湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第19節(2010年8月17日、火曜日)
- いまのレッズには「何か」が足りない(その2)・・(RvsVE, 1-1)
- レビュー
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- サッカーは究極の心理ゲーム・・。
このところ、そのテーマについてランダムに論を展開しています(それに関連するコラムには全てリンクを張っています・・)。でも、後から読み直してみて感じた。フム〜〜、これじゃ、ちょっと分かり難いかもしれないな〜〜。
要は、勝者のメンタリティーと呼ばれる「モノ」の本質的なベースになる、勝つことに対する(チャンスを実際のゴールに結びつけることに対する)究極の『こだわり(=強烈な意志)』を強調したかったんですが、どうも、うまく表現できていなかったような・・。
ということで、もう少し分かりやすい表現にトライしよう。ここでも、ドイツサッカー界の伝説的スーパーコーチ、故ヘネス・ヴァイスヴァイラーにご登場願うことにします。
彼が、当時のドイツを代表するストライカー、ディーター・ミュラーを、全体トレーニングがはじまる二時間前に呼び出して、特別なシュートトレーニングを課したときのことは、もう何度も書きましたよね。でも、そこで本当に言いたかったことが、うまく表現できていなかった。ということで、今度は、具体的な状況描写を挿入することで、正確に表現することに再度チャレンジします。
思い出せる限り正確に(!?)表現すると、コトの成り行きは、こんな感じでしたかネ・・
そのシュート練習でのディーター(ミュラー)は、ほとんどのシュートを、キチンと決めるんですよ。でも、ヘネス・ヴァイスヴァイラーは満足しない。そのシュートが「小手先」だというのです。そんなシュートじゃ、ワールドカップ決勝とか、ギリギリの勝負の場面では決められない・・とか言ってね。
私の目には、しっかりとしたシュートを打って立派なゴールを決めたと映っていたけれど、ヴァイスヴァイラーの目には「小手先」だと映っていたらしい。いや、彼は、もっと別な「感覚器官」を使って、ディーター・ミュラーの感性までも感じ取っていたのかもしれない。
「アイツのシュートには、絶対に決めるんだというエンスージアズム(熱中・熱意・熱狂)が込められていない・・強烈な意志や気を感じない・・」
そしてヴァイスヴァイラーは、気が入っていない・・とか、そのシュートに、絶対に決めるんだという決意や意志が込められていない・・なんてことを言うわけなのです。そんなヴァイスヴァイラーの厳しい言葉を聞きながら、「この」わたしでさえ、オッサン、そりゃ理不尽だろ〜〜・・なんて感じていたものです(スミマセン・・ヴァイスヴァイラー先生!)。
もちろんシュート練習の雰囲気も、時間を追うごとに、とても険悪なものになっていく。両者が睨み合うシーンもたびたび。観察しているこちらは、ヒヤヒヤ。いや・・フリーズしていたかも。
でもサ・・、1時間も経ったあたりから、急に雰囲気が変わっていったんですよ。ものすごい緊張感(両者の間の極限テンション)のなかで繰り返されるシュート。そこに・・これは、とても微妙な感覚だけれど・・何か、それまでとは違った雰囲気が放散されるようになっていったのです。
それまでは、単にシュートを打つという行為を繰り返していたディーター・ミュラーが、急に、ゴールを決めることの方に集中しはじめた・・と感じたのですよ。
シュートを決めるのは、テクニックだよね。そう、腰を(重心を)入れて、しっかりとミートすれば、相手のプレッシャーがない状態のシュートならば、まあ、外すことはない。でも、そのときのディーター・ミュラーは、「シュートをすること」ではなく、しっかりと「決めること」の方に、ものすごい気迫を魅せはじめたと感じたのです。あくまでも感覚だけれど・・ね。
そして「その後」ディーターに、そのときのことを聞いた。どんな変化があったんだい??
「そうなんだよ・・心のなかで何かの変化があった・・オッサンに対する怒りがこみあげてきたよな・・そしてアタマに来て蹴りはじめた・・そうしているうちに、ハッと思ったんだよ・・オレは、単にシュートしていただけだったかもしれないってね・・そこからは、ゴールを意識し、シュートを決めることの方に集中するようになったんだよ・・ビックリすることに、その後は、シュートするときの景色というか、見えてくるものが違ってきたんだ・・ゴールマウスを、より具体的なオブジェクト(目標物)というふうに見られるようになったっていうかな〜〜・・」
ディーター・ミュラーが、そんなニュアンスことを言っていたと覚えている。
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このハナシで何が言いたかったかって? そんなことは、皆さん自身が考えて下さい・・っていうのも失礼か・・。
まあ・・、指揮官の心理マネージメントは、とても重要だということが言いたかったんですよ。ディーター・ミュラーが、自分の内面に潜む「弱さ」と一緒に闘ってくれたヘネス・ヴァイスヴァイラーを、心から尊敬していたことは言うまでもないよね。
選手のプレー内容は、監督を映す鏡・・!?
