湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2018年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第2節(2018年3月3日、土曜日)
- 渡邉晋ベガルタは正しい発展ベクトル上をひた走っている・・また、久保建英についても少しだけ・・(FC東京vsベガルタ、0-1)
- レビュー
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- さて、どのテーマからハナシを始めましょうか。
フム〜・・
まあ、やっぱりゲーム内容から、「サラッ」といきますかネ。
要は・・
ベガルタが、立派な、ホントに立派なチームワーク(攻守ハードワークの積み重ね)で、順当に勝ち点3を奪い取った・・っちゅうテーマから入らざるを得ないっちゅうことです。
そりゃ、「地力」ではFC東京に軍配が挙がる。
特に前半は、明らかに優っている「個の能力」をベースに、攻守ハードワーク豊富な良い組織サッカーを魅せ、何度かチャンスも創りだした。
でも、ベガルタの渡邉晋が、選手たちの戦術的な対処イメージを(!?)うまく修正したことで、ゲームの流れが、徐々にベガルタ優勢という状勢へ変容していったんだ。
この変容プロセスのコノテーション(言外に含蓄される意味)には、とても深い意味合いが内包されているよね。
たしかに、選手たちの「戦術的なカタチ」に関するイメージを修正することで、ゲームの流れが良くなったわけだけれど・・
そうなんだよ。
・・そんな修正は、選手たち自身が、ゲームのなかで出来なきゃダメでしょ・・
・・ってな、コチラのネガティブマインドに、すかさず渡邉晋が、こんな一言を投げ返すんだ。
・・たしかに、大きな戦術イメージの修正はベンチからやったけれど、グラウンド上での実質的な微調整は、選手たち自身でやったんですよ・・
・・そんな自主的な分析や決断ができなければ、良いチームになんて、なれるはずがないじゃありませんか・・
・・わたしは、選手たちを、そのように(主体的に、勇気をもって攻守のリスクチャレンジを繰り返せるように!?)指導しているつもりなんです・・
フムフム・・
とにかく、このゲームでのベガルタのサッカーを観ていたら、そんな渡邉晋の主張が、ものすごい説得力をもっていることを認めざるを得ないでしょ。
それほど、この日のベガルタが魅せた、忠実&創造的な攻守ハードワークの積み重ねは、観ているすべての者に感銘を与えたと思うよ。
ということで、このゲームの結果については、長谷川健太さんには悪いけれど、ベガルタが、フェアに勝ち取ったと評価する筆者なのでした。
ところで・・
私は、常日頃、ベガルタの渡邉晋さんが、とても良い仕事をしていると思っているんだ。
そう、優れたストロングハンド(プロサッカーコーチ)として・・ネ。
たしかに、選手たちの能力レベルを「単純総計」するチーム総合力という視点では、いまのベガルタは、そんなに高くないかもしれない。
でも、選手全員が、まさに主体的に、そして全力で「攻守ハードワーク&リスクチャレンジ仕事」を探しつづけるんだよ。
そりゃ、良い(高質な!)組織サッカーへと進化&深化していくのも道理ってことだね。
この、渡邉晋の「良い仕事」というテーマについては、昨シーズンの「ルヴァンカップ準決勝」で、こんなコラムをアップしたから、そちらもご参照あれ。
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・・さて・・次のテーマ・・
それは、言わずと知れた久保建英。
たしかに彼が入ってから、それまでジリ貧だった、FC東京の「スペース攻略プロセス」が明らかに活性化した。
また彼自身も、一度だけ、決定的チャンスの流れに絡んでいけた。
でも・・
そう、全体的には、彼が「良いカタチでポールを持てた」シーンは、ホントに、数えるほどしかなかったんだ。
それには、まず最初に、久保建英自身の、ボールがないところでの動きの量と質(攻守ハードワーク)の内実に課題がある・・という視点を持たなきゃいけない。
それと、もう一つ。
そう、「大人のプロ」連中による、久保建英の天才を、うまく活用し尽くすことで、より多くのカネを稼ごう・・っちゅう意志が、まだまだ統一されていないという視点。
それじゃ、ハードマークされる久保建英が、良いカタチでパスを受けられない(ボールを持てない)のも当然の成りゆきっちゅうわけさ。
