湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第19節(2010年8月18日、水曜日)

 

トゥーリオというテーマ・・(FRvsGR, 4-0)

 

レビュー
 
 ヨ〜シ・・これで面白くなった。

 フロンターレのヴィトール・ジュニオールが先制ゴールを決めたとき、すぐに頭をよぎった直感的な感想です。

 ところで、その先制ゴールだけれど、本当に、見事の一言でした。

 中盤の高い位置で、フロンターレの田坂祐介が、仕掛けのドリブルに入る・・同時に、右サイドのヴィトール・ジュニオールが爆発した・・中央ゾーンの決定的スペースへの、斜めの飛び出し・・彼をマークすべきだったグランラパス阿部祥平は完全に置き去り・・そして、ヴィトールが目指すタテの決定的スペースへ、田坂から、まさに「置くような」ラストパスが出された・・という次第。

 そのコンビネーションだけじゃなく、そのラストパスを、まさに冷徹そのものといった(当たり前だよっ!?ってな)雰囲気で、グランパスゴールへ叩き込んだヴィトール・ジュニオールの、「決定力」というか、「心の深いところから湧き出してくるようなレベルを超えた確信」というか、「ゴールを決めることに対する強烈な意志とイメージ」というか・・、ホントに素晴らしかった。

 アッ、スミマセン、形容句がしつこくて・・。何せ、このところ、そんな、ロジックを超越した「意志のチカラ」というテーマと取り組んでいるモノで・・。とにかく、「あの」ヴィトールの冷静なゴールに、いたく心を動かされていた筆者だったのですよ。

 ここで、フロンターレ高畠勉監督にお願い。ヴィトールに、そのときの「正確な心の動き」を、なるべく簡単に表現してもらいたいのです。もちろん、日本サッカーのために・・。同時に、素晴らしい決定力を誇るジュニーニョにも、そのあたりの「心の動き」を聞いてみたい。機会をみて、フロンターレ広報にアクセスしてみようかな。決して、迷惑は掛けませんから・・。あははっ・・

 あっと・・本題。冒頭の「これで面白くなった・・」という直感的な思い。それは、フロンターレがリードを奪ったことで、またまたグランパスのギリギリの逆転劇(レベルを超えた勝負強さ)を体感できるかもしれない・・という期待そのものだったのです。

 もちろん、オブジェクト(テーマ対象)は、トゥーリオ。

 彼は、レッズとの別離・・ワールドカップ・・そして親族に対する心配事・・など、様々な「変化」を体感することで、一皮も二皮も「ブレイクスルー」したと感じます。

 無為なサボリもなくなったし、とにかく、攻守にわたる「勝負所での強さ」は、もう完全に世界レベルです。

 もちろん、守備での優れたカバーリング能力とか局面の競り合いにおける強烈なボール奪取能力などは言うまでもないけれど、ここで注目したいのは、攻撃。それも、ここぞっ!の勝負所で、例外なく(期待に違わず)ゴールをもぎ取ってしまう強烈な意志というテーマが興味深い。

 フロンターレにリードされた後のグランパスの攻めでは、ケネディーの惜しいヘディングシュートもあったけれど、やはり、トゥーリオが攻撃参加してきたときの迫力と可能性はレベルを超えていた。大きなクロスボールを、ファーポストゾーンで待ち構え、まさに「ドカンッ!」という音がするくらいの迫力でヘディングシュートを飛ばしたり、中央ゾーンへ折り返すトゥーリオ。その迫力は、とにかく世界レベルだった。

 とにかく、トゥーリオが上がってくるだけで、グランパスの仕掛けプロセスでの確信レベルが何倍にも高揚する・・なんて感じる。トゥーリオの攻撃参加には、それほどの「スピリチュアルエネルギー」が放散されていた。

 そんな雰囲気には、もちろん彼の強烈なリーダーシップが底流にある。玉田圭司や金崎夢生だけじゃなく、ダニルソン、マギヌン、ブルザノビッチ、ケネディの外国人カルテットも、トゥーリオに対して一目置き、その「勝負強さ」を頼りにしていると感じます。

 まあ・・すごいね。

 だからこそ私は、トゥーリオを中心にした、レベルを超えた「逆襲劇」に対して、そしてもちろん、それに対峙するフロンターレの守備とカウンターに対して・・要は、レベルを超えてエキサイティングな勝負ドラマに対して・・心から期待していたのですよ。でも・・

 たしかに前半は、そんなエキサイティングドラマの雰囲気がプンプンしていた。だからこちらも、目を皿のようにして、(トゥーリオが参加した)グランパスの攻撃と、それに対峙するフロンターレ守備を見守っていた。でも後半は・・

 たしかに立ち上がりには、グランパスが、ファーサイドゾーンでクロスボールを受けたトゥーリオの、折り返しヘディングからのチャンスを作り出したけれど、それ以降は、どうもパッとしない展開がつづくようになり、そして唐突に(後半18分)、フロンターレが追加ゴールを奪ってしまっただけじゃなく(黒津の突破ドリブルは見事だった!)、その6分後には、グランパスのセンターバック増川隆洋が二枚目イエローで退場になってしまうのですよ。

 まあ・・それで勝負ドラマ自体には、大きくブレーキが掛かってしまったよね。グランパスは攻め上がるけれど、うまくチャンスを作り出せず・・逆にカウンターから失点を重ねてしまう・・フ〜〜・・。

 たしかに、実質的な内容からすれば、こんなに点差が開くゲームじゃなかった。でも、まあ、リーグトップを行くグランパスにとっては、よい「心理的なクールダウン」になったと思いますよ。この結果は、惜しい「0-1の敗戦」というモノよりも何十倍もダメージが少ないことは事実だからね。

 「まあ、サッカーだから、こんなこともあるサ・・」ってな感じで受け容れ、すぐに気持ちを切り替えられるということです。

 フロンターレの調子は、どんどん上がってきているし、グランパスの勝負強さも健在。また今節、トップスリーが足踏みしたことで(アントラーズは引き分け)リーグの優勝争いも、変化に富んだモノになりそうな予感を振りまいた。リーグの盛り上がりにとって、とても良い展開じゃありませんか。

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 



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