湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第25節(2010年10月2日、土曜日)

 

内容は良くなかったけれど、とにかく勝ち切ったことには重要な意味がある・・また、ハードワークというテーマについても・・(ARvsR, 1-2)

 

レビュー
 
 この試合でのテーマは、またまた、闘う意志のチカラ(もちろん、攻守にわたる汗かきハードワークの量と質のことですよ)。その根源的ファクター(要素)に関する、このコラムでの絶対的な評価基準は、細貝萌、柏木陽介、そして田中達也のプレーコンテンツとしましょう。

 要は、他の選手たちが・・もちろん攻撃の選手たちが・・もっと具体的に言っちゃえば、原口元気、高崎寛之、そしてエジミウソンといったオフェンス選手たちが、どうしてもっと、攻守にわたって、前述の3人がブチかましつづけたのと同じようなハードワークを繰り出していけないのかという基本的な疑問がテーマだということです。

 まあ、エジミウソンと原口元気に関しては、要所で、汗かき(ディフェンス)プレーに励むところもあるし、ボールを持ったら、とても効果的な(要は、彼らにしか出来ない!)勝負プレーを繰り出していたから、高崎範行と「同列」に語ってしまうのはフェアではないかもしれないけれど・・

 ちょっと、ここで、ゲームの全体的な流れを俯瞰(ふかん)してみましょう。

 レッズは、立ち上がり15分までに、ポンポ〜ンと軽快にゴールを決めた。その二つのゴールに象徴されていたように、特に立ち上がり時間帯でのレッズは、とても良いリズムの組織サッカーを展開した。でも、二点リードという「心理的な落とし穴」が口を開けたタイミングが早すぎた。だから、徐々にレッズの組織サッカーのリズムが減退していった。

 やっぱり難しいネ・・。一度ペースが落ちてきたところから、再びチーム全体が一つのユニットとして機能するような組織サッカーへ向かうダイナミズム(活力・迫力・力強さ)をアップさせるのは・・。だから、リーダーシップが必要なんだよな。田中達也・・!? 柏木陽介・・!? 細貝萌・・!?

 フォルカー・フィンケは、トゥーリオのような特筆パーソナリティーに集中するようなリーダーシップではなく、複数のリーダーシップの台頭を(ポジティブなエネルギーのぶつかり合いを!?)期待していると言う。その目標イメージには、わたしもアグリーです。でも、その目標に近づいていくためには、若いチカラも(彼らの自己主張クオリティーの育成も)必要だろうから、まだまだ時間が掛かるかもしれない。

 この試合では、冒頭の3人が、プレーの内容で、チームを引っ張っていた。だから後半にしても、アルディージャに「イチかバチかのフッ切れた爆発」を許さず、しっかりと最後までゲームをコントロールできていた。でも、レッズの理想ベクトルからすれば、前半の半ば過ぎからのサッカー内容は、とても誉められたモノじゃなかった。

 この現象を表現するニュアンスは難しいネ・・。たしかに、集中切れでマークが外れてしまったり(まったくフリーな相手にボールがわたるシーンが、その象徴!)、自分たちの背後スペースを完全に攻略されるといった「守備ブロックの破綻」はなかった。たしかに守備は安定していたけれど、それでも、ある程度は振り回されたことで、悪いイメージが残ったに違いない。逆から観れば、理想へ近づいていくための「有益なポジティブ・イメージ」を積み上げることが出来なかった・・ということだね。

 この三試合のサッカー内容からすれば(帰国してから、しっかりとレッズのサッカーをビデオで観ていますよ)、この停滞は、ちょっと残念だったですね。

 そんなゲームの流れのなかで、冒頭の3人が、攻守にわたって魅せつづけた素晴らしいハードワークと、意志のパワーに支えられたリスクチャレンジ(勝負)プレーには、拍手を贈るしかなかった。だからこそ、その他の3人に対する不満がつのった。

 そして、根本的な疑問が、再びフツフツと沸き上がってきた。もし、「才能系」の選手が、田中達也や細貝萌、はたまた柏木陽介のようなハードワークをしたら(もちろん、この3人も十分な才能を秘めているヨ・・誤解を避けるための注釈でした・・)もっともっと世界に近づいていけるのに・・。

