湯浅健二の「J」ワンポイント
- 2019年Jリーグの各ラウンドレビュー
- 第31節(2019年11月9日、土曜日)
- アンジェ・ポステコグルー率いるマリノスに、主体的な「自由と自律バランス」の妙を見た・・(マリノスvsコンサドーレ、4-2)
- レビュー
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- ・・その背景には、選手たち自身が達成したいイメージと、それを積極的に表現していこうとする前向きなアクション姿勢があるんだ・・
マリノス監督アンジェ・ポステコグルーが、そんな素敵なニュアンスを語ってくれた。
それは、私の質問に応えたモノだったのだが、その質問は・・
・・素晴らしい(美しい!)攻撃サッカー・・
・・でも、それを、実際に勝利につなげるのは、とても難しい作業だと思う・・
・・そのことは、よく知っているつもりだ(もちろん、その背景にはフットボールネーションでの体感の積み重ねがある)・・
・・ただアンジェさんは、難しいコトを知っていて、そのコンセプトを崩さず、ここまできた・・
・・残り3試合・・
・・相手は、松本山雅、そして優勝争いの直接ライバル、フロンターレとFC東京・・
・・そこでは、勝つコトが、もっとも重要なことは言うまでもない・・
・・そんな状況でも、アンジェさんは、自分の(マリノスの!)サッカーを変えない?・・
そんな私の質問に、例によって真摯に、マリノス監督アンジェ・ポステコグルーが、まず一言。
・・変えない・・いや、もっと攻撃的にチャレンジしていく・・
・・そして勝つ・・
いいね〜、アンジェ・ポステコグルー。
そして、そのバックボーンに、冒頭の発言の骨子があるのさ。
・・選手たち自身が望んでいる(やりたいと思っている!?)サッカー・・
この発言には、ものすごく深〜いコノテーション(言外に含蓄される意味)が内包されている。
それは、後から・・
ということで、マリノスの攻撃サッカーだけれど・・
そこでの、(戦術的な!?)基盤中の基盤は、もちろん守備ハードワーク。
それについては、最前線プレイヤーたちも例外じゃない。
アンジェ・ポステコグルーが言う。
・・彼らは、最前線から、しっかりと守備ハードワークを「探し」つづけるんだ・・
・・そんな積極的な守備ハードワーク姿勢は、もちろん、チーム全体に浸透している・・
・・だからこそ、次の攻撃でも、まったく後ろ髪を引かれるコトがない、勇気あふれるフッ切れた仕掛けプロセスをブチかましていけるんだ・・
・・もちろん、攻撃は、ボールがないところでのサポートの動きの量と質で決まってくる側面もあるワケだけれど、守備ハードワークを積極的に探すという攻撃的なディフェンス姿勢があれば、それが、次の仕掛けダイナミズムの基盤にもなるんだ・・
ホントに、いいね〜、アンジェ・ポステコグルー。
そして攻撃では、攻守ハードワークとリスクチャレンジを基盤に、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションをブチかましていくんだ。
魅力的だし、美しい。
そして、指揮官自身が、「その」絶対ベースが守備(積極的なボール奪取プロセス)にあり・・と、自信オーラを放散しながら主張するんだよ。
まあ、前からプレス守備・・だね・・
彼らは、そんな攻撃サッカーで、ここまで闘ってきた。
そして、残りの3試合でも、まったく同じ「姿勢」で、美しい質実剛健サッカーを魅せてくれるでしょ。
ところで、「選手たちが望んでいる(やりたいと思っている!?)サッカー」というアンジェの表現。
その意味合いは、こんな感じなんじゃないかな〜・・
・・試合が始まってしまえば、闘うのは選手であり、ベンチが出来ることは限られている・・
・・だからこそ選手たちには、勇気も含め、全ての物理・戦術的、心理・精神的ファクターを充実させなければならない・・
・・そして、それを、大きく(シナジー的に!)組み上げていく作業に、選手たち自身が、情熱をもって没頭するように仕向けていく・・
そう、彼らの主体アクションをモティベートするのが、監督というストロングハンドというわけだ。
そこじゃ、脅したって、スカしたって、決して選手たちは、自分たちのパフォーマンスを、150%まで高揚させられるワケじゃない。
そう、それは、あくまでも、主体的な(自由な!)、物理的、心理・精神的な活動がベースなんだ。
選手たちは、自由で、主体的な、そして時として、とても孤独な、覚醒した進化アクション(ホンモノの自己主張!?)を積み重ねていくしかないんだよ。
そこでの監督、コーチは、助力することしかできない。
でも、その「助力の内実」は、まさに千差万別というわけさ。
・・そうさ・・
