湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2016年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第11節(2016年5月8日、日曜日)
- 勝者メンタリティーの進化&深化によって、とても勝負強く「も」なっているレッズ・・(アルディージャvsレッズ、0-1)
- レビュー
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- 「湯浅さん・・強いネ〜、レッズ・・」
試合後に、旧知の著名フォトジャーナリスト、六川則夫さんから、そんな声を掛けられた。
実は彼、すごく辛口の人。誉めることは、あまりない。そんな彼が、開口一番に、それも私に対して、そんな言葉を投げかけてきたんだよ。
ということで、この試合でのテーマは、ものすごく勝負強く「も」なっているレッズ・・ってな視点ですかね。
もちろん「それ」は、勝者メンタリティーの進化&深化を意味するに他ならない。
とにかくレッズは、家長昭博に代表される素晴らしい天賦の才が散りばめられたアルディージャ攻撃陣に、2本しかシュートを打たせなかったんだからね。
ということで、テーマは、もちろん守備。
昨日の「J2」マッチ、東京ヴェルディ対松本山雅FCだけれど(結果=0-4)、そののコラムでは、「決定的な半歩アクション」ってな自作表現で、サッカーが究極の「意志のボールゲーム」であることをディスカッションした。
そのコラムについては「こちら」を、ご参照あれ。
そこで、目立ちに目立っていた「差」が、攻守にわたるボールがないところでの勝負アクションの内実だった。
松本山雅プレイヤーたちは、攻守の戦術状況の変化に対して、自ら「調整」しながら、積極的に、勇気をもって、ボールがないところでの仕事を探しつづけていたんだよ。
私は、反町康治さんに、心からの拍手をおくっていた。
ということで、この試合についても、レッズが魅せつづけた、抜群の守備意識と強烈な意志による素晴らしい実効ディフェンスをピックアップしようと思った。
とはいっても、ここで、具体的な「ディフェンス5秒間ドラマ」を書き表すのは難しい。それは、ビデオを見直してからだよね。でも、取り敢えず・・
・・ボールを失った瞬間の「素早い攻守の切り替え」・・そして、そこからブチかます、最前線からの協力プレス・・周りは、ボール奪取チャンスと感じたら、それこそ爆発的な勢いで、その協力プレスの輪に全力で参加してくる・・
・・その迫力たるや、まさにアトレティコ・・誉めすぎですかね!?・・もちろん、その協力プレスが成功すれば、即、ショートカウンターのチャンス・・
・・また、もし協力プレスを外されても・・素早く、守備組織(ポジショニングバランス)を整えちゃう・・そして、例によって(イメージが!)連動しつづけるハイレベル組織ディフェンスを魅せる・・
・・そんなだから、相手攻撃が四苦八苦するのも道理・・
・・ってな感じ。
レッズ守備は、全体的には、ホントに、忠実でスマート、そして力強かったんだよ。でも・・
そう、前半には、何度か、カウンターピンチに陥った。
たぶん、前半の立ち上がりは、両ボランチ(スリーバックの両サイド)や両サイドバックが、攻め上がり「過ぎて」いたということなんだろうね(前後の、人数&ポジショニングバランス)。
だから、前気味ゾーンでのボールロストで、(前述した)アルディージャの才能プレイヤーたちに「やられ」そうなっちゃったっちゅうわけさ。でも・・
そう、その後はすぐに、「リスクヘッジ(マネージメント)」の修正を行っていたね。
もちろん、受け身ではなく、あくまでも攻撃的な修正。
この攻撃的な修正・・というテーマ「も」とても興味深いので、新連載「The Core Column」で、そのうちに採り上げますよ。
そして、この試合でのもう一つの視点に入っていくっちゅうわけだ。
それは、「この試合でのレッズ攻撃は、なかなか上手くハマらなかった・・」っちゅうテーマ。
たしかに、両サイドからのドリブル突破&決定的クロスという攻撃パターンや、例の「トントント〜ン」っちゅうリズムの、ダイレクト(パス)コンビネーションは、そんなに効果的に「ハマ」ったわけじゃなかったよね。
あっと・・しつこいけれど、この「ダイレクト」というテーマについては、新連載「The Core Column」で以前に主張した「このコラム」を参照して下さいネ。
ということで、「ハマった仕掛けシーン」を十分に創りだせなかったレッズというテーマ。
もちろん、その背景には、アルディージャ渋谷洋樹監督の「ゲーム戦術」が、うまく機能したという側面もあったでしょ。
たしかにアルディージャ守備は、両サイドからのドリブル突破や、3人目、4人目が絡むダイレクト(パス)コンビネーションに対抗できるだけの確固たる「守備イメージ」をもってゲームに臨んでいた。
そのことは、ゲームを観はじめて、すぐに感じた。だから、「これは難しいゲームになるかもしれないな〜・・」なんて思ったものだった。
でも・・
そう、視点を変えれば、まったく違った評価がアタマに浮かんでくるんだよ。
例えば・・
・・レッズ攻撃は、とても調子の良いアルディージャ守備に対して、たしかに苦労はしたけれど、そこそこの仕掛けクオリティーを基盤に、しっかりとチャンスを創りだしていたじゃないか・・
・・それは、それで、とても立派なオフェンス内容だったんだよ・・
フムフム・・でしょ。
そして、繰り返しになるけれど、そのように「しっかりと攻めながら」も、調子の良いアルディージャ攻撃陣に、(前半立ち上がりカウンターピンチを除いて!?)まったくといっていいほどチャンスを創らせなかったという事実「も」ある。
だからこそ、このコラムの主題を、「とても勝負強くなっているレッズ・・そしてそれは、勝者メンタリティーの進化&深化を意味する・・」っちゅうテーマに集約させたいのです。
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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。
- 昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。
- 何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。
- まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。
皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。
ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。
だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。
- そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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