湯浅健二の「J」ワンポイント


2016年Jリーグの各ラウンドレビュー

 

第24節(2016年8月6日、土曜日)

 

両監督の興味深いコメントニュアンスを、私なりに、まとめました・・(レッズvsベルマーレ、4-1)

 

レビュー
 
まあ、ゲーム内容については、皆さんもご覧になったとおり、サッカーの全体的な「質」について、レッズに一日の長があったとすることに躊躇(ちゅうちょ)しません。

ということで、このコラムでは、ゲーム(サッカー)内容の戦術的な分析じゃなく、両監督コメントを中心にしようと思った次第。

例によって、骨子ニュアンスを、(私なりに!)分かりやすく「まとめ」ます。

まず、チョウ・キジェ監督から。

曰く・・

・・負けはしたけれど、選手たちにとって、とても貴重な経験になったと思う(積極的にプレーすれば、少なくとも、結果に結びつけられる「可能性」だけは確かな感覚として残る!?)・・

・・前節(フロンターレ戦・・このコラムをご参照アレ!)も、この試合でも、失点をせずに耐え、そしてワンチャンスを結果に結びつけるというゲーム戦術イメージはシェアできていた・・でも結局は、両ゲームともに多くのゴールをブチ込まれてしまった・・

・・ただ選手たちは、強い相手に対しても、しっかりと向かってけるだけのチカラが自分たちにはあると体感できたと思う・・勝とうが負けようが、それがベルマーレのやり方なんだ・・と・・

・・勝ち点をもぎ取れれば、それに越したことはないけれど・・でも、とにかく最後までチカラを出し切る努力をつづけていくことこそが大事なんだと思っている・・

・・とはいっても、だからこそ悔しさが残るのも確かな事実・・とにかく、その敗戦の悔しさを「歓喜で埋め合わせていこう」という前向きな姿勢こそが大事なんだ・・

・・一度シュートを外しても、次、その次がある・・そんな粘り強い意思こそが重要なんだ・・

ここでチョウさんが、面白いレトリックを披露してくれた。

養殖と、その檻から飛び出す勇気と意志。

チーム作りプロセスの重要なファクターとして、競争を勝ち抜いてポジションを獲得するプロセスがある。

ただそこでは、一つ一つの課題に集中するあまり、どうしても視野が狭くなりがち。

だからこそチョウさんは、選手たちに対して、その「殻」をブチ破り、自分の意志で外へ飛び出せるように(チーム戦術から飛び出して、より良い仕事をしようとする意志を高揚させられるように!?)チームの雰囲気づくりに気を遣っていると言う。

