湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2015年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第12節(2015年5月16日、土曜日)
- 素晴らしいサッカーを展開したレッズ・・それと球際の競り合いというテーマも・・(レッズvsFC東京、4-1)
- レビュー
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- 終わってみれば、(まあスコア的にというニュアンスの方が強いけれど・・)レッズの完勝。ちょっと驚いた。でも・・
そう、ゲームの内実が、スコアと完璧にリンクしていた・・っちゅうわけじゃなかった。
もちろんレッズは、攻守にわたって(特にディフェンス=ボール奪取プロセスが!!)ホントに素晴らしかった。
FC東京のマッシモ・フィッカデンティー監督も、シャッポを脱いでいたっけ。
・・レッズは、本当に素晴らしいサッカーを展開した・・この勝利は、まさにフェアに勝ち取ったモノだった・・
そんなマッシモさんが、こんなキーワードを、何度も使っていたっけ。
球際の競り合い。
そこで、レッズが、ちょっとだけ上回っていた!? ところで、その要素は?
もちろんパワーやスピード、また競り合いのスキル等も大事だけれど、私は、そこでこそ、「意志の内実が問われる・・」と思っている。
ボールを奪い返そうとする「強い意志」。それがあるからこそ、「次の勝負どころ」が「見えた」瞬間に、全力ダッシュ&スプリントが飛び出すんだ。
でもレッズには、そんな意志の闘いを「様子見」的に傍観している選手もいた。
たしかに、たまには厳しい球際の競り合いを魅せることもあるけれど、多くは、「トンコ、トンコ・・」なんていう「緩いジョギング」の方が目立つ。
でも、そんな締まりのないプレーコンテンツじゃ、「いまのレッズ」に、本当の意味で貢献できるはずがない。
ということで、「その選手」に対しては、どうしても不満ばかりが先行しちゃう。
どうして、もっと自分から仕事を探さないの?? どうしてもっと、次の勝負どころを積極的に「探し」、そこへ全力スプリントで急行しないの??
まあ、ここまで書いて、「その選手」の名前を挙げないのはアンフェアだよね。私が不満な「その選手」とは、交代出場した、青木拓矢です。
彼は、とても優れた能力の持ち主だと思う。だからこそ、彼のプレー姿勢や態度に、怒りと不満が爆発しちゃうんだよ。
不確実な要素が満載したサッカーは、ある意味で、「意志のスポーツ」だからね。
何度、柏木陽介が、長い距離を「全力スプリント」で相手ボールホルダー(次のパスレシーバー)へ急行してボール奪取勝負を仕掛けたことか。それに対して、青木拓矢は・・。
いまはまだ、鈴木啓太は100%の状態ではないらしい。
そんな状況だからこそ、私は、青木拓矢に、本当の意味の「ブレイク・スルー」のベクトルに乗って欲しいと思っているんだよ。
とにかく彼は、自分の(緩い!!)プレーを、何度も繰り返しビデオで確認しなきゃいけない。
例えば、勝利を収めたガンバとのホームゲーム。
その後半ロスタイムに、リンスから宇佐美貴史へ決定的なタテパスが通されたシーン。
そこで、トラップしたリンクにアタックを仕掛けたのは、青木拓矢だった。
でも彼の「淡泊で安易なアタック」によって、リンスが簡単に振り向き、ほとんどフリーで宇佐美貴史にパスを通しちゃったんだよ。
このシーンは、本当に、何度も、何度も、穴が空くほど見つめ直さなければいけない。
そして彼は、そんな自分の淡泊なプレーだけじゃなく、阿部勇樹や柏木陽介、はたまた武藤雄樹や両サイドバックたちがブチかます、意志のフルスプリント(全力ダッシュでのチェイシングやボール奪取アタック等)を体感しなきゃいけない。
そして、それをベースに、イメージトレーニングに励むんだよ。
何かこのところ、青木拓矢を厳しく批判するケースが多いかもしれない。でも私は、彼が、そんなクリティックを、厳しくブチ当てるに値する優れた才能だと思っているわけだ。
とにかく、イメージトレーニングだよ、イメージトレーニング。
ガンバレ〜、青木拓矢〜。
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あらっ!?・・ちょっとハナシが逸れた。
ゲームの、実質的な内容・・というテーマだった。
マッシモさんが多く用いた、球際の競り合い・・という視点。
マッシモさんは、そのポイントでもレッズが上回っていたというニュアンスの内容をコメントしていたけれど、私の意見は、チト違う。
私は、意志パワーのぶつかり合いとも言える、球際の競り合い(ボール奪取勝負の仕掛け合い!)では、互角だったと思っているんだよ。
FC東京の選手たちは、マッシモさんが言うように、球際の競り合いでは、最後の最後まで闘い抜いたと思うんだ。だから私は、彼らも立派なサッカーを展開したとすることに躊躇しない。
でも、「その後の攻め」では、明らかに「差」が見えていたよね。
レッズは、いつものように、両方のサイドゾーンにおいて、前戦、中盤、最終ラインという「三つの駒」を持っている。
そして、その三人が、タテ方向に激しくポジションチェンジを繰り返しながらサイドゾーンを攻略するなかで(そのサイドに相手ディフェンスを引きつけて!!)、たまにはサイドチェンジパスなんかもブチかますっちゅうわけだ。
そして、そんな「タテ方向の組織コンビネーション」によって作り出された、「ある程度フリーでボールを持つ味方」が、臨機応変に、ドリブル勝負を仕掛けた
