湯浅健二の「J」ワンポイント


2017年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第1節(2017年2月25日、土曜日)

 

2017_J1_第1節・・まあ、長いシーズンだから、こんなゲームもあるさ・・(マリノスvsレッズ、3-2)・・(2017年2月25日、土曜日)

 

レビュー
 
・・いまモンバエルツさんは、イニシアチブを握りたかった(ポゼッションをアップさせたかった)とおっしゃいましたが・・

・・先日のゼロックスサッカーでもそうだったのですが、(地力で勝る!?)レッズと対戦したアントラーズも、もちろんイニシアチブの奪い合いに挑み、そして徐々にゲームの流れをレッズに掌握されていったんです・・

・・でも、結果として、そんなゲーム展開になったからこそ、勝負という視点では、アントラーズに有利になった・・

・・その視点で、今日も、とても似通ったゲーム展開になったと思っているんですよ・・

・・特にマリノスは、齋藤学という絶対的な「ショートカウンター・ウェポン」を擁しているじゃないですか・・

・・この試合でマリノスが創りだした、流れのなかからのチャンスは、その全てが、齋藤学の仕掛けドリブルが完璧にハマッたことがバックボーンでしたよね・・

・・モンバエルツさんは、ホントに、この試合でもイニシアチブを握ろうとしていたんですか?・・

チト長くなってしまった。そう、それは、私の質問だったんだよ。

それに対してモンバエルツさんは、例によって真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。それは、とても興味深い内容だった。曰く・・

・・そうね〜・・この試合は、ホームの開幕戦ということで、やっぱり勝つことの方がプライオリティーは高かったよね・・

・・そこには、ポゼッションというよりも、いかに強みを活かすのかというテーマもあったんだ・・

・・そう、勝つために、どんなゲーム戦術がもっとも効果的なのか・・(実は!?)それこそが、この試合での本当のテーマだったということだね・・

・・もちろんレッズのボールを奪うのは簡単ではないし、簡単には奪えなかった・・

・・だからこそ、徐々にレッズにゲームの流れを牛耳られていくなかで、自分たちの武器を、いかに効果的に活かすのかというテーマに「も」柔軟に集中できた(そのような方向性の指示を出していた!?)ということなんだよ・・

フムフム・・

正直にお答え頂いて、また、いつも素晴らしい通訳をいただいているコーチの松原英輝さんも含めて、心から感謝しますよ。

もちろん、アントラーズにしても、マリノスにしても、決して守ってカウンターといったイメージで試合に臨んでいたわけじゃない。

彼らは、あくまでもイニシアチブを握るつもりでグラウンドに立ったんだよ。でも・・

ゼロックスのコラムでも書いたけれど、この両チームは、相手が強くなればなるほど(主導権を握って攻め上がってくる相手であればあるほど!!)、勝負という視点で、とても高い確率で結果を残せるとも言えそうだね。

ということで、ゲーム。

前述したように、前半のレッズは、イニシアチブを握って攻め上がっているからこそ(!?)、相手のショートカウンターに苦しめられた。

わたしは、マリノスがブチかます、「高い位置」からの協力プレッシング守備に、舌鼓を打っていた。そこじゃ、チェイス&チェックを中心に、次、その次の協力プレッシングアクションが、ホントに素晴らしいハーモニーを奏でていた。

モンバエルツ監督とコーチングスタッフの皆さんの「ウデ」を感じていた筆者なのだよ。

そしてレッズは、ショートカウンター気味の展開から、ある程度フリーでパスを受けた齋藤学に、まさに翻弄されまくった・・っちゅうわけさ。

もちろん「それ」は、レッズにとって、とても貴重な学習機会だよ。ビデオを観ながら、しっかりと自己分析しましょう。

とにかく、齋藤学。

彼の、危険極まりないドリブルからの、シュートやラストパスは、レッズ守備ブロックが、その大迫力アクションに意識と視線を完璧に引きつけられていたからこそ、ものすごい高いレベルの最終勝負になっていたというわけさ。

そう(フェアに!)考えてみると、前半で「1点止まり」だったのは、本当にラッキーだった。

もちろん、ロングフィードからの宇賀神友弥のドリブル勝負とラストクロスによって、レッズも2度ほど決定機を創りだしたわけだけれど、それでも、チャンスの量と質という視点じゃ、前半の勝負の流れは、完璧にマリノスが牛耳っていたんだ。

でも後半は・・

そう、ミハイロのハーフタイム指示によって、柏木陽介と興梠慎三の「ダブル・シャドー」の機能性がアップしていくにしたがって、レッズのサッカーが、我々がイメージする「レベル」にまで高揚しつづけていったんだよ。

前半は、宇賀神友弥の、左サイド「しか」なかったけれど、後半のレッズは、まさに縦横無尽&変幻自在の危険な勝負プロセスで、実質的なチャンスを創りだしつづけたんだ。

内容的には、逆転から、2ゴール、3ゴールと点差が開いてもおかしくなかった。

でも・・

ミハイロも言っていたけれど、デゲネクによる、CKからのヘッドによる同点ゴールが、本当に痛かったネ。

そして終了間際には、関根貴大のビッグチャンス(相手GKと1対1!!)も創りだしたけれど、そのシュートを相手GKに弾かれ、そこからのロングカウンターから、(またまた齋藤学!!)決勝ゴールをブチ込まれてしまった。

フ〜〜ッ・・まあ仕方ない。

とまれ、柏木陽介の、チャンスメイカーとしての重要性をチームメイトが再認識したこと(彼にボールを集めることに重要性の再認識!!)・・、そしてラファ エル・シルバが結果を残しつづけていることには、ものすごく重要なコノテーション(言外に含蓄される意味)が内包されている。

特に、ラファエル・シルバ。

彼は、フロンターレの家長昭博と同様に、ダイレクトパス・コンビネーションを織り交ぜた組織サッカーに慣れようと、気合いを入れてプレーしていた(ダイレクトパスという表現については、「このコラム」をご参照あれ!)。

もちろん、攻守ハードワークにも精進する姿勢を魅せつづけながら・・ネ。

まあ、だからこそ、ラファには、家長昭博と同様に、「すこし解放された心理」で、組織プレーと個人の勝負プレーを「高次元でバランスさせる」ことを、もっと意識しなきゃいけないと思うんだ。

そこでは、ミハイロとコーチ陣による、組織と個のハイレベルバランスという視点で、ラファを「健全に解放させられる」ような心理マネージメントが大事になってくるよね。

この試合の結果は、とても残念だったけれど、サッカーの内容自体には、「確かな内実」が詰め込まれている。

要は、レッズが、これまでのベクトル上を、しっかりと進化し深化しつづけているということサ。

とはいっても、相手の(ショート)カウンターで沈められてしまうというシーンには、フラストレーションが溜まる。

でも、「それ」もまた、「産みの苦しみの一環」なんだよ。

そう、美しく勝つために・・

しつこいけれど、このテーマについては、The Core Column」で発表した「こんなコラム」「あんなコラム」を参照してくださいネ。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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