さて〜・・
ところで・・
私は、1976年にドイツ(ケルン体育大学)へ留学したんだけれど、その一年後に、「あの」奥寺康彦が、1.FC.ケルンとプロ契約を結んだんだ。
だから彼とは、今でも、「戦友」とも言える良い関係にある。
そのことについては、「My Biography」シリーズで書いたコラムを参照していただきたい。
そして時を同じくして、もう一人、注目に値するヤングプレイヤーが、ベルリンからやってきた。
ピエール・リトバルスキー。
言わずもがなの、ドイツサッカー史に残る、ボール扱いの超天才。
そのときピエール・リトバルスキーは、17歳か18歳だったと思う。
今でも、彼について、奥寺康彦とビールを飲みながら話したコトを鮮明に思い出す。
当時の奥寺康彦、曰く・・
・・アイツ・・ホントに上手いよ・・一度ボールをもったら、ドイツ代表のディフェンダーでも、そう簡単にはボールを奪えないんだよ・・
でも・・
そう、彼もまた、最初の頃は、良いカタチでパスを受けるのに苦労していたんだ。
その背景には、物理(戦術)的な側面だけではなく、大人のプロによって認められるかどうかといった、心理・精神的な部分もあった。
そのときの監督は、言わずもがなの故ヘネス・ヴァイスヴァイラー。そう、ドイツサッカー史に燦然と輝くスーパープロコーチだ。
もちろんヘネスは、その課題を解決するための「入り口」として、ピエール・リトバルスキーに対する、戦術&心理マネージメントからアプローチしていった。
そう、かなりキツイ言葉で、彼をモティベートしたんだよ。
そのことがあって、ピエール・リトバルスキーの、ボールがないところでの動きの量と質が、どんどんとアップしていったんだ。
もちろん攻守ハードワークの実効レベルも、目に見えてアップしていった。
それだけではなく、同時にヘネス・ヴァイスヴァイラーは、大人のプロ連中に対しても、戦術&心理的なマネージメントを施したんだ。
ピエール・リトバルスキーにボールをわたすことが、いかにチームにとって価値があることなのかを、分かりやすく、そして「しつこく」言いきかせたんだよ。
そして・・
そう、そんな戦術&心理マネージメントがあったからこそ、「あの」世界のスーパードリブラーが生み出されたっちゅうわけさ。
そして私は・・
そんなピエール・リトバルスキーが魅せた「本物のブレイクスループロセス」の体感を、いまでもしっかりと記憶タンクのなかに収納しているっちゅうわけだ。
そして、だからこそ今・・
久保建英を(彼が取り組んでいる苦難のプロセスを!)観ながら、その時の体感が、よみがえってきたというわけさ。
長谷川健太監督は、そんな私の「長〜い質問」に対して、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれたっけね。
曰く・・
・・おっしゃりたいコトは良く分かりますし、今日のタケ(久保建英)が、十分に機能できていなかったことも事実だと思います・・
・・でも、そんな課題を解決できるかどうかは、結局は本人の姿勢(意識や意志の内実!?)にかかっていますよね・・
・・いまの彼は、自分自身で、チームにおける存在感をアップさせていくしかないと思うんです・・
・・まあ今は、ルヴアンカップもあるし、そこでのゲームを通して、チーム内のポジションを高めていくプロセスを見つめながら(正しいブレイクを!?)期待しましょう・・
そう、そんな(戦術&心理マネージメントの)アプローチが正解だね。
聞くところによると、久保建英のインテリジェンスレベルは、とても高いとのこと。
だったらなおさら、久保建英自身に、さまざまなチャレンジプロセスを(トライ&エラーのプロセスを!?)委ねるのがいいと思う。
もちろん、そこでの長谷川健太監督の、中心的なミッションは、忍耐。
アプローチされる選手の学習(心理)プロセスは千差万別だからこそ、監督は、明快な目標設定と最低限の個別指示、乞われた場合に出す核心のアドバイス以外は、選手たち自身によるトライ&エラー(学習プロセス)に託すのさ。
多くの賢人が異口同音に言っている。
押しつけない忍耐こそが成功をもたらす。特に、創造性が求められるサッカーにおいては・・。
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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