湯浅健二の「J」ワンポイント


2019年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第34節(2019年12月7日、土曜日)

 

美しい質実剛健サッカー・・それこそが、世界への扉を開くカギなんだ・・(マリノスvsFC東京、3-0)

 

レビュー
 
ゲームを観ながら、考えを巡らせていた。

・・この、両チームの実力差に潜むコノテーション(言外に含蓄される意味)は??・・

・・もちろん、変な、「数字による机上の空論」なんていう低次元のモノじゃないよ・・

ふむ〜〜・・

ところで、ゲームだけれど・・

もちろん、立ち上がりから、FC東京が、前からプレス守備をブチかましながら、ゲームのイニシアチブ(まあ、ボールポゼッションの外観的な趨勢!?)は握っている。

そう、少なくとも4点以上のゴール差での勝利を目指して・・

でも・・

そう、その「勢い」が、肝心の「スペース攻略」という目標には、まったくといっていいほど貢献していないんだ。

そんなだから、セットプレーを除いて、ゴール機会を創りだせないのも道理。

そして徐々に、(たぶん選手たちの「ネガティブ体感」によって!?)、前からプレス守備の「勢い」が減退していくんだよ。

そして今度は、それまで「余裕で」FC東京の攻めを受け止めていたマリノスが、徐々に「ホンモノの実力差」を魅せつけはじめるんだ。

マリノスがベースを握ったら(人数を掛けて攻め上がっていったら!?)、やはり、スペース攻略という視点での「危険度」は、FC東京のソレとは比べものにならない。

そんな、ゲーム立ち上がりの推移を観ながら・・

マリノス守備を中心に、こんなコトがアタマのなかを駆けめぐっていた・・

・・FC東京は、攻撃的にボールを奪い返しても、マリノス守備を簡単に崩せない・・

・・とにかく、マリノスの守備ブロックは、ホントにうまく機能している・・

・・もちろん、その絶対ベースは、全員守備(守備ハードワークの平等な分担!?)にあり・・

・・特に、仲川輝人とマテウスが、とてもうまく絡んでいる・・

・・だから、両サイドバックとの「タテのポジションチェンジ」が素晴らしい効果レベルにある・・

・・あっと・・

・・そのハイレベルな機能性のバックボーン(その一つ!?)として、喜田拓也を中心にする「中盤トリオ」による効果的なカバーリングも忘れちゃいけない・・

・・そんな、マリノスのサッカー(ホンモノの共同作業!?)を観ながら、サッカーの絶対ベースは守備にアリという大原則を、反芻(はんすう)していたっけ・・

・・また、様々な、とても錯綜するニュアンスを内包する「ポジション無しのサッカー」という、普遍的なコンセプトもアタマに浮かんだ・・

そんな、こんなで、冒頭で提議した、「実力差のコノテーション」っちゅうテーマに思いを馳せていた筆者なのだよ。

もちろん、攻守ハードワークとリスクチャレンジ(闘う意志!)を絶対バックボーンに、ダイレクトパスを織り交ぜた、人とボールが動きつづける組織コンビネーションという視点は言うまでもなく・・

マリノスの場合は、そんな組織サッカーに、レベルを超えた個の勝負(ドリブル突破)能力という強烈な武器も擁しているんだ。

そう、組織と個の、高質なバランス・・

もちろん、個の勝負(ドリブル突破)能力は、人とボールをしっかりと動かし、スペースを攻略することで、より有利なカタチで活かしていいける。

その視点で、マリノス選手たちが、とても効果的にイメージトレーニングを積んでいると感じる。

彼らは、チームメイトの誰かが突破ドリブルのチャンスに恵まれたら、決して邪魔したりせず、効果的にサポート役(3人目、4人目のフリーランナー!)に徹するという、チームとしての勝負イメージを、とても高い次元で共有していると思うんだよ。

それも、これも、アンジェ・ポステコグルーの「ストロングハンド」に拠るところ大なんだろうね。

ということで、冒頭の「実力差」というテーマ・・

その本質は、組織コンビネーションによる「スペース攻略の流れ」が、常に、彼らの「最終勝負イメージの幅」を広げている・・っちゅうトコロにあり!?

そう、ドリブル勝負とラストスルーパスの、見事なコラボレーション・・

マリノスの場合、その二つの「仕掛けファクター」が、瞬間的に、相互リンクしつづけるんだ。

そりゃ、相手ディフェンスが、ドリブル勝負で振り切られたり、ハッと思った次の瞬間には、勝負パスとフリーランニングが美しくシンクロする、背後スペースの攻略コンビネーションの後塵を拝しちゃうのも頷けるよな。

繰り返しになるけれど・・

マリノスが展開した、組織と個のスーパー高質バランスは、全員が参加しつづける素晴らしい「守備」があればこそ・・なんだよ。

そして、そんな「汗かきハードワーク」があるからこそ、次の勝負プロセスでも、(パスレシーブと相手守備の攪乱をイメージした!?)勝負のフリーランニングが、自然な流れで飛び出してくる。

とにかく、このところの「J」では・・

前節コラムでも書いたように、そんな「美しい質実剛健サッカー」が結果を残すことで、日本のサッカー人の期待と希望を膨(ふく)らませつづけているんだ。

そのコト「も」、言いたかった。

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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