湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2010年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第33節(2010年11月27日、土曜日)
- またまた連チャンでっせ・・(FRvsR, 1-1)(FCTvsMO, 1-1)
- レビュー
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- すごかったネ〜〜、ゲーム終盤のレッズが、タイムアップのホイッスルが吹かれるまでブチかましつづけた執念のリスクチャレンジ。それは、それは、レベルを超えた「爆発的な闘う意志」だった。だから、フォルカー・フィンケに聞いてみた。
「そりゃ、サッカー選手だから勝ちたいのは分かる・・でも、同点ゴールが決まってからの最後の時間帯にレッズが魅せつづけた、アグレッシブな攻撃姿勢の背景に、ちょっと、レベルを超えた何かがあると感じた・・(ホームで、まだACLの可能性が残されている!)フロンターレが、フルパワーで仕掛けてくるならば分かるけれど、勝ったって、もう何も特別に得られるものはないレッズだから・・それが何だったのか、説明してもらえないだろうか?」
「まあ・・あの現象については、いまのチームが、本当の意味で一つのユニットになったからと言えるかもしれない・・我々は、長いスパンを視野にチーム作りを推し進めてきた・・(同点ゴールを奪ってからの)最後の時間帯では、そんな、積み重ねてきたプレーイメージと意志のバックボーンが表現されたということだと思う・・改革は、一朝一夕には達成できない・・確かな計画性と忍耐が必要なんだ・・その現象については、選手たちが、進化プロセスをより発展させたいという意志を魅せたと表現できるかもしれない・・だからこそ、最後の最後まで、限界まで闘いつづけた・・彼らが魅せた積極的なサッカーは、何も獲得できないことは分かっていても、自分たちが志向するサッカーを最後まで追い求める姿勢がグラウンド上に表現された結果だと思う・・」
フムフム・・。そんなニュアンスのことを言っていたけれど、やっぱり、何か、冷静でロジックに「過ぎる」フォルカー・フィンケの発言なのでした。たまには、もっとエモーショナルに(情緒的に)発言しても、いいんじゃネ〜〜か・・フィンケさん。
例えば・・選手たちが魅せた積極プレーは、何といっても、彼らの感情の素直な表現だった・・誰かに対する怒りの爆発!?・・志向してきたサッカーの方向性の正しさを(誰かさんに対して!?)証明してやるという意志の発露だった!?・・などなど・・
先週の土曜日に出演したテレビ埼玉の「レッズナビ」では、フォルカー・フィンケについて、こんなニュアンスのことを言った。それは、わたしの本音でした。
・・フォルカー・フィンケは、とても優秀なプロコーチ・・とはいっても、これまで私が、言ったり書いたりしてきたように、どうも、勝負に対して淡泊だという印象が残ることも事実・・実際には違っていたとしても、サッカーの内容に対する「こだわり」が強調され過ぎることで、事実とは違う印象が定着してしまったのかもしれない・・コーチは、それぞれのチーム事情に応じて、サッカーの内容と勝負へのこだわり度を、ほどよくバランスさせるようにチームをマネージしなければならない・・
・・もちろん私も、フォルカー・フィンケが、勝負に「も」強くこだわっていることは知っている・・だから、そのことを、チーム内でだけ強調するのではなく、外部にも強く発信しなければならない・・とにかく、あれだけ良い(方向性の)サッカーを志向し、実践しているのに、それが結果につながっていないことが残念で仕方ない・・
(フォルカー・フィンケが監督をつづけるべきかという質問に対して)・・もちろん、つづけるべき・・彼は、とてもインテリだし、すぐれたパーソナリティーにも恵まれている・・だから、自分が冒した間違いを、効果的に(そして素直に!?)修正するだけの柔軟性も持ち合わせている・・わたしは、彼が、優れた学習能力を備えていることを知っている・・
・・とにかく、彼が志向してきたサッカーの方向性は正しいし、若手の育成(レッズの世代交代)にしても、若手に実戦のチャンスを与えつづけることで、本当の意味で彼らをブレイクスルーのベクトルに乗せたことは確かな事実・・今ここで、彼がレッズと袂(たもと)を分かつのであれば、これまでの蓄積をベースに、チームが次の段階へステップアップしていくプロセスが阻害される可能性が大きくなる・・それは、何としても残念だ・・
レッズナビだけれど、今までのアーカイブも含め、ユー・チューブで見られなくなってしまった(これまでは、過去の番組を見られたのだけれど・・)。だから、番組で発信した「わたしの主張」を、より明確に、コラムでもアップしておくことにした次第です。
レッズだけれど、来年の「ACL」参加の権利は、もう天皇杯優勝しか残されていません。追い詰められた!? いやいや、このところのゲーム内容を見ていれば、ターゲットが絞り込まれたからこその勝負強さを発揮してくれるに違いない・・と、確信レベルがアップしている筆者なのです。
わたしは、例によって、ラジオ文化放送で、天皇杯決勝(元旦)の解説を担当します。そこまでレッズが生き残れるか・・。もちろん彼らが決勝に残ったとしても、あくまでもニュートラルな視点で解説しますが・・ネ。
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さて次は、FC東京対モンテディオ山形。
こちらも、エキサイティングな見所がグラウンドからあふれ出すような面白い勝負マッチへと盛り上がっていきました。でもサ、ゲーム前の両チームが置かれていた状況には、月とスッポンほどの違いがあったのも事実だから、まずそのポイントから書きはじめようか。
