湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2014年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第19節(2014年8月9日、土曜日)
- レッズは、もっと個の才能をブレイクさせなければならない・・(フロンターレvsレッズ、 2-1)
- レビュー
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- フム〜〜・・
両チームが、攻守にわたって、ものすごくハイレベルな「ギリギリの勝負プレー」をブチかましつづけたエキサイティングマッチになった。だから、評価は、とても難しい。
もちろん、いまの「J」では、疑う余地なくトップレベルの勝負マッチだったことは言うまでもない。
まあ、全体的なゲームの流れの「勢い」と、「サッカーの質と量(≒内容)」という視点では、レッズに、ほんの少しだけアドバンテージがあったとは思うけれど・・。
要は、ボール奪取の内容と決定的なチャンスの質と量という視点だ・・ね。
とはいっても、最後の時間帯にフロンターレがブチかました(必然の!)カウンターチャンスは、内容評価のなかには入れないでおこうかな。
何せ、レッズが一点を追いかけていた「その状況」では、ロジックとはかけ離れた、心理的、物理的な「メカニズム」が働いていたわけだからネ。
とはいっても、ここが微妙なんだけれど、ゲームの流れのイニシアチブを(特に後半!)レッズに握られていたように「見えた」フロンターレだけれど、勝負
(カウンターに対する自信!?)という視点じゃ、その展開が、フロンターレの狡猾なワナだった・・なんていう見方もできるよね。
フ〜〜・・難しい。
そのこともあって、風間八宏に、二つの質問をぶつけた。
一つは・・
・・組織サッカーに個の勝負プレーを効果的にミックスしていくという視点じゃ、明確に、フロンターレにアドバンテージがあると思うのだが・・
もう一つが・・
・・スリーバックには色々なタイプがあるけれど、風間さんの場合は、どのようなイメージで機能させようとしているのだろうか?・・
・・前半最初の時間帯でも、後半でも、両サイドバック(サイドハーフ)の押し上げが足りないことで、うまく守備と攻撃のバランスを取れずに少し押し込まれたように感じたのだが・・
この二つの質問について、風間八宏は、基本的に、同じニュアンスのコメントをしてくれた。要は・・
・・選手たちの判断がプライオリティーであり、彼らは、「それ」に基づいて、主体的にサッカーを作り出している・・組織プレーと個人の勝負プレーがうまくバランスしているというのも、その結果だと思っている・・
それに、こんなことも言っていた・・
・・スリーバックの機能性についてだが、これもまた、全ては「個の判断」に拠るというのが基本だ・・我々が取り組んでいるのは、いかに個人にとっての価値とチームにとっての価値を、高い次元でシンクロさせるのかというテーマなんだ・・
フムフム・・いいね・・
あっと・・チト前置きが長くなってしまった。
ということで、ここからは、一つのテーマに集中しようと思う。それは、フロンターレがブチかましつづけた、危険なカウンター。
言いたいことは、フロンターレには、レナト、中村憲剛、小林悠、大久保嘉人などなど、個の勝負で「も」、確たる実効を発揮できる(強烈な意志を表現できる!)選手がそろっている・・っちゅうことです。
何せ、カウンターが成功するかどうかは、その大きな部分を「個人の勝負能力」が占めているわけだからね。
たしかに、フロンターレには、組織サッカーの実効レベルをアップさせられるだけの「個の勝負能力」も備わっているけれど、それに対してレッズは・・??
私は、実効あるドリブル勝負を仕掛けていける「能力」は備わっているのに、それが、うまく表現できていない(ミスすることを怖がっている!?)・・と思っている。
例えば、梅崎司。
前にも書いたけれど、彼は、素晴らしいドリブル勝負能力という天賦の才を秘めている。でも、(気持ちが!?)中途半端だから、失敗してしまうケースが多い。
そして、次のドリブル突破チャレンジでは、「もっと」手足が縮こまってしまう。それじゃ、はじめから失敗するのは目に見えているじゃないか。
どうして彼は、秘めたる才能に、もっと自信をもたないのだろうか。ミスをすることが怖いんじゃ、プロ選手なんて辞めた方がいい。
このことは、交替して出場した関口訓充にも言える。
何度彼が、1対1の勝負で「タテへ抜け出すチャレンジ」に逡巡して切り返し、バックパスや横パスに「逃げる」シーンを見せつけられたことか。
そりゃ、フラストレーションが溜まるでしょ。彼には、「タテへ突破していけるだけのドリブル能力」が備わっているにもかかわらず・・だからね。
それに対して左サイドの宇賀神友弥。彼は、「いくべきトコロ」では、勇気をもって「タテへ!!」チャレンジしている。
だからこそ、何度か、決定的なクロスも送り込めたし、それを期待できるからこそ(!!)突っ込んでいった仲間もいる。
また、あの突貫小僧だって(関根貴大のことだよ!)、何度失敗しても、チャレンジをつづけるでしょ。だからこそ相手は怖がるし、味方にとって頼り甲斐のある存在なんだよ。
それに対して、梅崎司や関口訓充は、怖くない。もちろん彼らだけじゃないけれど・・
レッズには、相手を怖がらせられるだけの「個の勝負の才能」に恵まれている選手がいる。彼らには、「それ」を、勇気をもって(フッ切れた強烈な意志をもって!!)、表現する義務がある。そのことが言いたかった。
それが出てくれば、いま彼らが表現している、素晴らしく高質なコレクティブ(組織)サッカーのパフォーマンスが、何倍にも膨れ上がるに違いない。
とにかく、ミスを恐れる・・なんていう「守りの姿勢」じゃ、何も生みだせない。何せサッカーは、望めば、まったくミスをしないプレーだって出来るボールゲームなんだからね。
もっと、もっと、「何か」を、とことん追求しつづけなければならない。それがなければ、ホンモノの「ブレイクスルー」を手にすること等、夢のまた夢なんだ。
そう、本物のプロ選手としてね・・
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ところで、ブラジルW杯に、後藤健生さんと「スカイプ」を介して繰り返したディスカッションをまとめた、ライブ感あふれる「ナマ対談本」が出来上がりました。
その新刊については、「こちら」をご参照ください。ではまた・・
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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