湯浅健二の「J」ワンポイント


2007年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第16節(2007年6月20日、水曜日)

 

やっと理想イメージのベクトルに乗りはじめたレッズ・・(レッズ対ヴィッセル、2-0)

 

レビュー
 
 「タツヤが入ってホント良くなったよな・・」「そうそう、普通に(攻撃の)パターンが増えたよな・・」「やっぱり頑張るタイプが入ると違うよな〜・・」

 ハーフタイムのトイレ。駒場スタジアムでの雑用を担当する高校生アルバイトとおぼしき若者たちが興奮してしゃべりまくっていました。たぶん学校でもサッカー部なんだろうね。まさに、おっしゃる通り。よく観察している。彼らも言っていたように、まさしく「タツヤ効果」。それについては、月曜日にアップした第15節のコラムも参照してください。

 要は、高い守備意識によって互いの信頼レベルを高揚させるだけではなく、それを基盤に、攻撃でも、ボールがないところでしっかりと走れているということです。そんな、攻守にわたるクリエイティブなムダ走りを繰り返せば、もちろん良いサッカーになるのも道理。何せ、レッズが擁する個の能力は折り紙つきだからね。高い個の能力を備えた選手たちが縦横無尽に走り回るのだから、攻撃での変化が大きく拡大するのも道理なのです。攻守にわたり、汗かきもいとわない組織プレーマインド・・ってな具合。

 前半は素晴らしいサッカーを展開した・・選手一人ひとりがしっかりと仕事ができていた・・攻撃のバリエーション(変化)が素晴らしかった・・もちろん、作り出したチャンスをゴールに結びつけられなかったことは課題として残るけれど・・。ホルガー・オジェック監督がそうコメントしていました。その表情からは、「どうだ・・これがオレたちのサッカーだ!」ってな満足感がこぼれ出していましたよ。

 このところ、組織プレーがうまく機能していないことで、レッズファンの間にフラストレーションが溜まっていたと聞きます。何度か出演した「テレビ埼玉のレッズナビ」でも、「負けてはいないけれど、人もボールも動かないし、出てくるのはゴリ押しの個人勝負ばかり・・」などといった不満のファックスやメールが多く寄せられていましたよね。

 でも、そのフラストレーションの大きなところは解消されつつあるに違いありません。それほど、この二試合でレッズが魅せたサッカーはハイレベルだったのですよ。組織プレーと個人勝負が高みでバランスした高質サッカー。人とボールがよく動くから(もちろんコンパクト守備がうまく機能しているからこその動き!!)うまくスペースを使える・・だから個人勝負も冴えわたる・・っちゅうわけです。そんな好循環ベクトルが明確に見えたわけだし、監督も、まさに「それ」を志向しているわけだから、フラストレーションが希望の光に変容しはじめるのも道理だよね。

 いまの良いサッカーの流れを支えている絶対的なキーワードは、もちろん「優れた守備意識」です。アリバイ守備などとは無縁の忠実なチェイス&チェック。その周りで展開される、全力の汗かきディフェンス。そんな忠実なプレー姿勢が輝きを放ちつづけます。要は、ホルガー・オジェック監督が志向する、コンパクト守備からの組織的でダイナミックな仕掛けが機能しはじめたということです。

 トント〜ンという小気味よいボールの動きから繰り出されるタイミングのよいサイドチェンジパス。もちろんそれは、逆サイドスペースの有効活用を意味します。そしてパスを受けた相馬崇人や山田暢久が、後ろ髪を引かれることなくドリブル勝負に挑んでいく。そして中央には、前線の三人(ワシントン、田中達也、ポンテ)ともう一人が常に詰めている。そのもう一人は、長谷部誠や鈴木啓太だけではなく、たまにはトゥーリオや阿部勇樹といった最終ラインの選手も顔を見せるのです。

 忠実な全力チェイス&チェックなど、全員のハードワークを基盤にしたコンパクト守備がうまく機能しているからこそ高い位置でボールを奪い返せる・・だからこそ次の攻撃に人数をかけられる・・だからこそ人とボールを効果的に動かしつづけられる・・だからこそスペースを効果的に攻略していける・・だからこそ、個の才能を活かすことができる(タメやドリブル勝負)だけではなく、そこからのラストパスの実効レベルも格段に高揚する(最終勝負のオプションの広がり!)・・等々。まさに、善循環じゃありませんか。

 まあ、後半の出来をみたら、ちょっと誉めすぎの感はあるけれど、とにかくレッズが、良いイメージのベクトルに乗ったことだけは確かな事実です。この試合では(まあ・・前半では)、プレーしている選手が一番楽しんでいたに違いありません。

 



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