湯浅健二の「J」ワンポイント


2015年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第23節(2015年8月12日、水曜日)

 

今日も、2ゲームの連チャンレポートで〜す・・(フロンターレvsモンテディオ、0-0)、(アルビレックスvsレッズ、1-2)

 

レビュー
 
このところ、モンテディオ山形のサッカーが、素晴らしく進化&深化していると感じます。

そのことは、一月前の、レッズと対戦したホームゲームでも感じていたことです(それはテレビ観戦でしたが・・)。そう、彼らは、質実剛健に発展しているんだよ。

もちろん、その「進化&深化」の絶対的なスタートラインは、守備にあり。

この試合でのモンテディオも、レッズ戦同様に、スリーバック&トリプルボランチという基本的なタスクバランスで試合に臨んだ。

それが、レッズ戦と同様に、殊の外うまく機能しつづけるんだよ。

うまく機能している・・!?

彼らは、決してリトリート(大きく下がって組織作りする・・というニュアンス)ではなく、あくまでも、ボールを失った次の瞬間から、それも前から、積極的にボールを奪い返しにいくんだ。

そんな「守備のやり方イメージ」が、チームのなかで、とても明確にシェアされている。だからこそ、チェイス&チェックからはじまる組織(コレクティブ)ディフェンスが、有機的に連動する。

だからこそ、彼らのイメージの通りに(かなり前で!)ボールを奪い返せるシーンが増えていく。

そして、だからこそ(ボールを奪い返した状況で、ある程度の人数が揃っているからこそ!!)、次の攻撃でも、「本物のイニシアチブ」を握れる時間帯が、とても多くなる。

そんな、「攻守にわたるイメージと実効プレーの善循環」だからね、選手たちが、自信と確信を深められないはずがないし、彼らのダイナミックな押し上げ(人数をかけた分厚い攻撃)の勢いが増幅していかないはずがない。

そして、そのことで彼らは、またまた自信を深めていく。

そう、守備という(表面的には)受け身と考えられがちのグラウンド上の「現象」こそが、全てのスタートラインであり、次の攻撃の(物理的&心理的な!)準備なんだよ。

石崎信弘監督は、そのメカニズムを深く理解している。だからこそ、チーム全体の「攻守の組織連動イメージ」を、より高度に先鋭化させられるっちゅうわけだ。

もちろんそのプロセスは、簡単じゃない。

いつも書いているように、選手たちが、本当の意味で覚醒し、「それをやりたい・・(監督が示している!)その目的を達成したい・・」と心底・・、そう100%以上の心のダイナミズムをもって望まない限り、決して「高い実効」は期待できないんだよ。

グラウンド上の主役は、選手。そのメカニズムを深く理解し、選手たちが心底そこへ到達したいと望むように(心理的に!)ドライブするのが監督の責任っちゅうわけだ。

そう、良い監督は、優れた心理マネージャーでもある・・っていうことサ。

石崎信弘監督は、ホントに良いプロコーチだと思うよ。そう、本物の「ストロングハンド」。イイネ・・

まあ、とはいっても、石崎さん自身も(監督会見で!)言っていたように、最後のパスの精度が不十分だとか、コンビネーションイメージがうまく連動しないとか、3人目、4人目のフリーランニングが甘いとか、まだまだ課題は山積みだよね。

それでも、100%正しいベクトル上にある「このサッカー」をつづけていけば、必ず、大きな成果に結びつくはずだよ。

何せ、選手たちが、主体的に、勇気をもって、活き活きとプレーしているでしょ。

私は、そんなチームの発展プロセスを、世界中で、数限りなく体感している。

私のモンテディオに対するシンパシーは、日を追うごとに増幅していると感じますよ。

がんばれ〜〜、石崎モンテディオ〜〜っ!!

