湯浅健二の「J」ワンポイント


2020年Jリーグの各ラウンドレビュー


 

第7節(2020年7月26日、日曜日)

 

トータルフットボール(美しい質実剛健サッカー)を標榜する両指揮官・・ゲームも、彼らのイメージ通りに、素晴らしくエキサイティングな内容へと成長していった・・(コンサドーレvsマリノス、3-1)

 

レビュー
 
ゲームを観ながら・・

・・攻守ハードワークとリスクチャレンジあふれる「積極サッカー」がぶつかりあっている・・

・・そりゃ、エキサイティングマッチになるのも道理だよな〜〜・・

・・なんて・・

・・ゲーム細部のコノテーション(言外に含蓄される意味)に思いを馳せながら、心の底からゲームを楽しんでいた。

もちろん私は、「ミハイロ対アンジェ」という構図でも、この勝負マッチを観ていたよ。

そう、トータルフットボールを標榜する両指揮官が、その原則哲学をベースに、どのように「細部」を料理するのか・・ってな興味だね。

ということで・・

互いに、受けるのではなく、積極的にボールを奪いにいくというプレー姿勢は、同じベクトル上にある。

でも・・

そう、互いに、前からプレス守備の「微調整」を、とても巧みにイメージ・シェアしているとも感じられたんだよ。

最前線からではなく、ある程度、相手の組み立てプロセス段階から、「ゾーン的に追い込んでいく」ってな意識が感じられるんだよ。

まあ、「人とボールの動き」という視点では、マリノスに一日の長ありだから、コンサドーレのボール奪取プロセスに対するイメージングも、微妙に異なってくるよね。

まあ、そんな微妙な違いはあったとしても、「寄せのやり方」など、一定のイメージコンセプトに則っているのは、両チームに共通している。

中央ゾーンか、どちらかのサイドゾーンに「追い込む」とかね。

それでも・・

そう、そんな微妙な「イメージングの差異」はあったとしても・・

・・基本的には、前からプレス守備で、バチバチ火花を飛ばしている両チームの激突っちゅう「全体構図」は、皆さんも観られたとおりでっせ。

でも、ボール奪取からの攻撃プロセスイメージには、かなり大きな違いがある。

「そこ」に、様々な意味合いを内包する仕掛けのニュアンス(イメージング)に、微妙以上の、違いがあった。

コンサドーレは、「より」タテ方向へ、直接的にスピードをアップして仕掛けていこうとする。

対するマリノスは、例によって、人とボールを、素早く、大きく動かしながら、ゲームの流れをコントロールしようとする。

そして、その「流れ」のなかで、スペースを攻略しようとするんだ。

そう、マリノス攻撃では、ゲームの流れをコントロールするなかで、相手ディフェンスの全体バランスを崩そうとするわけだ。

そして、出来たスペースで「局面デュエル勝負」を仕掛けていこうとする。

そう、「組織」と「個」を効果的に組み合わせ、相手ディフェンスの「隙」を突くシュートをブチかまそうとするのさ。

そのイメージは、分かる。

それでも、アンジェが、試合後インタビューで語っていたように、「そこまで」コンサドーレの守備バランスを崩し切れなかった・・というのも事実だったと思う。

まあ・・この試合に限っては・・ね。

ところで・・

そんなゲーム(勝負)の展開になったのは、マリノスが強いということで、少しだけ(!?)ミハイロが、戦術サッカー的なニュアンスを強めた・・っちゅうことなのか??

さて〜〜・・

まあ、そんな見方が出来ないわけでもないよな・・

へへっ・・

ということで・・

素晴らしくエキサイティングな「仕掛け合い」になった魅力的な勝負マッチ。

それは、様々な視点で、攻守の「内実」で相手を上回った、ミハイロ率いるコンサドーレの、正当な勝利ということに落ち着いた。

そのミハイロ・ペトロヴィッチだけれど、とにかく、素晴らしく優秀なプロコーチ(ストロングハンド)だよね。

サンフレッチェ広島からレッズ、そしてコンサドーレと、すべてのチームで、これ以上ないほどの成果を残している。

特筆なのは・・

まあ、アンジェや森保一を話題にするとき、よく引き合いに出す表現だけれど・・

ミハイロも、選手たちの「意識と意志」を最高レベルまで高められる、優れた心理マネージメントを駆使しているんだよ。

だからこそ、例外なく全員が、「最後」は、自由に、そして勇気をもって、主体的に、勝負に臨んでいる(後ろ髪引かれることなくリスクにも積極チャレンジしている!)。

そう、彼らは、「戦術サッカー」と「解放サッカー」を高質にバランスさせるという「コーチング・エッセンス」を、しっかりと会得しているんだよ。

だからこそ、様々な意味で、「戦術」と「意志」が、ものすごく高い次元でバランスした、美しい質実剛健サッカーを展開できる・・っちゅうことだね。

分かりにくいけれど・・

この(主体性という!?)テーマについては、昨日コラム(ヴェルディ対モンテディオ戦)でも、分かりにくいディスカッションを展開したから、もしご興味があれば・・。

へへっ・・

あっと・・

ところで、ミハイロとアンジェ・・

二人には、ものすごく優秀なサッカー人(コミュニケーター)に恵まれているという共通項があった。

ミハイロには、杉浦大輔さん。

アンジェには、松崎裕さん。

二人とも、言葉を操る能力だけじゃなく、サッカーをよく知っている(まあ杉浦さんにはコーチという肩書きも付いているけれどね・・)のさ。

アンジェとミハイロが体現しようとするトータルフットボールへ近づいていく道のりは、簡単じゃない。

だからこそ、これまで彼らが為してきた成果に対して、日本の「サッカー人」の一人として、心からの敬意を表し、感謝するわけだ。

そして、だからこそ・・

その成果を陰で支える「お二人」に対しても、心からの敬意と感謝の念を捧げるわけサ。

二人とも・・ガンバレ〜ッ!!

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最後に「告知」です。

どうなるか分からないけれど、まだ、連載をつづけています。

一つは、選択したテーマを深める「The Core Column」

そして、もう一つが、私の自伝、「My Biography」

自伝では、とりあえず、ドイツ留学から読売サッカークラブ時代までを書きましょうかね。そして、もしうまく行きそうだったら、「一旦サッカーから離れて立ち上げた新ビジネス」や「サッカーに戻ってきた経緯」など、どんどんつづけましょう。

ホント、どうなるか分からない。でも、まあ、できる限りアップする予定です。とにかく、自分の学習機会(人生メモ)としても、価値あるモノにできれば・・と思っている次第。

もちろん、トピックスのトップページに「タイトル」をレイアウトしましたので、そちらからも入っていけます。

まあ、とにかく、請う、ご期待・・ってか〜〜・・あははっ・・


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 重ねて、東北地方太平洋沖地震によって亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に、被災された方々に、心からのお見舞いを申し上げます。 この件については「このコラム」も参照して下さい。
 追伸:わたしは-"Football saves Japan"の宣言に賛同します(写真は、宇都宮徹壱さんの作品です)。

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 ところで、湯浅健二の新刊。三年ぶりに上梓した自信作です。いままで書いた戦術本の集大成ってな位置づけですかね。

 タイトルは『サッ カー戦術の仕組み』。出版は池田書店。この新刊については「こちら」をご参照ください。また、スポーツジャーナリストの二宮清純さんが、2010年5月26日付け日経新聞の夕刊 で、とても素敵な書評を載せてくれました。それは「こちら」です。また、日経の「五月の書評ランキング」でも第二位にランクされました。





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