 まったくと言っていいほど仕事をしなかった高崎寛之は問題外だけれど、特に原口元気は、もっともっとハードワークをやらなければならないのですよ。まあ・・エジミウソンについては、前述したように、ワントップとしての仕事はキッチリこなしているからいいけれど・・

 とにかく、原口元気。先月のコラムで、交替出場したにもかかわらず、満足なプレーが出来なかった(まったく闘う意志が感じられなかった!)原口元気をボロボロに書いた。でも、次の試合では、攻守にわたる汗かきハードワークだけじゃなく、仕掛けプロセスでも、爆発的な突破ドリブルなど、これぞ才能!ってなスーパープレーを披露した。そしてそのゲーム以降、攻守にわたって好調なプレーを維持しつづけていた。

 確かにこの試合でも、彼にしか出来ない魅惑的なドリブル勝負を披露した。でも、そこに至るまでのハードワークへの「意志」が減退傾向にあると感じていたのは私だけではないに違いない。

 今わたしは、フットボールネーションで体感した「蓄積」をベースに語っている。

 ・・原口元気は、並外れた才能に恵まれている・・だからこそ、もっと、もっと、攻守にわたるハードワークに勤(いそ)しまなければならない・・特にディフェンス・・そこで、全力チェイス&チェックを繰り返すことで、必ず、次の攻撃で、彼が天から授かったスーパーな才能を、最高の状態で表現するチャンスに恵まれる・・そのメカニズムに関するロジカルな説明は難しいけれど・・

 ・・まあ言うならば、こういうことかな・・ボール奪取プロセスに積極的に絡みつづけることで、次の攻撃の起点として効果的に機能できる(自己主張できる)し、だからこそ、自分のイメージを主体に、仕掛けプロセスを引っ張っていける!?・・それだけじゃなく、ポジティブな自己主張のチカラも、実効あるカタチで大きく発展するに違いない・・フムフム・・

 このことは、もちろん高崎寛之にも言える。あんな「ぬるま湯のプレー姿勢」では、まず何といっても、チームメイトに認められるはずがない。相互レスペクトのないところに発展など望めない。

 とにかく彼は、いまの三倍は走らなければならない。もちろん、フォルカー・フィンケが言うように、何時、どこへ、どのように・・などといったロジカルなイメージ描写も必要だろうけれど、彼の場合は、とにかく考える前に足が動いているっちゅうプレー姿勢を習慣にしなければはじまらない。そんなベースが出来てきて初めて、彼の才能が開花しはじめる。何といっても、彼もまた「ディエゴ・マラドーナ」じゃないんだから・・

 たしかに高崎寛之は、柏木陽介の天才的なラストクロスによってゴールを奪ったけれど、それは、単なる偶発ゴールだった。ハードワークして「そこ」にいたわけじゃないからね。とにかく、あのゴールは、柏木陽介が「0.8点」だよ。

 それにしても柏木陽介。前節のゲームでも見事なミドルシュートを決めた。彼が演出するゲームメイクは、とても魅力的で効果的だけれど、それだけじゃなく、中盤の底でリンクマンとしてプレーすることで(常に後方から押し上げていくという状況にあることで)、自然な流れとして、ミドルシュートのチャンスも増えていった。

 この試合でも、彼のミドルシュートからレッズの2点目が生まれた。わたしは、彼のミドルシュートは、「J」でも有数だと思っているのですよ。だから、この試合で、そのゴールシーン以外で彼がミドルシュートを飛ばしたシーンが少なかったことが残念だった。

 とにかく彼は、もっともっと「ミドル」にチャレンジすべき。そんな攻撃の「変化」があれば、それによって相手の守備ブロックの対応を、より不安定なモノにすることが出来るし、レッズの仕掛けオプションだって、大幅に増えるよね。

 そして、最後にもう一度、わたしの疑問を・・

 田中達也、細貝萌、柏木陽介がブチかましつづけるハードワーク。レッズには、「それ」を免除されるような「ディエゴ・マラドーナ的な天才」はイネ〜だろ!?

 何か、文章にまとまりがない。まあ・・いいか・・。ご容赦アレ・・

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 



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