湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2017年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第23節(2017年8月19日、土曜日)
- レッズは順調に再生している・・相手が強いFC東京だったからこそ、そのことが身に染みた・・(レッズvsFC東京、2-1)
- レビュー
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- たしかにレッズの守備は、大きく「再生」している。
後半は、そのテーマだけにフォーカスしながらゲームを観戦していたんだよ。
いや、そのテーマにフォーカスして観戦せざるを得なかった・・と言った方が正確かな。
何せ、何度かの決定的カウンターチャンスを潰しつづけたレッズだったから、最後の最後まで一点を死守するっちゅうゲーム展開に手に汗握らざるを得なかったわけだから・・。
・・いや・・別の捉え方もある・・それは・・
そんなギリギリの勝負展開になったからこそ、レッズ守備が本当の意味で再生していることを、深く体感できたという視点。
ということで、例によって、「脅威と機会は表裏一体・・」ってな普遍的コンセプトに思いを馳せることになるのかな。
もちろん、後半のゲーム展開が、レッズにとっての貴重な「学習機会」になった背景には、相手が、とても優れたサッカーを展開する強豪のFC東京だった・・という側面もあるさ。
だからこそ、レッズ守備の再生&進化&深化の「内実」を評価するには格好の相手(ゲーム状況)になったということサ。
そして思った。たしかにレッズの守備は、明確に改善している。
もちろん最後は、「最後の半歩を伸ばし切っている・・」というテーマに帰着する。
物理的、心理的な多くのファクターを内包する「最後の半歩」というテーマについては、「このコラム」を参照してください。
とにかく、ボールがないところでの、必死のマーキングとか、最終勝負でのカラダを投げ出したタックルやブロック、また、ハイボールに「最初に」アタマで食らいついていくなど、闘う意志が、まさに前面に押し出されていたコトだけは確かな事実だった。
とても、頼もしく感じた。
それは、とりもなおさず、堀孝史監督のストロングハンド(選手たちとの、とても落ち着いて深く、誠実な対話ベースの心理マネージメント!?)の為せるワザだと思う。
ということで・・
この試合については、あと二つだけテーマをピックアップしたい。
一つは、FC東京の橋本拳人がブチ込んだ同点ゴール。そして、その8分後にレッズの興梠慎三が叩き込んだ決勝ゴール。
この二つのゴールともに、相手ディフェンスブロックの決定的スペースを完璧に突いた、本当に素晴らしいスーパーゴールだったんだよ。
だから、備忘録としてピックアップしておかなきゃいけない。
本来だったら「5秒間のドラマ・・」的に表現すべきなんだろうけれど、ここでは、完璧に自分たちのイメージングの「裏スペース」を攻略され、一敗地にまみれた両チームディフェンダーの貴重な学習機会という視点で語りましょう。
FC東京の同点ゴールシーンでは、レッズの菊池大介と(基本的にはスーパーな補強と高く評価しなきゃいけないけれど、そのシーンでは、やられちゃった!)マウリシオ。
二人とも、同点ゴールの後、手で顔をおおっていたネ。
また、レッズの決勝ゴールシーンでは、FC東京ディフェンスブロックの数人が、レッズがブチかました、ダイレクトパスによる決定的コンビネーションで、完璧にブッちぎられた。
そこでは、興梠慎三のボールがないところでの「粘りの!」決定的フリーランニングが秀逸の極みだった。
もちろん、その興梠慎三の眼前スペース「まで」、ダイレクトでボールを動かしつづけたレッズの組織コンビネーションも、まさに「夢のプレー」だったわけだけれど・・。
ということで最後になったけれど・・
そう、チト文句を言いたい。
後半、レッズにとって厳しい時間帯に交替出場した矢島慎也。
たしかに、攻撃に特筆の才能を秘めている。でも彼は、「あの」ディエゴ・マラドーナじゃない。
だから、もっと、もっと、攻守ハードワークに汗をかかなきゃいけない。
あのプレー内容じゃ、いくら決定的なポスト直撃シュートを放ったとしても、エキスパートは高く評価しない。
あの時間帯に、「あの」状況でグラウンドに立ったのだから、まずやらなきゃいけないのは、守備ハードワーク以外にないじゃないか。
でも・・
そう、「トンコ、トンコ・・」っちゅう怠惰なリズムで、相手ボールへの(相手の次のパスレシーバーへの!)寄せの勢いが、まったく足りない。
また局面デュエルでも、粘りがない。
FC東京にブチかまされた「バー直撃シュート」の元凶は、彼の、まったく「追い付かないタイミングでのヘディング競り合いチャレンジだった。
私にとって、「あれ」は、まさにアリバイのヘディング競り合いチャレンジでしかなかった。
観ていて、腹が立った。
何せ、その直後に、「ソイツ」に、バー直撃シュートをブチかまされちゃったんだから・・ね。
長澤和輝もそうだけれど、才能に恵まれた矢島慎也、長澤和輝といった新戦力は、まず、謙虚に、攻守ハードワークの(自分自身の)内実を見つめ直さなきゃいけない。
それを怠ったら、すぐに、詩を忘れたカナリヤになって、鮮烈からも脱落しちゃう。
とにかく私は、あれ程ハイレベルな才能に恵まれているミッドフィールダーだからこそ、とても惜しいと思うんだよ。
ファミリーや恋人、奥さん(!?)など、誰でもいいから、彼らの感性に、キツ〜いクサビをブチ込んでくださいな。
あっと・・
チームメイトにも、「攻守ハードワークを探しつづける」という視点で、素晴らしいブレイクスルーを果たした青木拓矢が、いるじゃありませんか。
彼には、「きついクサビの心理的刺激」を期待するのは酷なんだろうか・・
とにかく、才能が「潰れていく」のを体感することほど厳しいコトはないからね。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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