湯浅健二の「J」ワンポイント


2011年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第15節(2011年6月15日、水曜日)

 

「勝負の流れ」と「実質的なサッカー内容の流れ」・・(ARvsFR, 0-5)

 

レビュー
 
 すごいネ〜、フロンターレ・・終わってみれば、「サッカーは爆発だ〜っ!」の5ゴールだぜ・・

 ダイナミックで安定したディフェンスをベースに(高質な守備意識=強烈な意志のチカラ=をベースに!)、本当に素晴らしいサッカーを展開したフロンターレ。だから結果は、まさに順当に奪い取った勝利と言える。でも、勝負の流れという視点じゃ、「ちょっと・・ネ」という部分もあった。だから相馬直樹監督に聞いた・・

 「たしかに時間が経つにつれて、高い守備意識の素晴らしいディフェンスを基盤に、ハイレベルなサッカーを展開した・・ただ、そんな良いペースのサッカーに至るまでには、紆余曲折があったと思う・・前半キックオフ直後の1分間で、立てつづけに二回も決定的ピンチに陥った・・それだけじゃなく、前半34分には、深谷からの一発ロングパスカウンターからイ・チョンスに抜け出され、GKと一対一という決定的ピンチ場面も作り出された・・その時点で、アルディージャの3-0のリードという展開でもおかしくなかった・・そのこと(勝負のアヤ)についてコメントをいただけないか?」

 「おっしゃる通り、ゲームの立ち上がりには決定的ピンチに見舞われた・・たしかにフロンターレの場合、全体的にはゲームを支配していながら、少ないピンチに失点して劣勢に立たされてしまうというケースが多い・・集中力を常に高いレベルで維持するというテーマだと思うが、結果に浮かれることなく、その課題を突き詰めなければいけない・・」

 相馬直樹監督は、そんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。

 まあ・・ネ、そんな「微妙な勝負のアヤ」という視点じゃ、フロンターレはツキにも恵まれたとも言えそうだ。とはいっても、全体的なサッカー内容では、(先制ゴールを奪い取るまでの時間帯も含めて!)アルディージャを凌駕していたことも確かな事実だった。

 要は、ゲームのイニシアチブを握っていたということだけれど、その絶対的なバックボーンは、前述したとおり、一人の例外もない「優れた守備意識」にあったと思う。

 田坂祐介や山瀬功治はいうまでもなく、最前線の矢島卓郎や小林悠にしても、とにかく積極的にディフェンスに参加してくる。それも、ボールとは関係ないゾーンでの、とても大きなエネルギーが必要とされる粘り強い「汗かきプレー」も含めて。とてもインプレッシブだった。

 そんな強い意志(守備意識)を基盤にしているからこそ、フロンターレでは、まさに「ボール奪取イメージが有機的に連鎖」しつづける組織(協力)ディフェンスが、小気味よい機能性をみせつづける。観ているこちらが、自然と舌鼓を打っているのも頷ける。

 もちろんアルディージャの守備も高質だけれど、彼らの場合は、どちらかといったら、「より強く」次のカウンターをイメージするようなディフェンスの傾向が強いからね。もちろん、セーフティーファーストで受け身に戻る・・というディフェンスではなく、あくまでも、リスクチャレンジも含む、積極的なボール奪取ディフェンスではあるけれど・・。

 それに対してフロンターレの守備では、ゲーム全体のイニシアチブを握ることを明確なターゲットに、リスクチャレンジもテンコ盛りの「積極ボール奪取プロセス」を積み重ねていく。

 たしかに両チームの守備の傾向については、微妙な「ニュアンス的差異」ではあるけれど、わたしのイメージでは、やはり、アルディージャの守備とフロンターレのボール奪取プロセスとは、ちょっと違うというイメージなのです。フムフム・・

 そんな、ゲームのイニシアチブを掌握しようとする(!?)素晴らしく積極的なフロンターレの守備(ボール奪取プロセス)。その中心にいたのは、言わずと知れた、稲本潤一でした。このことについては、今シーズン開幕ゲームの「Jリーグ・コラム」も参照して下さい。

 そのゲームでは、稲本潤一のプレー内容に、まったく納得できなかった。ヨーロッパの友人たちのイナモト評価も含め、彼が秘める素晴らしい能力をしっかりと理解しているからこそ、不満だった。だから、「イナモト〜〜・・アンタは、もっと出来るぞ〜〜・・もう一旗揚げようぜ!・・ガンバレ〜〜イナモト〜・・」なんていうコラムを書いた。

 だから、このゲームでの稲本潤一の頑張りが、本当に嬉しかった。強烈な意志を(意地を!?)ベースにリキを入れれば、やはり彼は、まだまだ日本を代表する守備的ハーフ(まあ・・優れたボランチ)なのだ。

 ・・相手(次のパスレシーバー)を追い込むクレバーな(意図的な)ポジショニング・・そこには、パスを出させるという意図も隠されている・・そして、ココゾッ!のボール奪取チャンスにブチかます、まさに世界レベルといっても過言ではない、強烈でフェアなボール奪取勝負(スライディングタックル)・・そして、「そこ」からの爆発的な仕掛けアプローチ・・

 ・・また、味方のミスを予測したクレバーで忠実なカバーリングも特筆・・もちろん攻撃に参加すれば、例によってのパワフルでスキルフルな(相手にとって)危険なプレーをブチかます・・

 ・・それにこの試合では、積極的に声も出していた・・スタンドにも、「集中しろ〜っ!!」っちゅう稲本潤一のゲキ(刺激)が明確に響きわたってきた・・中盤でのリーダーシップが光り輝く・・彼のパートナーの柴崎晃誠が、安心して攻守にわたるリスキープレーにもチャレンジしていけるはずだ・・

 「ここからの連戦は厳しい・・確かにこのゲームでは、最後までしっかりと集中し、走りつづけたけれど、大勝のあとの次のゲームが難しい・・もちろん同じような積極サッカーを展開するのが目標だが、それは簡単じゃない・・とにかく、次に向けて、しっかりと(心理的な部分も含めて)マネージしていきたい・・」

 相馬直樹監督が、そんなニュアンスのことを言っていた。まさに、その通り。サッカーは、究極の「相対(心理)ゲーム」でもあるわけだからね。もっと言えば、いかに相手を「うまく勘違いさせるのか」という、だまし合いのボールゲームとも言える。

 だからこそ、強烈な意志をベースに、主体的にリスクへも積極的にチャレンジしていかなければならないのですよ。でもサッカーは、ミスをしないようにプレーすることも簡単なわけだからね。だからこそ、究極の心理ゲームとも言える。フ〜〜・・難しいネ。

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 ところで・・

 私の、とても近い友人ご夫妻が、イタリアン・テイクアウトのお店をはじめたので、紹介させてください。先週は、ピアダやパスタを食してきた。頬(ほお)が落ちた。店はチェアも用意しているから、その場で食べられまっせ。

 お店は「PaninoNino」といいます。友人の奥様が(調理も含む)実務を切り盛りしているのですが、その友人は建築(工業も!?)デザイナーで、長くミラノで仕事をしていた。イタリアサッカーファンのはず。彼がイタリア(ミラノ)で仕事をしていた当時、ACミランの監督を、アルベルト・ザッケローニさんが務めていたということです。

 奥さんが、「ザッケローニさんは、ピアダが大好きだと聞いているから、お越し下されば大歓迎しますと伝えてくださいな・・」と上品に言われたけれど、そう簡単にザッケローニと立ち話するわけにゃいかないよね。あははっ・・

 ということで、一度お試しあれ。ホント・・美味しいよ・・

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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。