わたしは、この試合でのレッズにも、攻守にわたって、何かが足りないと感じていました。
リスクを冒して前へチャレンジパスを送り込まなければならないシーンなのに、横パスやバックパスに逃げてしまう・・絶対に、相手ゴール前のゾーンへ突っ込んでいかなければならない場面なのに、ボールウォッチャーなってしまう・・
要は、たしかに全体的にはゲームの流れを牛耳り、ある程度のチャンスも作り出したけれど、実質的な(誰もがハッとするような!?)決定的チャンスの量と質では(前節のグランパス戦と同様に!?)ベガルタ仙台の後塵を拝したと思うのです。このことは、観戦していたほとんどのジャーナリスト仲間の一致した意見でした。
でも守備は、全体的には、そこそこ機能していたとも思う。まあ・・とはいっても、かなり「中だるみ」する時間帯も多かったよな〜。そこでベガルタに逆襲を喰らった。とても悪かったことは、そんな状況で、ベガルタに「攻め切られて」しまったこと。何度か、決定的に崩されて大ピンチを迎えたシーンを目撃した。
また、交替選手。特に原口元気(セルヒオは、びっくりするくらい走り回って頑張っていた!!)。前節でも彼のプレー姿勢を批判したけれど、この試合での彼のプレーぶりには、本当に怒り心頭に発してしまった。
彼が相手ボールホルダーを追いかけなければならないシーンで、その相手を行かせてしまい、結局「そこ」をキッカケに崩されて先制ゴールを奪われた(まあ自殺点ではあったけれど・・)。
その後も、消極的なパスミスはするわ、行かなければならないところで逃げの横パスを出して足を止めてしまうわ・・目も当てられない。もちろん何度かは、彼の持ち味であるドリブル勝負は仕掛けていったけれど、どうも中途半端。だからホンモノのチャンスにつながらない。
「オマエ〜〜・・交替して入ったんだからエネルギー余ってるんだろう・・逃げの横パスを出したんだったら、そこから、斜めの全力スプリントで決定的スペースへ抜け出して行けよ・・少なくとも、味方が使えるスペースを作り出すことはできるじゃないか・・なんで、そこで足を止めて休んでいるんだ〜〜!」
そのとき、ホントに声を出して怒っていた。また守備でも、気を入れて追いかけない・・まさにぬるま湯。
90分間を通して闘った柏木陽介に、何度も追い抜かれ(本来は原口がやらなければならなかった!?)チェイス&チェックの汗かきディフェンスをやられてしまうという「体たらくシーン」を何度も目撃した。ホントに無様なプレー姿勢だった。
私が監督だったら、グラウンドに送り出す前に、「率先して走りまわれ!・・率先して相手ボールホルダーを爆発的にチェイスしろ・・率先してドリブル勝負を仕掛けていけ!・・率先して、相手守備ブロックのバランスを崩すように、味方を追い越すくらいの長いフリーランニングを仕掛けていけ!・・等々」なんていう「スーパー汗かきプレー」を命令したに違いない。
そして、もし「それ」をやらなかったら、すぐさま交替させていたと思う。それほど、チームに強烈な刺激を与える「交替」はない。グラウンドに送り込んだ選手を、数分で、引っ込めてしまうんだから・・。でも、そうまでしなければ、いまのレッズに足りない「何か」を充填することはできない・・そう感じる。フ〜〜・・
ちょっと厳しすぎるコラムだろうか・・。
たしかに(ゲームの立ち上がりなど部分的には!?)良いサッカーは魅せるけれど、どうも「何か」が足りないし、そんな良い流れを持続できない・・そして、コントロール・サッカーの機能性がどんどんと沈滞し、結局は、タテへのチャレンジが少ない、動きのない停滞サッカーになってしまう・・たしかに、そんな「中だるみ」を、再び活性化できるようにはなっているけれど・・
とにかく、ホントに疲れるゲームだった・・さて、どうしたモノか・・
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またまた、出版の告知です。
今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。
悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。その本に関する告知記事は「こちら」です。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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