湯浅健二の「J」ワンポイント


2019年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第10節(2019年5月4日、土曜日)

 

サッカーにおける魅力のコノテーション(言外に含蓄される意味)が満載の、スーパーなエキサイティングマッチだった・・堪能した・・(ベルマーレvsグランパス、1-1)

 

レビュー
 
いや、すごかったネ〜〜。

互いに、勇気をもって(強烈な意志に押し出されるように!?)攻撃的に仕掛け合った勝負マッチ。

堪能した。

前半はベルマーレがペースを握り、先制ゴールまで決めた。

そして後半は、一点を追うグランパスが地力を発揮して(!?)イニシアチブを握り返し、フリーキックからのヘディング同点ゴールを奪った後も、観ている方が「アッ!!」っと息を呑むほどの、2本のポスト直撃弾をブチかました。

・・まあ、リードを奪われている方が、より積極的に仕掛けてくるのは、当然の展開ですから・・

後半にイニシアチブを握られ、同点ゴールまで献上したベルマーレのチョウ・キジェが、そんな風に冷静に分析していた。

このゲームについては・・

まず何といっても、両チームが、あれほど積極的に(人数を掛けて!)仕掛けていったにもかかわらず、次のディフェンスのバランスが大きく崩れなかったというポイントから入りましょう。

もちろん、だからこそ、素晴らしくダイナミックで高質な勝負マッチへと成長したんだけれど・・ネ。

その、「バランスが大きく崩れなかったコト」について、KFS(キー・ファクター・フォー・サクセス)を聞いたんだけれど、風間八宏は、「言いたくないネ〜〜ッ」って、しらばっくれていた。

