湯浅健二の「J」ワンポイント


2018年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第26節(2018年9月16日、日曜日)

 

レッズは、ホントによく勝ち切った・・(マリノスvsレッズ、1-2)

 

レビュー
 
・・ふざけるなよっ!!・・

・・シのゴの言ってネ〜で、もっと走れ・・オメ〜ッ!!・・

そんな怒号が聞こえてきそうなシーン(雰囲気!?)だった。

前半、後方から、大きく決定的スペースへ「ロングパス」をフィードした槙野智章。

それに対して、前線のマルティノスが、手で足許を示しながら、「オイ・・ここだよ・・足許パスを、よこせよ・・」なんて感じのジェスチャーをみせたんだ。

そんな態度に、槙野智章がキレたっちゅうわけだ。

もちろん、そんな「やり合い」は、チームにとって、ネガ・ポジ両面の刺激になる。

とはいって、ネガ・ポジ、どちらのニュアンスの方が強かったかは、チームのインサイダーじゃないから分からないけれど・・

それにしても・・

そう、槙野智章がブチかました「怒り」には、チーム内部にくすぶる、マルティノスに対する不満がにじみ出ていたのかもしれない・・って感じていた筆者だったのだよ。

そういえば・・

W杯の中断期間明けの最初のゲーム(ホームのグランパス戦)で先発したマルティノスについて、「ポジティブなイメチェンを果たした・・」なんてニュアンスの内容を書いたっけ。

もちろん、「そこまで態度をポジティブに進化させた」オズワルド・オリヴェイラの、心理マネージャーとしての手腕に対する賞賛も含めてネ・・。

でもその後は、ファブリシオの存在感アップによって、出番がなくなっていった。

それでも、普通だったら、日常のトレーニングから、自分の価値をチーム内でアピールすることに全力を尽くすでしょ。

そんなポジティブな努力の姿勢が、チーム内で評価されていれば・・

少なくとも、チームメイトの共感は得られているはず。

でも・・

そう、この試合でマルティノスが示した攻守ハードワークとリスクチャレンジの内実は、観ているコチラも深く落胆するほど、まさに低調そのものだったんだ。

たしかに、立ち上がりの数分間は、攻守ハードワークの全力スプリントを「やろうとはしていた」けれど・・サ。

でも、そんなポジティブなハードワーク姿勢は、すぐに消え失せ・・

そして、冒頭の「文句ジェスチャー」というネガティブオーラをまき散らす始末。

私は、そのマルティノスと槙野智章の「やり合い」を観ながら、マルティノスの本質は、何も変わっていないということなんだろうな・・なんて、かなり落胆していた。

そんなマルティノスに対して・・

そう、決勝ゴールをブチ込んだ、武藤雄樹。

その、ものすごく高いレベルで安定しまくっている攻守ハードワークとリスクチャレンジ姿勢には、ホントに、アタマが下がる。

だからこそ、「あの」決定的スペースへの飛び出しと、冷静なゴールゲットに、心からの拍手をおくっていたんだよ。

ホントに、良かった〜〜・・これで彼の不断の努力が報われた〜〜・・ってね。

たぶんチームの全員も、武藤雄樹の決勝ゴールを心から祝福していたに違いない。

あっと・・ところで・・

観る者を魅了した、武藤雄樹の決勝ゴールシーンだけれど・・

そこで展開した、決定的な飛び出しと、決定的なスルーパスの「シンクロ」というテーマ。

それについては、これまで何度か書いてきたよね。

そう、ギリギリのタイミングで飛び出す決定的フリーランニングと、それに合わせる(引き出され、呼び込まれる!?)決定的スルーパスのコラボレーション。

実際には、その決定的スルー(浮き球のロング!?)パスは、ゆっくりとしたバックパスや横パスを、ダイレクトで「ドカンッ!」とフィードするようなタイミングが、とても成功率が高いと思う。

