湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2008年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第27節(2008年9月28日、日曜日)
- 二試合のポイントをまとめます・・(ヴェルディvsガンバ、1-3)(グランパスvsレッズ、1-1)
- レビュー
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- それでは、まずスタジアム観戦したヴェルディ対ガンバから。
まとめると、基本的には、ガンバの(復調した!?)強さの方が目立った内容ではあったけれど、後半だけを観たら(吹っ切れた!?)ヴェルディも、彼らが本来的に秘めている潜在能力をいかんなく表現したとも言えそうです。
それにしても、電光石火の仕掛けで2点のリードを奪った立ち上がりのガンバは見事だった。
たしかに最初の数分間は、ダイナミックな積極ディフェンスを仕掛けつづけるヴェルディがペースを握り、惜しいチャンスも作り出してはいたけれど、そんな流れのなかで、冷静なガンバが、その冷静さの象徴でもある遠藤保仁(ヤット)がコアになった素早い(カウンター気味の)攻撃を繰り出していくのです。
その「スムーズ」なコンビネーションの流れは、遠藤ヤットの「クールで実効あるシンプルプレー」と相まって、憎いくらいにスマートな雰囲気を放散していました。
スパッ、スバッという切れ味鋭くボールが動きつづけるガンバの組織的な攻撃リズム。ホント、見所満点でした。球離れが早い・・というか、パスを受ける前から次のプレーを明確にイメージしているということなんだろうね。そんな素早い組織プレーリズムのなかで、活発に人も動くから、次々とヴェルディ守備ブロックのなかに出現してくるスペースを活用してしまうのですよ。
それは、ヴェルディの(前から仕掛けていく)プレッシング守備のエネルギーを「逆手に取ってしまう」ような巧みな組織コンビネーションとも言える。ヴェルディが仕掛けていくボール奪取勝負の(寄せの)エネルギーを、遠藤を中心にした素早い「ボールの動き」で翻弄してしまうガンバといったところ。
そんな流れのなかで、冷静な遠藤が、まさに「クール」に先制ゴールを決めちゃうんだからネ。
素早いパスタイミングのワンツーで抜け出し(播戸のポストプレー!?)見事なコントロールから、右足のインサイドでカーブを掛け、ヴェルディゴールの右ポストギリギリにシュート決める遠藤。憎いね。
そしてその2分後には、これまた遠藤ヤットが中心になった、左サイドでの人とボールの動きによる「揺さぶり」から、最後はロニーが、後方から押し上げてきた明神智和へのラスト横パスを決める。それにしても、吹っ切れた明神智和のシュートだった。打たれたシュートは、今度はヴェルディゴールの左ポスト内側をヒットしてゴールへ吸い込まれていった。
全力のプレッシング守備でガンバを押し込んでいた「ように見えた」ヴェルディだったけれど、数分後には、そんな「前への勢い」の逆を取られ、巧みに二つのゴールを奪われてしまったという次第。
ヴェルディがゲーム立ち上がりから魅せた積極的な仕掛けサッカーには、彼らの強い意志が込められていた。だからこそ、ガンバが挙げた「クールな2ゴール」は、ヴェルディ選手にとって殊の外ショッキングな「現実」だったはず。それは、彼らの「モラル」が減退するのも道理という落胆の展開だったのですよ。そして案の定、その後のヴェルディ守備では、「忠実な汗かき=守備の起点の演出」がまったく機能しなくなったのです。
あ〜あ、ゲームが終わっちゃった・・。前半のゲーム展開を観ながら、高慢にも、そんなことを思っていた筆者だったのです。でも実際は・・
驚くことに、後半のヴェルディが生き返ったのですよ。積極的なプレッシング守備をベースに、前半の立ち上がり以上の積極性でガンバを押し込みはじめたのです。そして、その勢いそのままに「追いかけゴール」まで奪ってしまう。それは、まさに「ドラマを予感させる」ゴールではありました。それは、ヴェルディが秘める潜在力の高さを再認識していた時間帯ではありました。
ただガンバは、そんなヴェルディの追いかけムードにアタフタすることは全くなかった。このところの復調ムードが彼らの確信レベルを引き上げたんだろうね、一つひとつの守備プレーが、よりソリッド(確実)に、有機的な連鎖を魅せつづけるように発展していったのです。ゲームを通した進展!? まあ、そういうことだね。
そしてガンバは、再三にわたって見事なカウンター攻撃を繰り出していくのです。特に、後半の途中から交代出場した佐々木勇人のドリブル突破は見応え十分だった。
その佐々木勇人だけれど、交替出場した次の瞬間には何人ものヴェルディ選手を置き去りにするようなドリブル突破から決定機を演出し、その数分後には、これまた単独ドリブル勝負から、今度は自ら見事なキャノンシュートを(ガンバの三点目を)決めてしまうのですよ。
それ以外にも(基本的にはカウンター気味の流れのなかで)二川のドリブル突破からの完璧なシュートなどもあった(わずかに右へ逸れた)。ガンバは、冷静に、ヴェルディの「バランスの崩れ」を明確にイメージしていたということです。
復調したガンバ。西野監督も手応えを感じているようです。