要は、降格リーグ真っ只中で、どうしても勝ちたいFC東京・・それに対し、前節で一部残留を決めて一息いれたモンテディオ山形・・っちゅう構図のことです。
だから誰もが、FC東京がゲームを支配し、モンテディオ山形を圧倒すると予想していた。たしかに立ち上がりの数分は、まさに、そんな展開になった。でも、10分も過ぎたあたりからゲームの流れ(ゲームの構図)が徐々に変化しはじめるのですよ。モンテディオ山形が、とてもクレバーで粘り強い強固なディフェンスブロックを基盤に、機を見て攻め上がり、人数をかけた危険な仕掛けを繰り出していくようになったのです。そして、FC東京ディフェンスがタジタジとなる場面まで作り出してしまう。
素晴らしい集中力だった。チーム総合力では、FC東京に一日の長はあるけれど、それでも、自信にあふれたリスクチャレンジを繰り返すモンテディオ山形のサッカーも、FC東京の自信を揺るがすほどの確信に満ちあふれていた。ホントに、ちょっとビックリした(山形の皆さん、スミマセン!)。
モンテディオ山形の小林伸二監督は、わたしが投げた、「一部残留を決めた後に気が抜けたサッカーをやったらボロボロに言われたり書かれたりするはず・・選手たちにとっては、そのことが一番イヤなはず・・そしてそれが、あれほどの立派なサッカーが出来たことの最大のモティベーションだったのでは??」という質問に、こんなニュアンスのコメントをくれた。
・・選手たちは、(自分たちのチカラが十分ではないことを自覚していることで!?)手を抜くと痛い目に合うことを、経験も含めてよく知っている・・彼らは、最後まで気を抜かず、忍耐強くプレーするからこそ、ギリギリのところで勝ち切れるということを体感として知っている・・彼らは、真面目にサッカーに取り組むことでしか勝ち点を積み重ねていけないことを知っている・・
まあ・・そういうことだね。
モンテディオ山形は、後半から交替出場した田代有三がヘディングでブチ込んだ同点ゴールの後、ゲーム終了間際にも決定的なチャンスを作り出した。味スタに詰めかけた(山形から馳せ参じたサポーターの方々を除き)誰もがフリーズしたに違いない。わたしも、一瞬だったけれど、全身が硬直した。
サッカーの全体的な内容ではFC東京に一日の長があった。でも「勝負」という視点では、粘りのサッカーをやり通したモンテディオ山形に軍配が上がっていたのかもしれない。フムフム・・
これで、降格リーグの最後の参加チームは、ヴィッセル(最終戦はアウェーで対レッズ)、FC東京(最終戦はアウェーで対サンガ)、そしてベガルタ仙台(最終戦はホームで対フロンターレ)の三つのクラブに絞り込まれました。まあベガルタは、もし最終戦で敗れたとしても、得失点差を考えれば、当確とするのが妥当ですかね。ということで、実質的には、ヴィッセルとFC東京の一騎打ちということになりそうです。
その、一騎打ちとなるリーグ最終戦。数字的にも(勝ち点で1ポイント、得失点差でも9ポイント、FC東京がリードしている!)、また対戦相手的にも、FC東京が有利だと考えるのが普通だろうね。でもネ・・
そう・・そこにこそ落とし穴が潜んでいるのですよ。何せ、ヴィッセルには、ガンガン攻めまくって(たくさんのゴールを奪って)勝つしか選択肢がないんだからね。そのことこそが、もっとも大きなアドバンテージだったりして・・。それに対してFC東京には「考える(深層心理で発生する避けがたいイマジネーション!?)の余地」があるのですよ。
サッカーでは「二点リードという状況がもっとも危険・・」ってよく言われるじゃありませんか。もし「追いかけゴール」を奪われて一点差に詰め寄られたら、急にプレーに余裕がなくなってしまう。そして、そんな心理プレッシャーによって、プレー内容が縮こまり自滅の道を辿(たど)っていく・・。ホンモノの心理ゲームであるサッカーではよくあるパターンです。
まあ、FC東京、大熊清監督のことだから、万全の心理・精神的な準備をしてくるでしょ。でも、最後の最後は、何といっても(選手個々の自覚も含む!?)リーダーシップの内容が問われるよね。だから、チーム全体のイメージトレーニングだけじゃなく、場合によっては、チームのリーダーに対する個人的な心理マネージメントだって必要になるかもしれない。もちろん「やり過ぎ」はマイナス効果になる・・。難しいネ。
とにかく、リーグ最終節もまた、とても素敵な学習機会になりそうな予感がします。もちろん私は、レッズ対ヴィッセルの勝負マッチを観戦する予定です。さて〜〜・・
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またまた、出版の告知です。
今回は、後藤健生さんとW杯を語りあった対談本。現地と東京をつなぎ、何度も「生の声」を送りつづけました。
悦びにあふれた生の声を、ご堪能ください。発売翌日には重版が決まったとか。それも、一万部の増刷。その重版分も、すでに店頭に(ネット書店に)並んだそうな。その本に関する告知記事は「こちら」です。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓しました。
4月11日に販売が開始されたのですが、その二日後には増刷が決定し、WMの開幕に合わせるかのように「四刷」まできた次第。フムフム・・。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。岡田ジャパン(また、WM=Welt Meisterschaft)の楽しみ方という視点でも面白く読めるはずです・・たぶん。
出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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