湯浅健二の「J」ワンポイント


2017年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第17節(2017年7月1日、土曜日)

 

勝ったのに、反省材料ばかりが目に付いてしまうとは・・(レッズvsサンフレッチェ、4-3)

 

レビュー
 
フ〜〜ッ!!・・この勝負展開・・まさに、サスペンスそのものじゃネ〜か・・

でも・・

そう、確かに勝ちはしたけれど、レッズのサッカー内容は、決して誉められたモノじゃなかった。

・・あんな、スクールボーイのようなプレーをしていちゃダメだ・・我々は、まだまだ、やることが山積みだ・・

ミハイロが、記者会見で、自戒を込めて語っていた。

その発言のバックポーンは、こうだ。

・・ラッキーも含めて前半で二点リードした・・

・・だから後半は、前掛かりになるサンフレッチェの攻撃をしっかりと受け止め、そこから必殺のカウンターをブチかましていく・・

・・レッズは良い(強い)チームなのだから、いくら相手が強いサンフレッチェといえども、彼らの前への勢いを「いなす」ことができなきゃハナシにならない・・

・・でも実際は、逆にサンフレッチェの、勝負ドリブルと組織コンビネーション、はたまた必殺のカウンターに「翻弄」されて逆転まで許してしまった・・

私も、そんなレッズを観ながら、「これは、重症だな・・」なんて思っていた。

「重症」の意味合い・・

もちろんソレは、攻守にわたる、ボールがないところでの動きの量と質が(要は、闘う意志が!!)減退し、それを自ら鼓舞できなかったことだよ。

例えば攻撃での、ボールがないところの動きの量と質。

たしかに前半でも、何度かは、例によっての、ダイレクトパス・コンビネーションが冴えわたるシーンはあった。

でも逆に、ミスパスで、イヤなカタチで相手にボールを奪い返されてしまうような、ジリ貧シーンも多かったんだよ。

そして・・

そう、選手たちが、徐々に、疑心暗鬼に苛(さいな)まれるようになっていくんだ。

そんな「疑心暗鬼」による典型的なグラウンド上の現象は、もちろん、ボールがないところでの動きの量と質が、目に見えて減退していくこと。

要は、ボールがないところでの動き出し(勝負のアクション)が緩慢になっていったということ。

・・アイコンタクト・・ワンツー&パス&ムーブ・・ボールがないところでの3人目、4人目のフリーランニング・・そして、それらの複数アクションが絡み合うダイレクトパス・コンビネーション・・

そんな、組織コンビネーションの「スムーズな動き」が、分断気味になっていったんだ。

それじゃ、相手守備のウラに広がる「決定的スペース」を攻略できるはずがない。

たしかにレッズは、ゴリ押しのシュートまでは行けるけれど、もっとも重要な、スペースの攻略という「当面の目標」は、ほとんど達成できなかった。

そう、先制ゴール以外のシーンでは・・

まあそこには、「ミスをするのが怖くなった・・」という、後ろ向きマインドもあったんだろうね。

だから、用心深く(臆病に!?)プレーすることで足が止まってしまう。

それじゃ、決してダイレクトパス・コンビネーションを機能させられない。

だから、ゴリ押しの「孤立ドリブル勝負」や、最前線でのボールキープが多くなってしまい、すぐに、サンフレッチェ守備の協力プレスでボールを失ってしまう。

あっと・・サンフレッチェ・・

レッズを、そんな、擬似の「心理的な悪魔のサイクル」に陥れたのは、もちろん、ものすごく忠実でダイナミック、そしてクレバーな、サンフレッチェの連動守備が素晴らしく機能しつづけたという側面もあるよ。

この試合でのサンフレッチェは、前々節のフロンターレ戦に輪を掛けて、素晴らしい内容のサッカーを魅せつづけた。

たしかに結果はついてきていないけれど、サッカーの内容は、相変わらず高いレベルにある。

そんな「強いサンフレッチェ」については、「The Core Column」で以前に発表した「このコラム」を参照してください。

たしかに、今シーズンの何試合かは悪い内容だったけれど、全体としては、「強いサンフレッチェ」のイメージは、着実に踏襲していると思っているんだ。

それに・・

順位は「あんな」だけれど、選手たちのマインドは、決して落ち込んでいない。

彼らのモラル(闘う意志!!)は、まったく衰えていないんだ。

そんな、強烈な意志と勇気を象徴していたのが、(攻守にわたる組織&個の!)スーパープレーをブチかましつづけた柏好文だった。

ということで、いまのサンフレッチェの順位は、典型的な「Jの不思議現象」というわけさ。

私は、後期に入ったら、そんなサンフレッチェの状況が、まったく違うモノへと変容していくに違いないと確信している。

今日のサンフレッチェの立派なサッカーは、そのことを象徴していた。

あっと・・レッズ・・

次は守備だけれど・・

そこでも、やはり、ボールがないところでのプレーの量と質が、反省材料だった。

失点シーンだけを観ても、互いに譲り合ったり、ボールウォッチャーになってしまったり、マークが甘くなったり、局面デュエルで負けちゃったり・・等など、目も当てられなかった。

そして自信をなくし、攻守にわたって、ボールがないところでのプレーから、積極性が失われてしまった。

要は、前向きの(勝負プレーに対する!)イメージングの内容が、どんどん貧弱になっていったということだね。

イレギュラーするボールを足で扱うことで、不確実な要素が満載のサッカーは、ホンモノのチームスポーツ。

だから、一人でも、ホントに一人でも、消極的に「アナタ任せ」になったり、「アリバイプレー」に奔ったら、チームは、すぐにでも崩壊しちゃうんだよ。

ちょっと、カッカッしながら、キーボードを叩きつづけた。

とにかく、前節コラムで取り上げた「覚悟」は、常に、ボール奪取勝負に現れるということも、言いたかった。

そう、チームの「フォーム(=物理的・精神的なチームの調子!?)」については、ボールをめぐる局面デュエルのコノテーション(言外に含蓄される意味)が問われてくるっちゅうわけさ。

「そこ」での、個々のデュエルのコノテーションが低次元だったら、もちろん周りのチームメイトも「疑心暗鬼」にかかって、勇気あるプレーなど出来るはずがない。

そしてチーム全体が、心理的な悪魔のサイクルに落ち込んでいっちゃう。

そう、この試合の後半のようにね。

とはいっても・・

そう、それでもレッズは、勝ち切った。

もちろん、運も味方につけた。

ミハイロに、立ち話で、「こんなふうに神様を味方に付けたのは、初めてのことじゃネ〜か・・」なんて冗談を言った。もちろんミハイロも、大きく頷いていたっけ。

さて・・

ということで、次の水曜日は、天下分け目のフロンターレ戦だぜ。

それまで選手たちが、「覚悟のレベル」を、どのくらい充実させられるか・・

見物じゃありませんか。

私は、「その試合」を最後に、サッカーコーチ国際会議も含めて、ヨーロッパへ出かけてきます。帰国は3週間後かな。

とにかく私は、ミハイロ・ペトロヴィッチのサッカー哲学を、これからもサポートしていくつもりです。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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