湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2016年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第32節(2016年10月22日、土曜日)
- ちょっと短めですが・・とにかく重要ポイントだけをピックアップ・・(フロンターレvsサンフレッチェ、2-0)、(アルビレックスvsレッズ、1-2)
- レビュー
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- フロンターレ対サンフレッチェ。
見終わった後、私は、その結末に対して、チト「妙な感覚」に包まれていた。
もちろんフロンターレの2点目は、全体が押し上げていたサンフレッチェの背後を完璧に突いたカウンターだったから仕方ない。
でも、フロンターレが創りだした「ゴールチャンス」は、ミドルシュートが多かったことも含めて、どちらかといったら「個の力業」ってな感じが否めないシロモノだった。
皆さんもご存じのように、私がフロンターレに期待しているのは、そんな力業じゃない。
彼らには、ダイレクトパスを多用する組織コンビネーションという「美しいスペース攻略」シーンを期待しているわけさ。でも、肝心の「それ」が、ほとんどなかった。
妙な感覚・・の背景には、もう一つの要因があった。
それは、サンフレッチェが魅せた、攻守の「イメージ」が高質にシンクロしたスマートなサッカーが印象的に過ぎた・・ということ。
全体的な「走行距離」が短めのサンフレッチェ。
それは、ボールを積極的に奪いかえしにいくアグレッシブな「連動」アプローチと、落ち着いたポジショニングバランスを、とてもスマートに使い分ける組織ディフェンスにある。
そう、「行くところ」と「待つ」ところのメリハリが効いたスマートな守備。
それは、この試合でも、素晴らしい実効レベルを魅せつづけていた。
特に前半のフロンターレは、攻め込むこと(スペース攻略)がままならず、逆にサンフレッチェが、何度も「ゴールチャンス」を創りだしたんだ。
そんなフロンターレを観ながら、第27節のレイソル戦を思い出していた。
そこでのフロンターレは、このゲーム同様に、前半は完全に「寝て」しまっていたんだ。
要は、攻守にわたる、ボールがないところでの動きの量と質が、チームとして「うまくリンクしていない・・」という視点だよね。
私は、その背景要因は、もちろん選手たちの「意識と意志」の充実度が、ダウン状態だった・・ということさ。
そう・・
コンビネーションサッカーでは、一人ひとりの「イメージング」と、積極的な「行動」が、決定的に大事になってくるんだよ。でもフロンターレでは・・
ということで、この試合でのフロンターレでは、守備でも、攻撃でも、チームメイトたちのイメージが、まったくといっていいほどシンクロしなかった。
たしかに後半は良くなったけれど、それでも、期待される「フロンターレのサッカー」にはほど遠い。そしてチャンスメイクは、「個人の力業」ってな体たらくだったんだよ。
だから、結果を受け容れながらも、ちょっと妙な感覚に包まれていたっちゅうわけさ。
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次に、アルビレックス対レッズ。
興梠慎三は、本当に、よく「あそこ」まで走り込んだ。
もちろん、決勝ゴールのシーンだよ。
李忠成がスルーしたボールをダイレクトでブチ込み、決勝ゴールを奪った興梠慎三。
その最終勝負プロセスでの、興梠慎三のアクションに、強烈な意志を感じたんだ。
まさに、ボールがないところでの動き(ストライカーの感性!?)が光り輝いたってなシーンだった。
中盤で阿部勇樹からパスを受け、それを関根貴大へおくったのは、興梠慎三。
その時点で、最前線には、李忠成とズラタンがスペースを埋めている。でも・・
そう、興梠慎三は、ドリブルで突っ掛けてくる関根貴大の(ニアポスト)サイドへ、李忠成が、スッ、スッと「寄せていく」ことを確信し、自身は、その李忠成の動きによって空いたゴール前スペースへ動きつづけていたんだ。
もちろん関根貴大からのパスを受けた李忠成は、相手ディフェンダーに身体ごとハードマークされているけれど、その李忠成もまた、そんな興梠慎三の「スペースランニング」を明確にイメージしていたに違いない。
だからこその、李忠成の決定的な「スルー」だったと思うわけだ。
ゲーム全体としては・・
完璧にゲームを支配していたのは、皆さんも観られた通り、レッズ。