「ポゼッションだけのサッカーにならず、しっかりと(リスクを冒して)仕掛けていけていた・・二列目の選手たちがアタッキングサードへも積極的に進出していくというイメージを実行できていることも特筆・・とにかく良いゲームができたと思う・・サッカーが復調しはじめた背景?・・シリアへ行ったこと(そして勝ったこと)がポジティブな刺激になったのかもしれない・・やはり積極性・・強い意識(意志)が、勝ちを引っ張っているということだと思う・・」だってサ。フムフム・・
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さて、それでは、テレビ観戦したグランパス対レッズについても簡単にまとめることにします。
この試合については、まず何といっても「テレビ中継の内容」から入っていかなければなりません。本当にビックリしたのですよ。何せ「あの」テレビ局の映像でも、ボールがないところのドラマもしっかりと観察できたんだからネ。
要は「引きのカメラアングル」がメインになったということです。というか、ほとんどの映像が、コート半面をカバーするくらい引いている。もちろん、タイミングよく、ズームアップ映像もミックスしていく。わたしは、本当に楽しめました。
だからこそ、エジミウソンの「攻守にわたるプレー姿勢」が好転していることを肌で感じることが出来たし、レッズが、しっかりと人数を掛けて組織的な攻撃を繰り広げているシーンも視認できた。だからこそ、個人勝負もより効果的に仕掛けていくことが出来る。フムフム・・
ガンバ同様、レッズもまた、国際ステージという「刺激」を通して、何らかのポジティブなステップを踏んだということなのかも知れない。たしかに、数日前のACLの勝負マッチは、彼らに何らかの確信を与えたに違いないからね(そのゲームのレポートは「こちら」を参照してください)。
両サイドの押し上げ、守備的ハーフコンビの積極的で効果的な「上下動」と「タテのポジションチェンジのマネージメント」などなど。たしかに、足に問題を抱えるトゥーリオが流れのなかでのオーバーラップしていくシーン(タテのポジションチェンジ)はそんなに目立たなかったけれど、レッズの攻撃コンテンツからは、以前のような「前後分断」といったネガティブな雰囲気はかなり払拭されたと思います。
この試合は、守備の内容や、チャンスの量と質など、全体的にはレッズに軍配が上がることは確かだけれど、まあ「勝負」という視点に限れば、グランパスも、良い流れを演出するなかで、しっかりとチャンスも作り出したわけだから、引き分けはフェアな結果だったとも言えそうだね。
それにしてもレッズは(J終盤とACL決勝トーナメント)本当にグッドタイミングで「様々なチーム構成要素」が揃ってきたと思いますよ。ポンテの復帰と本当の意味での復調、エジミウソンの(様々な問題を経たからこその!?)プレーイメージのポジティブな発展、高原直泰の復調の兆し、等々。また、鈴木啓太や田中達也にしても、完全復調ベクトルには乗っているはずだからね。
まあ、このことについては、ゲルト・エンゲルス監督の手腕という側面もある。
自身がチームをテイクオーバーしたとき、主力選手の離脱や不調がつづいていたわけだけれど、そんな厳しい状況のなかでも、トゥーリオを中盤に上げたり、細貝萌をブレイクさせたりなど様々な効果的な策を講じ、かなりの「プラス」を演出したわけだからね。また、梅崎司や永井雄一郎といった才能連中が、ボールのないところでもしっかりと動きはじめたり守備にも効果的に参加したりするといったポジティブな現象も多かったよね。
強烈なリーダーシップでチームをグイグイ引っ張っていくというのではなく、どちらかといったら「調整型」のプロコーチという印象の方が強いゲルト・エンゲルス監督。ドイツ人だけれど、マインドは日本人に近い!? さて・・
とにかく、いまのレッズが「上昇ベクトル」に乗っていることだけは確かな事実ですからネ。またまた、最高にエキサイティングな学習機会に恵まれたという思いで(また某テレビ局の中継映像が大きく改善されたことで!?)ハッピーなことこの上ない筆者なのでありました。
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ということで・・しつこくて申し訳ありませんが、拙著『日本人はなぜシュートを打たないのか?(アスキー新書)』の告知もつづけさせてください。その基本コンセプトは、サッカーを語り合うための基盤整備・・。
基本的には、サッカー経験のない(でも、ちょっとは興味のある)一般生活者やビジネスマン(レディー)の方々をターゲットに久しぶりに書き下ろした、ちょっと自信の新作です。わたしが開発したキーワードの「まとめ直し」というのが基本コンセプトですが、書き進めながら、やはりサッカーほど、実生活を投影するスポーツは他にはないと再認識していた次第。だからこそ、サッカーは21世紀社会のイメージリーダー・・。
いま「六刷り」まできているのですが、この本については「こちら」を参照してください。また、スポナビでも「こんな感じ」で拙著を紹介していただきました。
蛇足ですが、これまでに朝日新聞や日本経済新聞(書評を書いてくれた二宮清純さんが昨年のベスト3に選んでくれました)、東京新聞や様々な雑誌の書評で取り上げられました。NHKラジオの「著者に聞く」という番組で紹介されたり、スポナビ宇都宮徹壱さんのインタビュー記事もありました。また最近「こんな」元気が出る書評が出たり、音声を聞くことができる「ブックナビ」でも紹介されたりしました。
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