湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2014年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第21節(2014年8月23日、土曜日)
- レッズは、この試合でも、勝者メンタリティーのエッセンスを深められた・・(FC東京vsレッズ、 4-4)
- レビュー
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- いや〜、ホント、手に汗握りつづけたじゃありませんか。
もちろん内容についての評価は、戦術的な分析の「視座」によるから千差万別だろうけれどサ・・。
私は、FC東京が展開する、とても勝負強いチーム戦術と、レッズが展開するオーソドックス組織サッカー(まあ攻撃的なコレクティブサッカー!)がぶつかり
合った、エキサイティングなエンターテインメントマッチを観ながら、以前の、70年代、80年代に展開された(!?)ドイツ対イタリアのゲームを思い出し
ていましたよ。
攻撃的なディフェンスをベースに、(力強く前へ!?)攻め上がっていくドイツ。
それに対して、しっかりと守備ブロックを組織し、冷静に、そしてクレバーにボールの奪い返しポイントを探りながら、次の(ショート)カウンターを強烈に意識しつづけるイタリア。
フムフム・・
FC東京は、抜群に強くなっている(サッカー内容が進化している)・・と思う。
そんな勝負強いサッカーを観ながら、監督マッシモ・フィッカデンティのウデは、相当なモノだ・・と思っていた。
人数を掛けて攻め上がりながらも、あるところで、バランスを強烈に意識しながらポジショニングを調整する。そう、リスクを取り過ぎることなく、バランスよく最終勝負を仕掛けていくことで、次の守備に備える・・!?
別な表現をしたら、FC東京のサッカーは、相手にボールを奪い返されたところからスタートする(!)・・と言っても過言じゃないかもしれないね。
素早い攻守の切り替えはもちろんのこと、そこからスッと下がり、最短の時間でディフェンスの組織ブロックを築いてしまう。
でも、決して、守備ブロックを強化するために下がり過ぎるというわけじゃない。あくまでも、積極的な(できるだけ高い位置での!)ボール奪取プロセスをイメージした「組織作り」なんだよ。
フォーバックの前に三人の守備的ハーフが並び、その前に二人のサイドハーフがポジションを取って、前線でボールを追うワントップ(ケガで交替した平山相太の後はエドゥー)と協力する・・ってな具合。
とにかく彼らは、本当によくトレーニングされている。
レッズのボールホルダーへは、スッ、スッと、まず一人は寄せていく。でも、その寄せ方は、シチュエーションによって大きく異なっている。
(最前線からのスプリントも含めた!)全力チェイスをする場面もあるし、「軽く」寄せるだけ・・という場面もある。
でも彼らは、常に「次の勝負所」を強烈にイメージしている。
要は、レッズの「次のボールの動き」を、自分たちが主体になって、うまくコントロールしようとしているっちゅうわけだ。
もしレッズが、その「ワナ」にはまろうものなら、「次のパスレシーバー」が、何人ものFC 東京選手に取り囲まれてボールを失っちゃうのは言うまでもない。
この、組織作りからスタートする「ディフェンスアクションの集散」が、秀逸なんだよ。
そして、ボールを奪い返したら、脇目も振らずに、タテのスペースへボールを送り込むんだ。
もちろん「そこ」には、武藤嘉紀、平山相太、河野広貴といったオフェンスだけじゃなく、ケースバイケースで、サイドバックが飛び出していったり、米本拓司や(この試合では)羽生直剛といったハーフも飛び出していく。
FC東京は、アイコンタクトなんてないんじゃないか・・とまで感じさせられるくらいに勢いよく「忠実」に、そして素早いタイミングで、タテのスペースへボールを送り込んでいくんだよ。
その徹底度は、まさに世界レベル。イタリアの真骨頂!? まあ、そうとも言える。
特に80年代には、ドイツの友人たちと、そんな「イタリアのツボ」について、繰り返し、深いディスカッションを展開したモノだった。
FC東京を観ながら、そのときのことを、懐かしく思いだしていたっけ。
もちろんFC東京は、前述したけれど、決して、受け身に下がって守備ブロックを強化しようとしているわけじゃないよ。あくまでも攻撃的に、高い位置でのボール奪取をイメージしながら互いのポジションバランスを執っているんだよ。
だからこそ、「あんな」素晴らしく危険なショートカウンターも繰り出せるっちゅうわけだ。
特に前半。私は、レッズが、あれ以上失点しなくてラッキーだったと思っていたよ。
そこでのレッズは、まさに、FC東京のツボに、ズボッとはまり込んでいたからね。
彼らは、FC東京ディフェンスがイメージする(うまく誘い込まれるように!?)足許へのタテパスを出し、それを「かっさらわれ」て、ものすごく危険なショートカウンターをブチかまされていたんだ。
足が止まった状態でタテへ仕掛けていくんだから、東京ディフェンスのツボにはまっちゃうのも道理・・だったんだよ。
でも・・
そう、後半。
そのバックボーンは何だったんだろうね・・。前半で、うまく「3-2」まで迫れたこともあったんだろうし、ハーフタイムにミハイロから効果的な指示もあったんだろうけれど・・。
とにかく、後半のレッズは見違えちゃったんだよ。この、前半と後半のサッカー内容の「差異の本質」は何だったんだろうか??
もちろん、その絶対的なベースは、意志だったに違いない。
このままでは帰れない・・絶対に勝ち点を奪うぞ・・ってな、強烈な意志。
そのこと(意志の内実!)は、ボール奪取プロセスだけじゃなく、攻撃での、ボールがないところでの動きの量と質にも如実に現れていた。
だからこそ、前半のような中途半端な(止まった足許への!)タテパスじゃなく、強烈な意志(勢い)が込められたパス&ムーブ&コンビネーションも出てきたし、うまく組織された東京ディフェンスのウラのスペースも突いていけるようになった。
実は、後半も、前半のように、意志のパワーが欠如し、腰の引けた「中途半端」なプレーに終始してしまうんじゃないだろうか・・って心配していたんだ。
でも、違った。だからとても頼もしく感じ、こちらのマインドも、彼らの「勝者メンタリティー」を楽しめるまでに回復していた。
たしかに勝ち切ることはできなかったけれど、レッズ選手たちは、この試合から、勝者メンタリティーにとって決定的に重要になってくる「確信」を、より深めることが出来たと思う。
そう、意志さえあれば、おのずと「道」が見えてくる・・という普遍的コンセプトに対する確信である。
それにしても、「あの」前半の河野広貴の4点目が決まっていたら大変なコトになっていた。
だからこそ、この試合も、西川周作に感謝しなけりゃいけない。
まあ、とにかくレッズは、このギリギリの勝負マッチからもまた、勝者メンタリティーを強化していくための、とても大事なエッセンスを得ることができた・・と思っている筆者なのであ〜る。
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ところで、ブラジルW杯に、後藤健生さんと「スカイプ」を介して繰り返したディスカッションをまとめた、ライブ感あふれる「ナマ対談本」が出来上がりました。
その新刊については、「こちら」をご参照ください。ではまた・・
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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