り、そのままアーリークロスを放り込んだり、はたまた組織コンビネーションで抜け出してゴールライン際まで侵入したりするんだよ。
また、この試合では興梠慎三も先発に戻ってきた・・という視点もある。
そして、彼を中心に、一発タテパスを駆使したセンターゾーンの裏スペースへの仕掛けや、素晴らしいタメ(=ポストプレー)から、そのままセンターゾーンを突破したり、次のサイドゾーンへ展開したりする。
とにかく、FC東京のディフェンスブロックは、そんなレッズの、変幻自在の組織プレー攻撃を「抑制」するのに四苦八苦していたんだよ。
FC東京守備ブロックの「メンツ」は、例によって強力そのものだからネ、そんな強者を振り回してスペースを突いていけたという意味でも、レッズの変幻自在の組織プレー(攻撃)は、とても高質だったとすることに異論をはさむ方はいないでしょ。
もう一つ、今度はFC東京の攻め。
先日の、FC東京vsアントラーズ戦のコラムでも書いたけれど、とにかく太田宏介のクロスは、殺人的に「危険」なんだよ。
この試合でも、10本ちかくあった太田宏介からのクロスシーンじゃ、その7割が、効果的なチャンスにつながっていたからね。
セットプレーからでも、流れのなかからでも。
それは、本当に素晴らしい武器だ。
ということで、前述コラムでも書いたように、FC東京の攻め手は、太田宏介のクロスと、武藤嘉紀のツボ(ドリブル突破&シュート)に集約されるのかな。
もちろん、それだけじゃ、仕掛けの変化を演出するには足りないよね。
とはいっても、前述の二つの武器は、レベルを超えているから、それを極限まで「先鋭化」することの方が結果につながる・・という議論もできるよね。
フムフム・・難しいネ。
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ということで、ここからはレッズの個人。
まあ、武藤雄樹については、もう書くまでないよね。
このゲームでも彼がブチかましつづける、攻守にわたるスーパーなハードワークと、パスを受けたときに魅せる、シンプルなタイミングでの(ダイレクト)パスや、素早いワントラップ&パス、はたまた、タイミングをズラせた効果的なドリブル勝負。
とにかく、彼がボールを持ったときの「ワクワク感」は、特筆だよ。
それに、この試合では(前述したように!)絶対的エース、興梠慎三も戻ってきた。
レッズの前戦は、この二人を「軸」に、もう一人を組み込む・・という発想がベースだろうね。
両サイドバック。
言うことなしだね。とにかく、宇賀神友弥にしても関根貴大にしても、ゲームごとに進化&深化していることを体感できるんだよ。
以前は、関根貴大は、とても遠慮していた。だからフラストレーションが溜まった。とにかく、出来るのに「やらない」ヤツほど罪深い選手はいないんだよ。それが・・
そう、関根貴大が、宇賀神友弥と同様に、自信にあふれた勝負を仕掛けられるようになっているんだ。
ホント、頼もしい。
ダブルボランチ。
まあ、言うまでもないけれど、レッズの重心ペアだよ。特に、柏木陽介。
前述したように、彼の場合は、スピードとパワーに大きな課題を抱えている。でも、そのマイナス要素を、インテリジェンスで、完璧に補っちゃうんだ。だからこそ、前述した、「積極的な仕事探し」&フルスプリントのオンパレードっちゅうわけだ。
ホント、大したモノだ。
最後に、槙野智章。
ホントに、スーパーなパフォーマンスだった。日本代表としてのプライドが、強い支えになっているんだろうね。
このところの彼については、もちろん阿部勇樹もそうだけれど、もう完璧に「安心」して観ていられるから、どうもコメントを端折(はしょ)ってしまいがちになる。
だから、敢えて書くことにした(でも今日は、阿部勇樹は、またまた端折る・・ゴメン!!)。
何せ、このゲームで彼が魅せつづけた、攻守にわたるスーパーハードワーク&創造性プレーはレベルを超えていたからね。
同じ「Kölner」として鼻が高いよ。
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最後に告知です。
実は、娘の大学卒業式に出席するため、数日後から、USAの東海岸へ行くのですよ。たぶん、2週間は戻ってこない。
東海岸だからネ、新連載「The Core Column」で発表した、アメリカに多い生意気盛りのティーンエイジャー女子と、効果的な教育ツールとしてのサッカーとの関わりについて書いた、「このコラム」を補強できるような取材も兼ねようかな・・なんて思っています。
次の日本復帰は、6月3日のレイソル戦あたりからですかね。
それでは、また〜・・
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最後に「告知」です。
実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。
でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。
そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。
だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。
でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。
ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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