湯浅健二の「J」ワンポイント


2017年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第26節(2017年9月17日、日曜日)

 

レッズの、組織パスによる決定的スペース攻略が秀逸だった・・(ジュビロvsレッズ、1-1)

 

レビュー
 
フウ〜〜ッ・・

これで、2試合つづけて、「こんなゲーム」になってしまった。

そう、内容では凌駕しつづけたけれど、それを結果に結びつけられかなかった・・という現象。

たしかにジュビロは、流れのなかから、二度ほど「ビッグチャンス」を創りだしたけれど、チャンスシーンの量と質・・という視点じゃ、レッズが、まさに完璧にゲームを牛耳ったんだよ。

「レッズがゲームを牛耳った・・」という表現のバックボーン・・

たしかに、フォーバックを基調にした「再生」守備ブロックも、例によって立派に機能したけれど、わたしは、それよりも、素晴らしいチャンスメイクを魅せつづけた攻撃に着目したい。

特に、チャンスメイクプロセスの「量と質」という視点。

攻撃の目的は、シュートを打つこと。ゴールは単なる「結果」にしか過ぎない。

その目的を達成するための「当面の目標イメージ」が、決定的スペースの攻略っちゅうわけだ。

そう、相手最終ラインの「背後スペース」を攻略して創りだす決定的チャンス・・

ということで、決定的スペースを攻略する手段(プロセス)だけれど、タイプとして、それには二つの種類がある。

そう、一つは組織パス、そしてもう一つが勝負ドリブル。

もちろん、実際の仕掛けプロセスは、その二つの「混成」だよね。

でも、実際に決定的スペースを攻略したプロセスにおいて、「どちらが」メインの役割を果たしたのかは、観ていれば、ある程度は明確に分類できるんだよ。

このテーマについては、サッカーの根源テーマを扱う「The Core Column」で、以前に発表した「このコラム」を参照してくださいね。

ということで、決定的スペースを攻略するための二つの手段という視点・・

私は、「いまの」堀孝史レッズの仕掛けプロスでは、より「組織テイスト」が強くなっている・・という見方をしているわけサ。

宇賀神友弥と関根貴大の離脱が大きい!?

期待の駒井善成も、フォームを崩しているらしい!?

だから、レッズ仕掛けの真骨頂の一つだった、サイドからの勝負ドリブル突破シーンが、とても少なくなっている!?

まあ、いろいろと見方はあるんだろうね・・

でもこの試合でのレッズは、そんな効果的ドリブル勝負のマイナスを補って余りあるほどハイレベルで効果的な「組織パスでのスペース攻略」を魅せつづけたんだよ。

・・そう、「天才」興梠慎三や、「ボールがないところで勝負を決めてしまう芸術家」武藤雄樹・・

・・攻守ハードワークを「積極的に探す」ことに対する意識と意志が、何倍にも膨れ上がっている矢島慎也・・

・・ちょっと左サイドに「張り付きすぎ」ではあるけれど、それでも、効果的クロスだけじゃなく、中央ゾーンへのドリブル勝負&ミドルシュートなど、調子は上向きの高木俊幸・・

そんな強者どもが、格段の存在感を発揮したんだよ。

そう、ドリブル勝負でゴールライン際のゾーンを攻略するのではなく、あくまでも、スペースランニングと最終勝負のパスによるチャンスメイク・・

でもその内実は、「優れた」ってな表現では追い付かない、別格の実効レベルを秘めていた。

言うまでもなく、そのラストパスには、勝負のラストスルーパスだけじゃなく、狙いすましたクロスボールや浮き球のラストミドルパスなんかがある。

それら全てで、レッズが抜群の存在感を魅せつけたっちゅうわけだ。

そこでは、「ラストパス」を送り込む方と、決定的スペースへ「抜け出す」選手との、まさに絶妙の「あうんの呼吸」があった。

瞬間的で効果的な「アイコンタクト」など、彼らが魅せた素晴らしい「イメージ・シンクロ・コンビネーション」には、ホレボレさせられたものだ。

もちろん、彼らが創りだした、少なくとも「4本」はあった決定的チャンスのうち一つでも決められていたら、順当なアウェー勝利・・という結果も手中にしていたでしょ。

あっと・・、そんな決定的スペースの攻略シーンでは、唯一サクセスフルだった興梠慎三の同点ゴールのコトを忘れるわけにゃいかない。まあ、それが、せめてもの慰めということか・・

ということで、この試合でも、堀孝史レッズが、正しいベクトル上をひた走っていることを確かめられたというニュアンスの締めで終わることにしますよ。

・・矢島慎也や青木拓矢に代表される、これまでは、どちらかといったら「日陰」だった選手たちを、表舞台に引っ張り出した・・

・・そして、そんな彼らに、勝負マッチの体感を積み重ねさせていくなかで、彼ら自身の意識と意志(勇気や責任感など!?)のレベルも格段にアップしていった・・

・・またそのことで、チーム内におけるフェアな(心理的&物理的!)競争環境が、より健全に活性化された・・

・・まあ、ミハイロのときも、スリーバックとフォーバックの併用だったから問題なかったけれど、このところ適用しているフォーバックも、抜群の機能性を発揮しはじめている・・

・・そして何といっても、堀孝史によって抜群にアップした守備の安定感によって、前述したように、チャンスメイクプロセスの「内実」も、大きく進化している・・

・・願わくば・・

・・前述した、サイドからのドリブル突破、アバウトなアーリークロスや爆発ミドルシュートなどといった、仕掛けの変化にも、もっと積極的に取り組んで欲しい・・

ということで、次は、アントラーズとの天皇杯。

この勝負マッチは、かならず現地で観戦しま〜す。

============

最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


===============

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

==============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]