それでも、(完璧サバイバル状況にいる!)アルビレックス守備の、身体を張ったダイナミック「デュエル」に、どうしてもスペースを突いていけない。
アルビレックス守備は、レッズがブチかます、ダイレクトパスを多用する組織コンビネーションを抑えるために、完璧なイメージトレーニングを積んだだろうね。
それこそが、ゲーム戦術。そして、確かに功を奏していた。
そしてゲーム終盤の後半43分。
アルビレックスが、粘りのディフェンスから繰り出した、レオ・シルバ主導のサイド攻撃と一発勝負のクロスボールで決定的ゴールチャンスを創りだしたんだよ。
そう、西川周作のスーパーセービングアクションで弾き出したヘディングシュート・・。
まあ、そこまでのゲーム展開は、忍耐というコンセプトをやり抜いた(!?)アルビレックスに軍配が挙がりかけていたとも言えそうだね。
それでも・・
そう、そのギリギリで西川周作が弾き出したヘディングシュートの直後に、前述の決勝ゴールが飛び出したっちゅうわけさ。
やはり、「それ」は、チームに息づく、何か「特別なマインド」の為せるワザだったように感じる。
そう、勝者のメンタリティー。
それって、やっぱり、攻守にわたって、まさに主体的に繰り出していくハードワークの量と質(=強烈な自己主張)そのものとも言えるのかもしれないね。
とにかく、グラウンドに出た選手たちが、(ミハイロのチーム戦術イメージを基に!)自分たち自身で考え、工夫し、勇気をもってリスクにもチャレンジしていくという姿勢が映える今のレッズは、まさに、「勝者」に相応しいチームじゃないか。
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- あっと・・
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ところで、ワケの分からない、1.ステージ、2.ステージ、そしてチャンピオンシップ・・という「興行」について。
- 昨シーズンの「J」は、本当にツキに恵まれた。
- 何せ、年間最多勝ち点チームというリーグ頂点に立ったサンフレッチェが、「興行チャンピオン」にも輝いたわけだからね。でも、昨シーズンの二位クラブは、ガンバ大阪なんだってサ。要は、「興行チャンピオンシップ準優勝チーム」ということらしい。
- まあ、皆さんも感じられている通り、とても、変。まあ、協会側は、この不自然なリーグシステムを「まだ」つづけるつもりらしいけれど・・サ。フンッ。
皆さんもアグリーだと思うけれど、「J」に関わっているサッカー人は、絶対に、『年間最多勝ち点チーム』を目指さなきゃいけないんだよ。
まあ、以前の「2ステージ制」とは違い、昨シーズンから始まった「今回の興行」では、シーズンが終了したとき、『年間最多勝ち点チーム』が一番エライってことになることだけが、救いかな。
ということで、その後のトーナメント(チャンピオンシップ)は、まさに「興行」。
そして「J」の歴史には、『年間最多勝ち点チーム』と『興行チャンピオン』の両方が刻み込まれる(刻み込まれなきゃいけない!)。そうじゃなきゃ、10年、20年後に、「昔」と比べられる、同じ基準のチャンピオンがいなくなっちゃうわけだからね。
だから、サッカー人だけじゃなく、読者の皆さんも、『年間最多勝ち点チーム』をイメージしてシーズンを楽しむべきだと思うわけなのですよ。
この「テーマ」については、新連載「The Core Column」で発表した「このコラム」も参照してください。
- そこでは、いかに(目的が歪んだ興行の!)2ステージ制が、世界の主流フットボールネーションが築き上げた「伝統」に逆行しているのかというディスカッションを展開しました。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、新規に、連載をはじめています。
一つは、毎回一つのテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝である「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・とスタートした次第。
もちろん、トピックスのトップページには、新規に「新シリーズ」コーナーをレイアウトしましたので、そちらからも入っていけますよ。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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