素晴らしいコメントじゃありませんか。

優れた心理マネージャーでもあるチョウ・キジェの面目躍如・・ってなところだね。

もちろん「それ」は、リスキーなプレー(心理マネージメント)姿勢でもある。

この試合でも、そんな「積極的な勝負師マインド」が災いし、何度か、必殺カウンターをブチかまされたシーンがあった(それが失点につながった!)。

まあ、先シーズンまでだったら、永木亮太や遠藤航がいたから、かなりの確率で、そのカウンターの芽を摘めていただろうけれど・・。でも、タラレバ・・

そのポイントについても、チョウさんは、こんな素敵なコメントをくれたよ。曰く・・

・・いや、永木と遠藤というタラレバ話じゃなく、現有勢力でも、まだまだ判断能力に大きな課題があるということは分かっているし、選手たちも意識はしています・・

・・でも、その判断能力は、リスクチャレンジをつづけなければ、決して発展しないモノですよね・・

・・だからこそ私は、これからも、これまでどおりの(!?)コンセプトを進化、深化させることに、全力を尽くす覚悟でいるんですよ・・

いいね〜、チョウ・キジェ。

まさに、湘南スタイル(≒勇気)そのものじゃありませんか。

そう、継続こそチカラなり。このテーマについては「このコラム」をご参照アレ。

___________

ということで、ミハイロ・ペトロヴィッチのコメントも、ニュアンスの骨子をまとめます。

曰く・・

・・厳しい気候条件だった・・(そのこともあって!?)いつものパフォーマンスからは、チト落ちるかもしれない・・

・・でも、ベルマーレとの質の違いは、ある程度は魅せられたと思う・・

・・たしかに厳しい気候だから、全体的な動きは落ちる・・でも、だからこそ、選手それぞれが抱くサッカーイメージの「質」が問われるんだよ・・

・・とにかく我々は、もっともっと良いサッカーが出来ると思っている・・

・・(後藤健生さんの質問に応えながら、ミハイロが青木拓矢に言及した)・・とにかく青木拓矢は、素晴らしい進化を遂げていると思う・・

・・ゲームの途中で彼が入ったケースでは、その全てでサッカーの内容がアップした・・

・・たしかに柏木陽介と阿部勇樹コンピのなかに割って入るのは難しいだろうけれど、いまの彼のパフォーマンスからすれば、彼らにとっても、現実的なライバルということになるだろうね・・

そう、青木拓矢。

皆さんは、私が、数年前から、青木拓矢をこき下ろしていたことを覚えていますよね。

とにかく私は、彼の、「トンコ・・トンコ・・」っちゅう、緩慢で頼りないリズムの動き(走り)に腹が立って仕方がなかったのですよ。

実際、チャンピオンシップにとって大事なゲームで、彼の安易なマークミスから同点ゴール奪われたシーンがあったよね。

トンコ・・トンコ。

要は、自分から仕事(攻守ハードワーク)を探そうとする「積極的なプレー姿勢」に、致命的な問題があったんだよ。

私は、彼の天賦の才を、いつも、本当に高く評価していた。だからこそ、惜しい・・惜しい・・という思いで、彼のことを、ボロボロに、こき下ろしつづけたんだ。

そして、今。

たしかに、ミハイロが言うように、見違えた。

攻守にわたって、積極的に「仕事を探しつづける前向きで攻撃的なプレー姿勢」が、光る、光る。

だから、攻守ハードワークを探し、その「目的」を果たすために、全力スプリントを繰り返すんだよ。

あの、「トンコ・・トンコ・・」の青木拓矢がだよ。

ホント、いまの彼のプレーを観るにつけ、心底、良かった・・と感じている今日この頃なのです。

あっと、ミハイロ・・。

彼に対して、最後に、こんな質問を投げてみた。

そこでは、「勝者のメンタリティー」という表現はつかわずに(そのテーマについては前節のコラムをご参照アレ)、単に「勝負強くなったと思うのだが・・」と質問した。そしたら・・

・・たしかに、このところの勝負強さについてはオレも実感している・・でも・・

・・アンタも知っているように、過去には二度もチャンピオンになる絶対的チャンスがあった・・でも、決定的なゴールを決め切れず、逆に肝心な所で、相手にゴールをブチ込まれてしまった・・

・・そして、ガンバとサンフレッチェに、最後の最後で、僅差の敗北を喫した・・

・・そんな過去の苦い経験があるから、アンタの質問に明確に応えるのは、どうも、まだ時期尚早だと感じるんだよ・・

・・とにかく、1年間を通した(年間総勝ち点での!)チャンピオン争いでは、毎年、違うライバルが出現していよな・・そして今シーズンは、フロンターレ・・

・・たしかに選手たちは、過去からの体感を通して、とても前向きにプレー出来るようになっているし、自信と確信を深めつつあると思う・・

・・とにかく選手たちは、より深い自信と確信をもって、これからの勝負マッチに臨めるまでに成長をつづけているということだな・・

フムフム・・。

良いね・・


-------------------

あっと・・

私が愛用しているウエストポーチやバックパックについて、何人かの方から質問されたこともあって、友人のデザイナーが主催するブランド、「METAS」のプロモートもさせてもらうことにしました。

この方は、有名メーカーのデザイナーから独立し、自らのブランドを立ち上げました。シンプルイズベスト・・スローライフ・・などなど、魅力的なキーワードを内包する「METAS」


とてもシンプル。でも、その機能性は、もう最高。お薦めしまっせ。

===========

ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。

昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。

何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。

まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。

皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。

まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。

ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。

そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。

だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。

この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。

そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。

============

最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。

一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。

もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


===============

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

==============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]