湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2016年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第10節(2016年5月4日、水曜日)
- 最高のサッカーを展開したベガルタ・・対するフロンターレは、私が観たなかで今シーズン最悪のサッカーだった!?・・(フロンターレvsベガルタ、1-1)
- レビュー
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- 「臆病にならず、とにかく(前方スペースが空いたら!?)顔を見せるようにしよう・・」
「それをつづけていれば、必ずチャンスを創りだせる・・選手たちには、そう言いきかせました・・そして彼らは、立派に、実践してくれた・・」
ベガルタの渡邉晋監督が、記者会見の冒頭で、そんな素敵な内容をコメントした。
そのなかで、私の聞き違いでなければ、こんなコトも言っていたはず。曰く・・
・・そして我々は、自分たちがイメージする積極的なサッカーを展開できただけではなく、実際に何度もチャンスを創り出せた・・
・・そして、このゲームでは、選手たちだけじゃなく、わたし自身も、攻守にわたって積極的にチャレンジしていくことによって、サッカー内容を、格段にアップさせられることを体感(再認識!?)させてもらった・・私は、そう思っています・・
いいね〜、渡邉晋。
私は、彼がベガルタ監督に就任してからの仕事内容を、いつも、高く評価していましたよ。
だから先日の、アウェー、レッズ戦のサッカー内容に(ベガルタの完敗!?)、チト複雑な心境にさせられていたんだ。
そのゲームに関するコラムは、「こちら」をご参照あれ。
そして今日。相手は、リーグトップクラスの実力を誇るフロンターレ。
私にとってこの試合は、様々な戦術ニュアンスをベースにした「比較」という意味合いでも、とても興味を惹かれる学習機会でもあったんだよ。
そしてベガルタは、レッズ戦とは、まさに「180度」内容が異なる、とても立派なサッカーを展開してしまうというわけだ。
それは、本当に、とても興味深いグラウンド上の現象だった。
何せ、レッズ戦では何も出来なかったベガルタが、かなりの時間帯、「あの」フロンターレを押し込み、何度も、スペースを攻略してチャンスを創りだしてしまったんだから。
もちろん渡邉晋さんに、そのテーマで(何が違っていたのか!?)質問したよ。そしたら・・
・・もちろんレッズ戦でも、今回と同様に、ブロックをつくるところと、前からプレスを仕掛けていく(積極的にボールを奪いにいく!)ところのメリハリを意識してプレーするという方向で、ゲーム戦術のイメージ作りをしました・・
・・今日のフロンターレ戦と同様に、仕掛けていけるチャンスを見出したら、決して臆病にならずに「顔を見せよう」という基本姿勢を強調したんですよ・・
・・でも結局レッズ戦では、そんな積極チャレンジ姿勢を(十分には!?)魅せられなかった・・
・・いまの質問の骨子は、レッズ戦とフロンターレ戦でのゲーム内容に違いが生じたのは何故なのか・・ということですよね・・
・・そのバックボーン要素は多岐にわたるでしょうが、やっぱり、あの試合でのレッズは、とても強かったということじゃないでしょうか・・
フムフム・・。
そんなレッズ戦に対して、このフロンターレ戦での渡邉晋ベガルタは、守備ブロックを作って、そこに「引きこもる」のではなく、常に、前戦へ顔を出しつづけたんだよ。
それも、型にはまった選手だけじゃなく、フロンターレ守備ブロックにとって「見慣れない顔」も、代わる代わる出現したというわけだ。
ホントにベガルタは、素晴らしい「積極チャレンジ姿勢」をブチかましつづけたと思う。立派なサッカーだった。
それに対してフロンターレ。フ〜〜ッ・・
あの、人とボールが、素晴らしい「リズム」で動きつづける、高質なダイレクト(パス)コンビネーションと、大久保嘉人と小林悠に代表される、ものすごく危
険な「個の勝負」が、これ以上ないほど高いレベルでバランスしたスーパーサッカーは、一体どこへ行ってしまったんだろうか。
ところで、ダイレクトパスやダイレクトシュートという表現。
私は、ボールを止めないパスやシュートは、「ワンタッチ」ではなく、「ダイレクト」という表現を使っています。このテーマに興味のある方は、新連載「The Core Column」で以前に発表した「このコラム」を参照して下さい。
あっと・・、脱線。この試合でのフロンターレの内容というテーマだった。
まあ、この試合では、調子が悪かったということだとは思うけれど、それにしても・・。
そう、彼らの仕掛けで目立っていたのは、彼ら本来のサッカーイメージとはかけ離れた、まさに「ゴリ押し」と呼べるような個の勝負ばかりだったんだよ。
でも、まあ、大島僚太が、スーパードリブルという個人勝負プレーで同点ゴールをブチ込んだんだから、「結果」にはつながったとは言えるんだろうけれど・・でもネ・・。
我々がフロンターレに期待しているのは、そんな低次元のサッカーじゃないから・・サ。
まあ、組織サッカーのイメージを、ゲームが進んでいるなかにおいて、チーム内で「再生」できなかったコトは、とても大きな課題ではあった。
それは、(擬似の!?)心理的な悪魔のサイクル・・とまで言えるような、ネガティブな雰囲気が支配するサッカーだった。
どうなんだろうね・・。そんなときに、チームの雰囲気を、悪魔のサイクルから脱出させられるような強烈なパーソナリティは、いないのだろうかネ。
風間八宏さんは、すべてが、選手たち個々の自覚に(覚醒に!?)かかっていると言う。それは、もちろん正しいし、風間さんにしても、そのキッカケになる「何らかの刺激」は、与えつづけているはずだよね。
とにかく、まさに今シーズン最低のサッカー内容に終始した(そこから立ち直れず、個の勝負ばかりをゴリ押しする!)フロンターレに、ちょっとショックを受けていた筆者だったのです。
でも風間八宏さんのことだから、短期間で「修復できる」とは思うけれど・・。
とにかく、彼らの今後にも注目しましょう。
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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。
- 昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。
- 何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。
- まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。
皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。
ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。
だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。
- そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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