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さて・・、ということで、アルビレックスvsレッズ。

まず・・

一体「あれ」は何だったんだろうか。そう、前半の立ち上がり、アルビレックスが完璧にゲームを支配した時間帯。

もちろん「その現象のバックボーン」は、守備にあり。

アルビレックス守備が、殊の外タイトでハードだったんだよ。そう、「人」を厳しくマークすることで、次、その次のパスレシーバーを抑えてしまう。

もちろんチャンスとなったら、すぐさま協力プレスをブチかます。そんな積極的なボール奪取勝負を繰り返すことで、心理的にもレッズを押し込んだっちゅうわけだ。

サッカーは「相対ボールゲーム」だからネ、そんなアルビレックスの積極ディフェンスに、レッズ選手たちも、ちょっと「受け身の心理」に陥れられてしまった。

そう、擬似の「心理的な悪魔のサイクル」。

ここがサッカーの面白いところで、相手が「消極的」になっていると感じたら、直ぐに(攻撃での!)ボールがないところの動きが活発になる。

逆に、相手チームの守備は、足が止まり「気味」になり、ボールウォッチャーに「はまって」しまう傾向も強くなる。

悪魔のサイクルと「気持ちの善循環」の対峙だからね、悪魔サイクルにはまっているチームには勝ち目はない。

不確実な要素が満載だからこそ、サッカーは、本物の心理ゲーム・・っちゅうわけだ。

ドイツ伝説のスーパーコーチ、故ヘネス・ヴァイスヴァイラーが、こんなコトを言った。曰く・・

・・いいか・・少しの時間でもいいから、ダイナミック守備をブチかまして、相手を、押し込まれているって勘違いさせてしまうんだよ・・

・・そうしたら、必ずヤツらは足を止めてボールウォッチャーにもなってしまうはず・・そう、心理的な悪魔のサイクルだ・・

・・サッカーの極意は、そんなふうに、相手を勘違いさせることなんだよ・・ビビらせるとか、勇気を奪っちゃうとか・・

・・でも、そんなダイナミック守備は、チームが一丸となって同時に、そして爆発的にアクションを起こしていかなきゃ効果は期待できない・・だからこそオレは、いつもエクステンションハンド(グラウンド上のリーダー!)を探しているんだよ・・

あっと、ゲーム・・

アルビレックスは、そんな積極ディフェンスを基盤にイニシアチブを握っていた時間帯に、何度かチャンスを作り出した。そして、そのうちの一つをゴールに結びつけたっちゅうわけだ。

まあ、そこまでは、アルビレックスにとって理想的なゲーム展開だったでしょ。

でも・・

そう、そこから、「失点という強烈な刺激」によって覚醒したレッズのプレーが、どんどんと活性化していったんだ。まあ、前半については、徐々に・・っていうペースアップではあったけれど・・。

そんなペースアップは、もちろん守備から・・。

チーム全体が、ボールを奪い返すプロセスで、とてもスムーズに、そして力強く連動しはじめたんだよ。

私は、そんなプロセスを観ながら、この力強いリヴァイタライズ(再活性化するとかの意味・・)こそが、レッズの優れた「底力」の証明だと思っていた。

そして、後半は、完全にレッズペースになっていったっちゅう次第。

それにしても、カウンターや組み立てプロセスも含めて、あれだけ多くの決定的チャンスを作り出しながら、実際の決勝ゴールまでは「遠かった」。

まあ、「あんな」絶対的チャンスを決め切れなかった「失意の体感」、梅崎司が決勝ゴールをブチ込んでからの(阿部勇樹とレフェリーとのストラグルも含め た!!)ギリギリの攻防も含め、このような「厳しい勝負の経験」もまた、レッズのこれからの「セカンドウェーブ」に向けたエネルギーになるに違いない。

あっと、梅崎のスーパーミドル決勝ゴール。

組織コンビネーションから、「レッズらしいチャンスメイク」の場面では決められず、「あんな」スーパーミドルが決まってしまう。

まあ、それもサッカーっちゅうことだ。

最後に・・

何度も、ギリギリのスライディングやカバーリングで失点を未然に防いだだけじゃなく、(チャンスを見極めて上がっていく!)攻撃でも抜群の存在感を魅せた日本代表の「スーパー鉄人」槙野智章に乾杯!!

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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ・・という「興行」について。

メディアは、「1.ステージ優勝」なんていうテーマで盛り上がっている。

でも・・ね・・

皆さんもご存じのように、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

以前の「2ステージ制」とは違い、今シーズンからの「それ」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになるはずだからね。

その後のトーナメントは、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうからね。

だから、「J」に関わっているサッカー人は、そして読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむっちゅうわけだ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。そこじゃ、いかに2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

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 最後に「告知」です。

 実は、ソフトバンクではじめた「連載」だけれど、事情があって、半年で休止ということになってしまったんですよ。

 でも、久しぶりの「ちゃんとした連載」だったから、とてもリキを入れて書いていた。そして、そのプロセスを、とても楽しんでいた。自分の学習機会としても、とても有意義だったしね。

 そして思ったんですよ、この「モティベーション機会」を失ってしまうのは、とても残念だな〜・・ってね。

 だから、どこかで連載をはじようかな・・と、可能性を探りはじめた。そこでは、いくつか良さそうなハナシもあったし、メルマガでもいいかな・・なんてコトも考えた。

 でも・・サ、やっぱり、書くからには、できるかぎり多くの方々に読んでもらいたいわけですよ。でも、可能性がありそうな(メルマガも含めた)連載プラットフォームとしては、やはり私のホームページにかなうモノはなかった。

 ということで、どうなるか分からないけれど、とにかく、私のホームページで、新規に、連載をはじめることにしたのです。

 一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

 そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

 とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書こうかな。もし、うまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れてから立ち上げた新ビジネス」、そして「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

 ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、一週間ごとにアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

 もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

 まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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