でも、肝心のサクセス要素のヒントはくれたよ。

・・まあ、それには、チーム戦術的なイメージ準備もありますよね・・

・・そのイメージの枠組みのなかで、選手たち自身が、ラインの構成や位置、そしてそのバランスなどを、素早く、効果的に調整しつづける・・

・・まあ、そんなことも要因の一つって言えますかネ・・

またまた、煙に巻く〜〜・・。

たしかに、選手たちが、ある特定の「バランスイメージの枠組み」をしっかりと意識しながらプレーしているのは感じられた。

でも・・サ、風間八宏の発言のなかで、もっとも大事だったのは、そのバランスを、選手たち自身がマネージしているっちゅうことなんだ。

これは、強いチームを創る上で、ホントに大事な要素なんだよ。

風間八宏は、「とても鋭いストロング・ハンド」なんだけれど、そんな能力が、もっとも活かされる領域の一つが、選手たちの「主体性マネージメント能力アップ」なんだ。

その視点で「も」、とにかく風間八宏は、素晴らしい仕事をしているっちゅうことだね。

あっと・・

それ以外でも・・

たとえば、米本拓司とジョアン・シミッチというスーパーなダブルボランチの存在が(その相互カバーの機能性が!)あったことは疑いの余地なしなんだ。

この二人のなかでは、攻撃はシミッチ、守備での「バランサー」は米本拓司・・っちゅう役割分担イメージがあるんだろうね。

それもまた、「イメージ・シンクロ」という、戦術&心理マネージメントの重要なテーマなんだ。

とはいっても、たまには米本拓司も、チャンスを見計らい、「エイヤッ!」ってな感じで、最終勝負プロセスに絡んだりする。

もちろん、「それ」もまた、選手たち自身の判断と、勇気をもった決断&行動の一端。

まあ、とにかく、風間八宏の、プロコーチとしてのウデに、拍手を送りましょう。

あっと・・

その「ウデ」だけれど、大住良之さんが指摘していた、「ジョーの代わりにガブリエル・シャビエルを投入する」という決断にも、如実に現れていたと思うよ。

大住良之さんは、「(ビックリすることに!?)それで、攻撃の流れが好転しましたよね・・それに対するコメントを?」なんて聞いていた。

いい質問だね〜・・

それに対して風間八宏・・

・・ジョーは疲れていたって感じたし・・

・・まあ、あの交替は、わたしの感覚的な決断だったっていうことで、ご理解いただければ・・

またまた、ケムに巻く〜〜・・

まあ、風間八宏には、確信があったんだろうね、「勝ち切るためには、この交替が必要だっ!」っていう確信がネ・・。

そして、その決断が、「あの」2本のポスト直言弾を生み出すなど、とても効果的な最終勝負プロセスを生み出したんだ。

______

ということで、ここからは、チョウ・キジェのベルマーレ。

彼らのサッカーを観るのは、第8節のフロンターレ戦(アウェー)以来。

まず、「そのときのコラム」をご覧あれ。

その試合は、内容と結果で圧倒されたベルマーレの完敗だった。

・・そのときチョウさんは、とても怒っていた・・

・・たぶん、その怒りは、ベルマーレ選手たちが「勇気」を失ったからなんだと思う・・

・・そして、今日のゲーム・・

・・チョウさんは、選手たちが、とても立派なチャレンジサッカーを、最後の最後まで魅せつづけたことのバックボーンについて、勇気、勇気と、何度も繰り返していましたよね・・

等など、またまた長く「語って」しまった。

スミマセン・・ね、チョウさん。

そんな私の語りかけに対して、例によってチョウさんは、真摯に、こんなニュアンスの内容をコメントしてくれた。

曰く・・

・・ゲーム前・・

・・選手たちに、今日は、「あの」フロンターレ戦での悔しさを払拭するゲームにしなければならないって言ったんですよ・・

・・湯浅さんがおっしゃるとおり、あのフロンターレ戦では、たしかに立ち上がりは良いペースで仕掛けられたけれど、時間を追うごとに選手たちが勇気を失い、そして受け身のプレーに縮こまってしまった・・

・・わたしも、選手たちも、とても悔しい思いをしたんです・・

・・だから、この、強豪グランパス戦では、とにかく勇気ポテンシャルを落とすことなく、最後の最後までチャレンジャブルなサッカーにトライしようと心に誓ったわけです・・

・・そして試合後には・・

・・そんなチャレンジを、ある程度は効果的に仕掛けられたっていう実感が、わたしにも、選手たちにも、しっかりと残ったと思います・・

・・たしかに、結果的には勝ち切れなかったけれど、最後の時間帯には、何本かのチャンスも創り出しましたよね・・

・・とにかく、とても充実した(ほぼ成功の!?)体感は残すことができた・・

・・その意味でも、意義深い勝負マッチだったと思います・・

そのときのチョウ・キジェの表情は、自分が放つ一つひとつの表現を噛みしめるように、まさに充実感にあふれていた。

わたしは、チョウ・キジェ応援団だから、会見の後は、長い時間、拍手をつづけましたよ。

あっと・・

もちろん私は、風間八宏の応援団でもあるわけで、その意味でも、手に汗にぎりながら、心からゲームを楽しんでいたんだよ。

________

最後に・・

勇気という、サッカー選手にとって、もっとも重要な心理要素について・・

そう、ニーチェの言葉・・

・・何だ、カネを失ったって〜!?・・そんなら、四の五の言ってないで稼ぎなおしゃいいだろ・・

・・えっ!?・・今度は、名声も失った〜!?・・そんなモン、カネと同じように、問題なく創りなおせるじゃネ〜か・・

・・でも・・サ・・

・・もし勇気を失ったら・・

・・もしホントに失いでもしたら・・そのときゃ〜〜・・生まれてきた意味(意義)を、自分自身で問い直さなきゃいけなくなるんだ・・そりゃ、キツイ作業だぜ・・

ニーチェの言葉・・

いつもの「スクウェア」なフレーズじゃ詰まらないから、今日は、ちょっと脚色してみました〜。

へへっ・・

============

最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


===============

 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

==============

 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





[トップページ ] [湯浅健二です。 ] [トピックス(New)]
[Jデータベース ] [ Jワンポイント ] [海外情報 ]