でも・・

そう、これまでレッズは、そんな成功率がとても高いチャンスシチュエーションを逃すシーンがつづいていたんだよ。

だから、コラムのなかで、何度も指摘した。

そして・・

そう、このゲームでは、そんな成功率が高い「一発コンビネーション」への意識が、徐々に高まりつつあるって感じさせてくれたんだ。

もちろん、その仕掛けプロセスを成功させるためには、選手たち同士の「話し合い」によるイメージシンクロ構築が決定的に重要なファクターになる。

監督、コーチは、ヒントを出すだけで、後は、選手たちに任せるのだ。

そんなマネージメントプロセスにも、優れたプロコーチの「指先のフィーリング」がいかんなく発揮されるっちゅうわけさ。

ということで、最後に・・

「レッズは、ホントによく競り勝った・・」という総合評価のバックボーンのなかで、もっとも大事なポイントに言及しておこうかな。

それは・・

そう、言うまでもなく、守備における、闘う意志のポテンシャルの高さだよね。

だから、ブロックのポジショニングバランスだけじゃなく、守備組織を「ブレイクする」タイミングや、その内実が、抜群に優れていたんだ。

もちろん、失点シーンも含め、何度かは、ウラを突かれるなど、「やられてしまったシーン」もあったよね。

でも、多くの勝負シーンで、しっかりとしたカバーリングが機能していたし(着実に最後の半歩も出されていた!!)、ヘディングにしても、タックルにしても、はたまた局面デュエルにしても、決して負けていなかった。

それは、観ているこちらも感心するほど、とても頼もしいギリギリの勝負プレーだった。

あっと・・そうそう・・もう一つだけ・・

マリノスのポステコグルー監督が、こんな興味深い主張を展開していこと。

それは・・

・・オレ達のサッカーがリスキーだって??・・

・・いや、オレは、まったくそうは思っていない・・

・・我々が志向するのは、ゲームの流れをしっかりと掌握することなんだ・・

・・そのゲームコントロールさえしっかりと機能していれば、リスクを最小レベルに抑え込むことができる・・

・・実際、この試合でのレッズは、そう簡単にはチャンスを創りだせなかっただろ!?・・

質問は・・

・・これから、降格の危機と闘わなければならないけれど、今までのように、リスキーなサッカーをつづけるのか、それとも、よりセキュア(安全な!?)サッカーに転換していくのか?・・

たしかに「ある意味で」的を射た質問ではあったけれど・・

そう、ポステコグルーは、心から、いまのマリノスのサッカーが「リスキーなモノ」だとは思っていないんだよ。

筆者は、そのベーシックなチーム戦術を、こう考える・・

・・全員が、攻守にわたってダイナミックに連動しつづけられれば(運動量が豊富な攻守アクションが連動しつづければ!?)、積極的に、人数を掛けて仕掛けていっても、次の守備でバランスが崩れることはない・・

・・もちろん、そのためには、素早く効果的な攻守の切り替え、全力スプリントを積み重ねる攻守ハードワークをつづけなければいけない・・

・・ポステコグルーは、そんな原則論を言っている・・

・・そう、それが十分に機能すれば、いまのマリノスのサッカーの「リスキー度合い」は、決して高くないということだね・・

・・そして実際に、何度も、彼ら本来の攻撃サッカーで、まったく危なげなく相手を圧倒してしまうゲームを魅せつけることも多かった・・

フムフム・・。

ということで・・

「美しく勝つサッカー」を、高い次元で実現していくための絶対ベース。

もちろんそれは、強烈な意志(豊富な運動量と≒イコール!?)に支えられた、攻守ハードワークとリスクチャレンジにあふれる積極的な攻撃サッカーだよね。

そう、内容と結果を、できるかぎり高い次元でシンクロさせるために・・

チト「まとまり」に欠けるコラムだけれど、いつものように、「エイヤッ!!」でアップしちゃいま〜〜す。悪しからず・・

へへっ・・

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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