湯浅健二の「J」ワンポイント


2014年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第18節(2014年8月2日、土曜日)

 

どうも、うまく勝利の流れに乗りきれないレッズ・・(レッズvsヴィッセル、 2-2)

 

レビュー
 
「そうです・・その通りです・・」

私の問いに、ヴィッセル安達亮監督が、即座に、そう反応した。その質問は・・

・・いま安達さんが言われた(ハーフタイムでの!)ハナシは、とても興味深かったのだが・・

・・安達さんが、後半は前掛かりでディフェンスを仕掛けていくと指示するのと同時に・・でも、最初の15分は、少し後方から仕掛けていこうかというニュアンスも匂わせた・・

・・そこで、すかさず選手の方から、「いや監督、最初から行くべきです!!」という意見が飛んだということだが・・その反応を(心理マネージャーとしての!?)安達さんは、してやったりと、頼もしく感じたのではないか?・・

その質問には、私が、安達亮の心理マネージメントを知っているという背景要因もあった。もちろんそれは、選手たちに、自ら考え、リスクにもチャレンジしていく主体的な積極プレー姿勢を植えつけるというものでっせ。

だから安達亮が、即座に、「その通り!!」と反応したのも頷ける。そして彼は、例によって真摯に、こんなニュアンスのコメントをつづけてくれた。曰く・・

・・私の指示に対して、選手の方から、後方から(注意深く!?)仕掛けていくのでは、レッズに、いつまでもボールをキープされつづけてしまう・・後半は、 最初から、前からアグレッシブに(ボール奪取勝負を!)仕掛けていきましょう(!)という意志が飛び出してきたんですよ・・

・・私は、常日頃、選手たちの主体的な意見に対して「聞く耳を持つ」という姿勢でマネージしている・・その姿勢が、とても大事だと思うし、それがあったからこそ、選手たちの方から、「それじゃ、スイッチが入らない!」という強烈な意志が放散されたのだと思う・・

フムフム・・いいね。

とにかく、この試合でのヴィッセルが、立派な闘いを展開したのは確かな事実だよね。

対するレッズ。

彼らのサッカーを反芻しはじめたら、まず、「あれほどの追加ゴールチャンスを作り出していたのに・・」なんていうタラレバの思いが、まず脳裏を支配しちゃうんだよ。

そう、とても不健康な情緒。

皆さんもご覧になった通り、レッズは、先制ゴールの後でも、積極的に追加ゴールを奪いにいったんだよ。そして何度も、チャンスを作り出した。そこでレッズが魅せた積極的な意識と意志には、過去からの反省も明確に感じられた。でも・・

そう、結局ゴールを奪えず、逆にヴィッセルに逆転ゴールまで(それも高橋峻希に!!)ブチ込まれてしまった。

もちろん、後半ロスタイムに飛び出した那須大亮の同点ゴールは、柏木陽介のスーパーなクロスも含めて素晴らしかったし、感動的でもあった。でも・・

そう、その同点ゴールは、ゲームの実質的な展開からすれば、まさに「唐突」なモノだったんだよ。

もちろん、コンビネーションから作り出した、興梠慎三の絶対的チャンスもあったけれど、実質的なゲーム展開からすれば、多分、観ている方の大部分は、敗戦を覚悟していたに違いないと思うわけだ。

そう、「あの」ゲーム展開ではね・・というニュアンス。

そこで特筆だったのが、ヴィッセルが9人で構築した、強固な守備ブロック。

対するレッズは、とにかくボールを動かして攻め込もうとする。

もちろん、コンビネーションを主体に決定的スペースを攻略していこうとするんだ。でも、相手が、すべてのスペースを埋めつくしているから、ボールがないところでの動きが、どうしても止まり気味になってしまうんだ。

そうなったら、タテへ仕掛けていくのが、ままならなくなるのも道理。何せ、ボールがないところで、決定的スペースへ走り込むような決定的フリーランニングが出てこないんだから。

また、決定的フリーランニングが出てきたときは、タイミングや体勢が悪く(また、そのフリーランが見えていなかったことで!?)決定的な勝負タテ(スルー)パスが出ないというチグハグ。

そして、最前線プレイヤーの足許への「仕掛けパス」から、なんとかコンビネーションを機能させようとする、ゴリ押しの仕掛けを繰り返すんだ。でも、もちろん、「あんな狭いスペース」で、トントント〜ンっていう感じのコンビネーションを機能させるのは至難の業だよ。

まあ、前述したように、1度だけ、興梠慎三のフリーシュート場面はあったけれどね・・。

この決定的シュートチャンスだけれど、たしかに勝負の流れという視点では、それ(チャンスを作り出したこと!)はそれで、大きな成果ではあった。

でも私は、そんなチャンスを作り出したにもかかわらず、もっともっと「仕掛けに変化」をつけなければいけない・・と、心配の方が先に立っていた。

・・もっと、突貫小僧「関根貴大」のドリブル勝負をイメージしなければ・・もっと、放り込みから「こぼれ」たセカンドボールを狙う仕掛け「も」イメージしなければ・・

たしか、1度だけ、純粋な「放り込み」から、チャンスができたよね。だからこそ、もっと、もっと・・って思ったわけだ。

もちろん、柏木陽介のクロスから那須大亮が送り込んだヘディング同点ゴールは、完璧に最終勝負スポットをイメージした、スーパーなコンビネーションだったけれど・・ネ。

もちろん、突貫小僧のドリブルや放り込み「ばかり」になってしまったら論外だけれど・・サ。

とにかく、(タテへ仕掛けていく!!)パス・コンビネーションを主体にしながらも、そのなかで、仕掛けの変化をミックスすることが大事なんだよ。特に、相手が「守りに入った状況」ではネ。

いま、その同点ゴールシーンを見直しているけれど、那須大亮は、最初、ファーサイドの大外へ出ていくアクションから(そちらの方向をウデで指し示していた!!)、最後の瞬間に、スッとニアポスト方向へ、走り込む方向を変えた。

これは、柏木陽介と那須大亮に聞くしかないけれど、「あの状況」では、柏木と那須が「アイコンタクトをした瞬間」に、2人の最終勝負イメージが完璧に「シンクロ」したということなんだろうね。

そう、最後の瞬間(柏木陽介がボールに目を落とした瞬間)に、那須大亮が、走り込む方向をチェンジしたんだ。

でも、まあ、大外のファーサイドスペースにクロスを送り込んでも、ゴールするのが難しいのは分かり切っていたから、那須大亮の、ウデを使った「大袈裟なジェスチャー」は、相手のディフェンスイメージを攪乱させるフェイントだったんだろうね。

もちろん柏木陽介も、一発勝負スポットは「そこ」しかないと、確信をもって、ニアポスト方向のスペースへスーパークロスを送り込んだっけ。

あ・うんの呼吸。ちょっと感動的だった。

この結果、グランパスに勝利した鳥栖が、総得点数で、再びトップを奪い返した。面白いネ〜。これからも、血湧き肉躍るリーグ戦を心から楽しもうじゃありませんか。

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ところで、ブラジルW杯に、後藤健生さんと「スカイプ」を通して繰り返したディスカッションをまとめた、ライブ感あふれる「ナマ対談本」が出来上がりました。

その新刊については、「こちら」をご参照ください。ではまた・・

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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