・・だから選手たちにとっちゃ、何かを超越するくらいの、物理的・心理的な作業ができる(それに没頭できる!?)かどうかが、次のステージに進めるかどうかの分岐点になるんだ・・
友人の、著名プロコーチが、私に、そんなコトを言った。
フムフム・・
とにかく、いまのマリノスのパフォーマンスを見れば、アンジェ・ポステコグルーが、選手たちを、その「自己主張の高み」に至らせつつあるコトは、自明だよね。
ホント、素晴らしい。
でも、もちろん、「それ」が、必ず結果につながるか・・といったら、そこはサッカーだから・・ネ。
でも、アンジェ・ポステコグルーは・・
・・(自らを!?)信じ、実行しつづける信念こそが、すべてのエネルギー源だし、それは、必ず、何らかのポジティブな結果を引き寄せるモノさ・・
・・と、確信をもって言う。
いいね〜・・
あっと・・最後に・・
いまの絶好調マリノスの布陣についても、簡単に・・
まず、チアゴ・マルティンスと扇原貴宏で構成する、中央ゾーンでのタテの守備コンビネーション。
それが、殊の外、強い・・
チアゴ・マルティンスを観るたびに、アルセーヌ・ベンゲル当時のグランパス最終ラインで主力を張った、トーレスの姿が目に浮かぶんだ。
チアゴ・マルティンスは、それほど、素晴らしいディフェンダーなんだよ。
また、扇原貴宏。
隣で観戦していた大住良之さんとも、彼のボランチとしての実効パフォーマンスが、格段にアップしているということで意見が一致したモノさ。
次に・・
マルコス・ジュニオール、仲川輝人、エリキ、マテウスで構成する前線カルテット。
アンジェは、マルコス・ジュニオールを、下がり気味のチャンスメイカーというイメージで観ているのか、彼のコトは、最前線グループとは見ていないのかもしれない。
まあ、とはいっても、私には、前述カルテットによる「ゼロトップ」が、マリノス攻撃の基本コンセプトだと思っているわけさ。
そして、もう一つ・・
そう、言わずもがなかもしれないけれど・・
とにかくヤツらの仕掛けでは、ダイレクトパスを織り交ぜた組織コンビネーションと、個のドリブル勝負が、とてもハイレベルにバランスしているんだよ。
バスレシーブしたとき、少しでも、自分の眼前にスペースがあったら、例外なく、ドリブルで突っ掛けていく。
そして、ほとんどのケースで、「ブチ抜く」ところまで、ドリブル勝負をやり切っちゃう。
特に仲川輝人。
ホント、スゴイよ、この選手は、
3点目シーンで彼が魅せた、ブチ抜きの「ソロ&ゴール」は、もう、確実に「世界」だったネ。
あっと・・
もちろん両サイドバックや、扇原貴宏のパートナーである喜田拓也も、攻守にわたって、しっかりと仕事を探しつづけ、実効あるプレーを展開していたよ。
ホント、いまのマリノスは、素晴らしい。
あっ・・ミハイロのコンサドーレ・・
ゴメン、今日は、マリノスに特化したコラム・・ということで、ご容赦アレ。
ということで、彼らの、素晴らしく美しい「質実剛健サッカー」については、ルヴァンカップ決勝コラムも参照して下さいネ。
ミハイロ〜〜ッ・・ホントにゴメン・・
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最後に「告知」です。
どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。
一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」。
- そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」。
自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。
ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。
もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。
- まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・
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重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。
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ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。
タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。
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