湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第28節(2010年10月30日、土曜日)

 

かなりモティベーションが減退してしまった・・(Rvs山形, 0-1)

 

レビュー
 
 フ〜〜・・。さて、何をどのよにう書きはじめようか・・

 あっと・・。まず何といっても、素晴らしい集中力で、ゲーム戦術イメージ(ゲームプラン)を最高のカタチでグラウンド上に投影しつづけ、そして立派に結果へとつなげたモンテディオ山形(小林伸二監督と選手)に対して、心からの拍手をおくらなければなりません。

 あのような、忍耐と執念が(要は、強烈で粘り気のある意志が)最後まで途切れなかったことは、賞賛に値すると思うのです。もちろん、彼らが決勝ゴールを挙げたことで、集中力を最後まで高いレベルで維持できたということもあるけれど・・。

 対するレッズ。たしかにゲームを支配し、モンテディオ山形の2倍以上のシュートを放った(レッズ=22本、モンテディオ=10本)。でも結局は、そのうちの一つもゴールに入れることが出来ずに敗れ去った。

 この結果だけれど、わたしは、「実質的なゲーム内容」からすれば、必然的な帰結だったとすること「も」できると思っています。

 もちろん、エジミウソンが放った足や頭でのシュート、セルヒオや原口元気の惜しいチャンスなど、いくつか息を呑ませるシーンはあった。でも、同様に、粘り強いモンテディオ山形にも(そのほとんどがカウンター気味だったけれど・・)決定的なチャンスを作り出された。

 観ているこちらは、明らかに押し込まれている方のチームが時折攻め返し、流れのなかやセットプレーで、「エッ!?・・フ〜〜・・ッ!!」というチャンスを作りだしてしまうモノだから、「こりゃ、いつか交通事故みたいな失点を喰らって守り切られちゃうかもしれない・・」なんていう不安をもつのも自然の成りゆきだったかも知れない。

 もちろん、前節のジュビロ戦と同様に、全体的な「サッカー内容」はよくなっている。でも、セルヒオの「ぬるま湯」プレーに代表されるように、『最後の半歩まで出る!』っちゅう感じじゃなかった。

 とても非論理的な表現で申し訳ないけれど、最後の最後まで食らいつくようにマークしつづけ、身体を投げ出してタックルを仕掛けるようなギリギリの粘りプレー(要は、最後の半歩が出るような強烈な意志!)を魅せつづけるモンテディオ山形(そのディフェンス)に比べ、最終勝負シーンでの「レッズの意志」は、明らかに(何かが・・)足りないと感じたのですよ。

 クロスに合わせるにしても、相手との競り合いにダイナミズム(強烈な意志)を感じない・・決定的パスを受ける動きに「ギリギリの勢い」を感じない・・などなど。

 それこそが、このところのレッズのサッカーで感じられるようになってきていた、勝者のメンタリティー(決定力と予備レルモノも含む・・!?)の絶対的バックボーンを象徴する「グラウンド上の現象」なのですよ。でも、この試合では(もしかしたら前節のジュビロ戦でも!?)ちょっと減退してきていたのかもしれない・・。

 たとえば最前線で守備に入るセルヒオ。守備に入るまではよかったけれど、でもチェイス&チェックの勢いは、まさに「ぬるま湯」。それでは、「次」でのボール奪取を狙うチームメイトにとっては(狙いを絞り込もうとしている彼らにとっては)、邪魔なだけの守備参加じゃありませんか。

 またフリーランニング(ボールがないところでの動き・・パスレシーブ・・味方にスペースを作り出す動き)も、まさにお座なり。つい一ヶ月前に魅せつづけた「素晴らしい意志の積極プレー」は、いったいどこへ行ってしまったのか・・。

 一人でも、そんな「悪性ビールス選手」がいたら、その病気は、天文学的なスピードでチーム全体に感染していくモノなのです。そりゃ、あんな「いい加減なプレー」をしたら、誰だって文句の一つも言いたくなるよね。

 もちろん、部分的には、ワンツーの壁になって、効果的なダイレクトパスを供給したり、爆発的なドリブル勝負を魅せていた。でも、その他の「忠実にやらなければならない攻守のシーン」でのプレー内容が「あれ」じゃあ、全体的なプレーの効果レベルはマイナスだよね。

 セルヒオには、守備での本物のチェイス&チェックや、忠実なパス&ムーブ、爆発的なフリーランニングといった、ボールがないところでのプレーの意味を(繰り返し!)叩き込まなければいけない。

 もちろん、言い聞かせるのではなく、トレーニングで、繰り返し「実践」させる。決して妥協せず、何度も、何度も、それが彼の「イメージ的な環境」として整備されるまで、全力でやらせる。ヘドをはいてもいい。とにかく、フルスプリントの「汗かきプレー」を繰り返させる。そのなかで、自然と(そんな汗かきプレーに必要な)スタミナもついてくるだろうし、そのアクションが当たり前という「イメージ的な環境」も作り上げられていくに違いない。

 わたしは、ヘネス・ヴァイスヴァイラーに、こんなニュアンスのコトを言われた。「良いコーチは、カッコなど気にせず、とにかくしつこく、忍耐力をもって、選手に実践させつづけなければならない・・そのためにコーチも(物理的にも精神的にも!!)しっかりと汗をかく・・それが出来なければ、決して選手に認められることはないし、チームを発展させることもできない・・」

 まあ・・。とはいっても、細貝萌と柏木陽介の『ボランチ(!)』コンビは、いつもの安定したパフォーマンスを魅せたし、後半に登場した高橋峻希にしても、例によってのフッ切れたリスクチャレンジプレーを随所に披露した。わたしは納得していた。だからこそ、結果を出せなかったことが、とても残念だったし、やる気を殺がれてしまった。

 ちょっと、まとまりがなくなってしまった。

 まあ・・良い面と悪い面が混在していた・・それでも結局は、悪い面の代表格である「勝負弱さ」が露呈した・・それは、決勝ゴールを入れられた後の最後の時間帯でレッズが繰り出した攻めに現れていた・・そこでは、「どんなことをしてもゴールを割ってやる!」という強烈な意志が感じられなかった・・サッカーは意志のボールゲーム・・ということかな・・

 とにかく、二試合もつづけて「レッズの勝負弱さ」を見せつけられてしまったことで、ちょっとモティベーションが減退気味の筆者なのでした。今日は、もう書く気がしない。ではまた・・

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 



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