湯浅健二の「J」ワンポイント


2010年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第31節(2010年11月20日、土曜日)

 

あ〜あ、降格リーグと天皇杯を除いて、ほぼ「全部」おわっちゃった・・それでも、あくまでも前向きに、ポジティブに明るくサッカーと格闘する筆者なのだ〜〜!・・(RvsGA, 0-2)

 

レビュー
 
 たしかにレッズがゲームを支配する時間帯も多かったけれど、ゲーム全体を俯瞰(ふかん)して観察すれば、両チームが積極的に仕掛け合う、ハイレベルでダイナミックな「均衡マッチだった」というのがフェアな評価だろうね。でも最後は、ガンバの勝負強さが・・、逆にレッズの勝負弱さが・・際立ってしまった。

 今さら言っても仕方ないけれど、この勝負マッチの雌雄を決した先制ゴール場面で、逆サイドを走り上がる遠藤保仁を、まったくフリーで決定的スペースへ抜け出させてしまったレッズ選手は誰だったのか・・。一瞬の集中切れ・・。それもまた、勝負弱さの本質的なファクターの一つなのです。

 この件については、試合後の記者会見で、フォルカー・フィンケが、その選手をかばっていた。

 ・・彼は、100パーセントの状態ではなかったが、宇賀神がケガで出場できないということもあって、とにかく出来る限りのことはやりたいと先発を買って出てくれた・・そのこともあるから(サッカーは本質的にミスの積み重ねということも含めて!?)、彼のことを責めようとは思わない・・

 まあ、フォルカー・フィンケの思い(心情)は、分かります。でも、厳しいかもしれないけれど、その選手の身体状態が100パーセントの状態ではなかったことと、最終勝負場面での一瞬の集中切れ(気抜け)は、ちょっと次元の違うハナシだよな。

 確かにその選手は、強い意志をベースに闘っていたし(この試合だけじゃなく、平均的に!)攻守にわたって、とても良いプレーを展開している。ただ、ボールウォッチャーになってしまうなど、一瞬、気が抜けた集中切れシーンが多いのも事実。遠藤保仁にフリーで抜け出された失点シーン以外にも、完全な集中切れとしか言いようのないマーキングミス(決定的シーンで相手にフリーで抜け出されてしまう)があった。この試合だけじゃなく・・

 またこの試合では、コーナー(フリー)キックでのマークミスという集中切れシーンも目立っていた。何本あっただろうか・・、中沢聡太やルーカスにフリーでヘディングシュートをブチかまされた場面が・・。

 たしかに中沢聡太やルーカス、はたまた高木和道といったガンバの猛者連中は、高さやパワーに恵まれているだけじゃなく、競り合い場面での経験と巧妙さ(ずる賢さ!?)にも満ちあふれている。身体のあらゆる部位を巧くつかった、ファールギリギリのせめぎ合い。そこで(フォルカー・フィンケも言っていたように)若い岡本拓也がやられてしまうのも分かる(サッカーでは、そんなミスも日常茶飯事という意味合い・・サッカーは、ミスの積み重ね・・)。

 だから準備が大事だし、そこに監督・コーチの仕事内容が問われる・・なんてことを言ったり書いたりするのは簡単だけれど、そんなミスが起きる可能性を出来るかぎり低く抑えるために(そのメカニズムを十分に分かっている)レッズのコーチングスタッフがトレーニングしていなかったはずがないとも思う。

 まあ・・、それは、偶然と必然が交錯する(通常の!)サッカー的な現象の一つだった・・という考え方もできると思うわけです。不確実な要素が満載されたサッカーじゃ、勝つこと(調子が良いとき)もあれば、負けること(調子が悪いとき)もあるサ・・ってな具合だね。

 でも、私は、特にレッズの場合、そんな「細部の現象」にこそ、チームとしてのシュート決定率がとても低いという事実も含めて(!!)いまの彼らの勝負弱さ(勝者メンタリティーの不足!?)の本質的な要素が隠されているかもしれない・・なんて思ったりするわけです。

 ・・サッカーの内容さえ良ければ、結果はおのずとついてくるものなのさ・・あれだけサッカー内容で相手を凌駕し、多くのシュートチャンスを作り出したのに、ツキに見放されて結果を出すことができなかった・・とにかく(フィジカル、テクニック&スキル、戦術的な理解などの)ロジックが全てであり、それさえしっかりとしていれば、おのずと必然性は高まっていくもの・・などなど・・

 どうも私には、いまのレッズが、『強烈な意志を基盤にした極限の積極プレーイメージ』というテーマに取り組んでいく姿勢に足りないところがあると感じられてならないのですよ。

 ・・「ここに出せ〜っ!!」と、強烈な意志を放散する全力スプリントで決定的スペースへ抜け出していくフリーランニング・・味方がシュートを放つシーンで、もしかしたら・・と、ボールがこぼれるかもしれないゾーンに全力で突っ込んでいく忠実な勝負プレー・・などなど・・

 ・・相手がドリブルで突っ掛けてくるシーンで、その突破をケアーしながらも、最後の瞬間に出されるスルーパスに反応しそうな相手選手のフリーランニングも「勝負イメージ」として描写している・・相手のセットプレーで、ゴール前でマークし競り合い相手に勝つために、強烈な意志で食らいつき、最後は、少なくても身体を寄せることで相手にフリーでプレーさせない(ヘディングさせない)・・などなど・・

 そんな「強烈な意志を表現するシーン」は無限にある。いや・・サッカーの場合は、意志の爆発シーンしかない・・とも言える。

 わたしは、攻守にわたって、全力スプリントが十分ではない選手は、自分で仕事を探しだことができない二流プレイヤーだと思っています。全力スプリントが出てくるということは、攻撃でも守備でも、その目的(シュートやボール奪取)を達成するためにやりたいプレー(目標)イメージがあるということだからね。

 まあ、これまで展開してきた「不確実性ファクター満載のサッカーは意志のボールゲーム・・」というテーマの反芻でした。

 ところでガンバの西野監督。今日でリーグ優勝を決めたグランパスに対して、とても興味深い表現をした。

 「グランパスは、負けないことがストロングポイント・・」

 まさに「至言」だね。わたしもそう思う。彼らのサッカーは、決して、今のリーグでベストというわけじゃない・・それでも、決して負けないだけではなく、極小の可能性でも勝ちに結びつけてしまう・・

 そう・・、そんなグランパスの特長のコアにいるのが、言わずと知れたトゥーリオ。ワールドカップでも証明した、その素晴らしい勝者メンタリティーは、今シーズンのグランパスでも存分に存在感を発揮し、チーム全体に「トゥーリオ・マインド」を深く浸透させた・・ということだと思っています。

 とはいっても、日本のサッカー(スポーツ)文化振興というニュアンスも含め、新しいクラブ(フランチャイズ都市)がリーグ優勝を果たしたことには、とても大きな意義があると思っています。名古屋グランパス・・、優勝おめでとうございます・・

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 またまた、出版の告知です。

 今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。

 悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。

 4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。

 出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。

 



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