湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第11節(2015年5月10日、日曜日)
- 素晴らしい組織サッカーを展開したアントラーズ・・また、FC東京の勝負のツボも光り輝いた・・(FC東京vsアントラーズ、0-1)
- レビュー
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- 前半と後半でゲームの流れが大きく変わってしまうといった、とても興味深い「勝負マッチ」になった。様々な意味合いで、とても楽しめた。
楽しめた・・と書いた背景には、前半のアントラーズが魅せた「高質なダイナミックサッカー」と、後半にFC東京が魅せた、「勝負至上」の必殺セットプレーがあった。
前半のアントラーズは、チーム全体が、攻守にわたって、とても上手く「一体化」していたと思う。要は、選手たちのイメージと意志が、素晴らしく「連動」していたっちゅうことだ。
分かりにくい!?
例えば守備では、忠実なチェイス&チェックに呼応して、周りのチームメイトが、次のボール奪取勝負を強烈に意識して、同時に、そして効果的に、忠実な連動アクションをつづけるんだよ。
そこじゃ、ボールウォッチャーなんていう現象は、本当に希。選手たちの意識と意志が、ものすごく高いレベルで光り輝いていたと感じた。
また攻撃でも、言わずもがなだけれど、一つの仕掛けアクション(仕掛けのドリブルとかワンツーコンビネーション、タメ等など)に連動し、ボールがないところでの、3人目、4人目のアクションが、とてもうまく重なり合ったりする。
そして彼らは、(アーリー)クロスだけじゃなく、ドリブル突破&シュートや、後方からのミドルシュート等など、とても変化に富んだ仕掛けでブチかましていくんだ。
それは、観ていて、楽しいこと、この上ないアクティブサッカーだった。
それに対して、前半のFC東京の攻撃は、まさに寸詰まり。
たしかに、基本的には「受け身」にプレーせざるを得ないディフェンスは、とても質実剛健で堅いけれど、攻撃は、まさに「単発の極み」だったんだよ。
そんなだから、前半にアントラーズ土居聖真がゲットした先制ゴールは、まさに、そこまでのゲーム内容をフェアに反映したモノだったとするのがフェアな評価だね。
そんなアントラーズの、気合いに充ちたイニシアチブ掌握マッチを体感しながら、こんなコトを思ったものでした。
・・彼らは、5日前のACL最終戦(このコラムをご参照アレ!)で、ホントに悔しい敗北を喫した・・それは、ステーキホルダーの誰にとってもショッキングな現実だった・・でもこの試合でのアントラーズは、その悔しさベースの「強烈な意志」を、攻守にわたってブチかましつづけた・・
フムフム・・
そして後半。
FC東京は、その立ち上がりから、羽生に代えて高橋秀人を、河野広貴に代えて前田遼一を投入した。
要は、梶山陽平の基本ポジションを少し上げ、前田遼一と武藤嘉紀で組むツートップを効果的にサポートさせよう・・っちゅうわけだ。
そして、この変更が功を奏すんだよ。
もちろん、FC東京が1点を追いかけるという「行かざるを得ない状況」もあったわけだけれど、彼らのサッカーが、格段にダイナミックに変身したんだ。
もちろん、その絶対的ベースは、守備。
前半でのFC東京のディフェンスは、互いにプレッシングを仕掛け合うなかで、アントラーズの「それ」に押され気味になっていったんだ。
それほど前半でのアントラーズの守備には、勢い(=強烈な意志の炸裂!)があった。
アントラーズ守備の「勢い(=意志のチカラ)」に気圧されちゃったFC東京・・ってな具合。もちろん「それ」には、前半のFC東京の攻撃もまた、うまく機能していなかったという背景もある。
それが、後半には、ガラリと異なった様相を呈するようになったっちゅうわけだ。
そう、俄然FC東京が攻め込んでいく・・っちゅう展開へと変容していったんだ。
そこで、二つ目のテーマに入るっちゅうわけだ。
それは、FC東京の「攻撃のツボ」。
彼らは、まさに絶対的とまで形容できそうな「武器」を備えている。
一つは、言わずと知れた、武藤嘉紀のドリブル勝負。後半では、一本だけ、まさに絶対的な「武藤嘉紀のツボ」が決まりかけた。
そのドリブル突破&シュートのシーンでは、観客席で、息を呑んで見つめていた誰もが、FC東京の同点ゴールを脳裏に描いていたに違いない。
でも、結局「それ」は、アントラーズGK曽ヶ端準の正面に飛んじゃった。
でも、そこからFC東京は、セットプレー(主にコーナーキック)から、何度も、絶対的チャンスを作り出しちゃうんだよ。
完璧フリーでヘディングシュートをブチかました(後半から登場した!)前田遼一。彼は、その後も、ニアポストゾーンで「スリップヘッド」で絶対的チャンスを作り出したり、そのまま直接ゴールへヘディングシュートを飛ばしたり(二度ほどバー直撃段があったゼ!)。
わたしは、そんなFC東京の「ツボ」を観ながら、それが、「Jクラブ」のなかでは、もっとも危険なチャンスメイクだと思っていた。
とにかく、太田宏介のキックが素晴らしいんだよ。
それは、まさに、狙ったところにピタリと飛んでいく・・っちゅう感じ。もちろん、球種などについても、チームメイト達と、明確な「イメージシンクロ状態」にあるっちゅうわけだ。
ゴール前で待ち構える(森重真人や前田遼一といった!)ヘディングを得意とするチームメイトたちは、「より」具体的に、自分がヘディングシュートをブチかますイメージを脳裏に描写できるのも、まさに道理なんだよ。
例えば、デイヴィッド・ベッカム。例えば、中村俊輔。
彼らの場合も、キックされたボールを待ち構えるチームメイト達が、より具体的にピンポイントをイメージし、そこに、相手マーカーの視線を「盗んで」入り込んでいけるっちゅうわけなんだよ。
たしかに、この試合では決め切れなかった。でも、彼らは、確信を、より強くしたに違いない。
・・そう、そんな(武藤嘉紀のドリブルシュートや太田宏介のセットプレー!)武器を、これ以上ないほど効果的に活用するのがオレ達のゲームなんだ・・だか
らこそ、全力をディフェンスに傾注できる・・だからこそ、より効率的に、そんな勝負シチュエーションを作り出すことができる・・
フムフム・・。
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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