湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第25節(2010年10月3日、日曜日)
- 様々なテーマをランダムにピックアップしちゃいました・・(FCTvsB, 3-0)
- レビュー
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- 「もう、世界のどこでも、攻守にわたるハードワークが出来ない選手は生き残れなくなっている・・その意味でも、我々は、まだまだ多くの課題を抱えていると思っている・・」
久しぶりの「大熊節」。イイね・・。
FC東京の新任(出戻り!?)大熊清監督が、私の質問に対して、いつものように、とても真摯に答えてくれた。
「森重真人・・大熊さんになっても守備的ハーフで登場してきたので、ビックリした・・そして、ハッと気付いた・・そうか、梶山陽平がケガで戦列を離れたことで、森重真人に、後方からのゲームメイクを期待したということか(それに対して大隈さんが、軽く同意していた)・・わたしは、守備的ハーフは、リンクマンやゲームのコンダクターだけじゃなく、チームのダイナミズムを高揚させるジェネレーター(発電器)としても機能しなければならないと思っている・・その意味合いで、まあこのことは前田俊介にも言えることだけれど、あのような(動きの少ない・・動き回ることに対する意志が見えてこない!?)プレー姿勢は、まったく考えられないと思っているのだが・・」
またまた長い質問になってしまったけれど、それに対して大熊さんが、冒頭のコメントをくれたというわけです。もちろん大熊さんが言ったことは、それだけじゃない。
「わたしは森重に対して、チームのダイナミズムをアップさせられるくらいの選手へと脱皮してくれることを期待している・・そうなって初めて、彼の天賦の才を、チームとして十二分に享受できるということだ・・まあ、この試合の彼のプレー内容に対しては、総体的には頑張っていたという評価をしている・・前田(俊介)もそうだが、とにかく彼らのようなタイプに対しては、常に要求しつづけることが大事だと思っている・・彼らは、他の選手には不可能なことが出来るチカラを持っているのだから、それを活用しない手はないではないか・・」ってなニュアンスのコメントも、しっかりと忘れなかった。フムフム・・
この試合については、様々なテーマを、ホントにランダムに書きなぐってしまおう。まずゲームの展開だけれど・・
「この試合の内容については、ある意味で満足している・・最下位のチームにしては、とてもよくやったと思っているのだ・・だから、結果に対しては、ちょっと落胆している・・」
ベルマーレ、反町康治監督。わたしも、その見解にアグリーだった。たしかにベルマーレは、最下位のチームとは思えないほど立派なサッカーを展開したのですよ。特に前半は、内容的には互角以上だった。
その(前半の)30分過ぎ。ベルマーレが、立てつづけに、ビッグチャンスを作り出す。エメルソン、阿部吉朗、馬場賢治で構成するスリートップ(ワントップに2人のサイドハーフ)、そして彼らをバックアップする寺川能人、坂本紘司といった面々は、ツボにはまれば、素晴らしいコンビネーション(組織プレー)と個人勝負プレーを上手くミックスした仕掛けを繰り出していく。
そこで作り出された二本のチャンスは、本当に、どうして「それ」がゴールにならないのか分からない・・ってな代物だった。
そんなエキサイティングなシーンを観ながら、「こりゃ・・面白い勝負になるぜ〜〜・・」なんて、ちょっと気持ちが昂(たか)ぶりはじめていた筆者だったけれど、その一分後には、立てつづけにFC東京がゴールを叩き込んでしまうのですよ。
先制ゴールシーンでは、大黒が、全盛期のゴールゲッター感覚を彷彿させてくれた。そして、その一分後には、石川直宏が、先シーズンには見慣れた(でも今シーズンは誰もが忘れてしまった!?)光景を思い出させるような爆発ミドルシュートを叩き込んだ。
そして終わってみれば、FC東京の「3-0」という完勝。それでも、実質的な内容は、そのスコアとは似ても似つかないモノだった。
「たしかに3-0という結果に恵まれたわけだが、特に前半は相手にやられるシーンが連続した・・もしそこで失点していたから、どうなるか分からなかった・・中盤で、ベルマーレの寺川能人にボールを拾われまくったことが、その大きな要因の一つだった・・」
大熊清監督の弁だけれど、たしかにベルマーレは(反町康治監督も言っていたように)とても立派なサッカーを展開した。「プロである我々にとっては、タラレバはなしだけれど・・」と反町さんが言っていたけれど、このゲームの実質的コンテンツは、まさに「タラレバ感覚」に苛(さいな)まれても全くおかしくないモノだったということです。
そんな反町さんに聞いてみた。「それでも、18チーム中、もっとも失点数が多いのがベルマーレであることも確かな事実・・その主たる原因は、何だと思いますか?・・キーワードを用いて、簡潔に表現していただけないだろうか・・?」
まあ・・決して簡潔なコメントじゃなかったけれど、反町さんの答えのなかには、とても大切なファクター(要素)がてんこ盛りだった。そのなかの一つが、シーズン中盤までの失点の内容と、今とでは、まったくその性格が異なる・・というクダリ。
反町さんは、こんなニュアンスのことを言っていた。「シーズン中盤までは、局面で相手の後塵を拝することによって、ディフェンス組織全体が崩れてしまうような事態に陥ることが多かった・・ただ、それ以降は、効果的な組織ディフェンスが展開できるようになってきていると思っている・・もちろん、個人的なチカラで上回る相手がほとんどだから、局面で負けてしまうケースも多い・・ただ我々は、それを、ある程度うまく組織的にカバーできるほどに成長しているのだ・・」
フムフム・・。たしかに、リカルジーニョや石川直宏といった強烈なドリブラーに「ブチ抜かれる」シーンは何度かあったけれど、それでも、ある程度は「組織カバーリング」で凌(しの)げていたっけネ。もちろん印象としては、ドリブルでブチ抜かれ過ぎだ・・なんてコトもあるわけだけれど・・あははっ・・。
ところで、反町さんのコメント。そこでは、「ユニット」という表現が多用されている。
ユニット・・チーム内でのイメージシンクロの発展・・等々。だからこそ、守備でも攻撃でも、「コト」がはじまる前の段階で予想し、アクションを起こしたり、それを(イメージ的に)準備したり出来る。
この試合では、わたしは両方のチームを応援していた。大熊清さんと反町康治さん。2人とも優秀なプロコーチだし、わたしは、彼らが目指す理想イメージに共感している。
ところでザッケローニ。もちろん、まだ何も分からないけれど、チャレンジのないところに発展もない・・という(日本サッカー界に深く浸透しはじめている!?)絶対的コンセプトだけは踏み外さないで欲しいと思いますよ。結果と内容のバランスは大事。でも、結果ばかりに偏ったら、それこそ大変な事態に陥ってしまう。
南アでの日本代表は、決して「無様なディフェンシブサッカー」を展開したわけじゃないからネ。このことについては、下記の後藤健生さんとの「共著」を参照してください。
では今日はこんなところで・・
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またまた、出版の告知です。
今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。
悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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