけではなく、ボールがないところでの忠実なマークや相手をサンドイッチにしてしまう協力プレッシャーにも全力で取り組みます。

 素晴らしく高いレベルにある守備意識と、そのイメージを「抵抗なく自然に」実行に移せるだけの強烈な(闘う)意志。それがあるからこそ、互いの信頼感が醸成され、相互カバーリングの機能性もアップする。

 もちろんギド・ブッフヴァルト監督は、そのことを、先発メンバーに入るための重要な評価基準として選手に伝え、その意味をしっかりと理解させているのでしょう。要は、攻守にわたって、どのくらい積極的に(ボールがないところでの汗かきワークも含む!)仕事を探しつづけられるのかというポイントと、「まず自分が率先して行動を起こす」ことに対して強烈な意識を持ちつづけられるのかというポイントのことです。

 それこそが、個人事業主が集まったグルーブにおいて存在感を発揮できるホンモノの自己主張なのですよ。まず自分が汗をかいてアクションするのですよ。そんなプレー姿勢があってはじめて、チームメイトから敬意を表され頼りにされるリーディングプレイヤーになれるというわけです。健全な自己主張の積み重ねと、そのぶつかり合い(相互刺激)という環境こそが強いチームを作る。

 ちょっと冗長になったかも。スミマセン。さて、そんなレッズに対し、これまた、攻守にわたる忠実でダイナミックな組織プレーで対抗するジェフ。立ち上がりから、エキサイティングなゲーム展開になるのも道理です。

 このところ何度も書いているけれど(前節のJコラムを参照!)、ジェフでは、攻守にわたる「小さな汗かきプレー」の積み重ねが光っていました。最後の集中力とでも表現できるでしょうかね。ボールがないところでのギリギリの忠実マークや、最後の瞬間に、自分のマークを放り出して味方のカバーリングへ向かう勝負プレーなど。ジェフの選手は、本当によく考えながら主体的にプレーしていると感じます(もちろん素早く忠実なアクションを伴う思考!)。

 なかでも、やはり阿部勇樹が素晴らしい。大迫力のチェイス&チェックや、無類の強さを発揮する1対1のボール奪取勝負だけではなく、攻撃でも、シンプルなゲームメイクやロングシュート、はたまた二列目からの飛び出しなどで存在感を発揮する。特に、結城が退場になってからは、最終ラインと中盤をしっかりとリンクし、効果的にリードしていたと思います。

 さて後半。その14分、山田のスーパークロスからトゥーリオのスーパーヘッドが決まってレッズのリードが2点に広がります。そして、後半立ち上がりから、ボールを奪い返してから間髪を入れずに(複数の)オーバーラップが飛び出すなど、守備から攻撃への素早くシャープな切り替えをベースにガンガンと前へ攻め上がっていくジェフの勢いが(レッズの2点目という刺激によって)倍増していく。その流れのなかで何度もゴールチャンスを作り出すジェフ。その迫力は、ホンモノでした。

 まあ、一人足りないジェフが積極的に攻め上がってくるのだから、次のディフェンスで組織をしっかりと構築するのは簡単じゃない。そのスキを突いてくるレッズに、カウンターからの仕掛けも含めて何度も決定的なカタチを作り出されてしまうのですよ。それでも彼らの前への勢いは、まったく衰えを知らない。立派なものです。

 たしかに負けはしたけれど、この試合でも立派な組織サッカーで存在感をアピールしたジェフユナイテッド。ナビスコ決勝が楽しみで仕方ありません。

 



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